日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:市原 美恵(東京大学地震研究所)、中道 治久(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)

16:00 〜 16:15

[SVC28-15] 新燃岳2008年噴火直前から2011年噴火までに発生した火山性地震が示すb値の時間変化

*及川 純1、田島 靖久2 (1.東京大学地震研究所、2.日本工営(株)中央研究所)

キーワード:b値、火山性地震、火山噴火

霧島山新燃岳では, 2008年8月に1992年以来16年ぶりに噴火した後,2010年の6回の小噴火を経て,2011年に準プリニー式噴火を含む大きな噴火活動が起こった.その後,6年の休止期を経て2017年10月に噴火活動を再開,2018年3月〜6月に噴火活動があり現在に至る.及川・田島(2020)は,一連の噴火活動が始まった2008年8月22日の噴火に着目し,噴火前後の火山性地震の特徴を調べることにより,噴火前後でb値が変化することを示した.本研究は,さらに2011年噴火の直前までに発生した火山性地震を調べ,2008年噴火から2011年噴火までの火口直下の地震学的な構造変化を明らかにする.
2008年の噴火活動以前の新燃岳では,山頂火口直下の地震は希に発生する程度であったが,8月19日に激しい群発地震活動が始まり8月22日16時34分の噴火に至った.噴火後も,火山性地震活動は比較的活発で,地震数の多い状態が12月まで続いた.その後,地震活動は比較的低調になったが,2009年12月より再び地震活動が活発化し,2011年噴火に至った.震源分布の様子は,噴火の前後で,特に深さ分布で違っている.噴火直前の群発地震活動は,19日に火口直下深さ海抜下2km程度の付近から始まった.震源域は徐々に浅い方へ広がっていき,22日には地表付近まで伸び,噴火発生まで激しい地震活動が続いた.噴火直前は,火口直下の極浅部に震源が集中している.噴火後は,深さ海抜下1km程度から地表付近までの間で地震が発生する状況が12月まで続いた.その後に発生する地震は,海抜下2km程度から地表付近までの間で発生している.
震源決定と同時に,地震の振幅を用いて,それぞれの地震のマグニチュードを推定し,頻度分布にしたのが図である.横軸はマグニチュードM,縦軸はM以上の地震数である.図中で◆は2008年8月の噴火前,■は噴火後から2008年12月まで,▲は2009年1月から2011年1月の噴火前までのデータを表している.それぞれの曲線に,グーテンベルグ・リヒターの式を適用してb値を求めると,2008年8月の噴火直前の群発地震活動は2.0,噴火後から12月までは0.9,その後2011年1月の噴火直前までは0.6となった.b値は地震発生場を形成す地殻の特徴を表す値で,いわゆる通常の構造性地震では0.7〜1.1程度,火山地域などの特殊な領域では2を超える事があるといわれている.定性的には,b値が大きいということは,地震発生場において,比較的大きな地震が起き難い,小さな地震が起きやすいことを表していると考えられる.今回にあてはまれば,2008年噴火直前には,噴火を起こす熱流体が上昇しながら通路を開く噴火準備過程に対応して火口直下の地震発生場が大きなb値を示す状況になり,通路が開いた噴火後は通常に戻った,その後の噴火ではすでに通路が開いているために地震発生場は変化せずに起こった,解釈する事が可能であろう.