日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月4日(金) 15:30 〜 17:00 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:市原 美恵(東京大学地震研究所)、中道 治久(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)

16:30 〜 16:45

[SVC28-17] 2018年1月23日草津白根山噴火時の傾斜を伴う極長周期地震の地震波逆解析

*高橋 龍平1、前田 裕太1、渡辺 俊樹1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科)


キーワード:極長周期地震、波形インバージョン、草津白根山

2018年1月23日に発生した草津白根山の水蒸気噴火により観測された極長周期地震(周期~240 s)について波形インバージョン解析を実施した。解析時には、防災科学技術研究所の基盤的火山観測網(V-net)に設置されている3観測点の広帯域地震計と、ボアホール型傾斜計の記録を使用した。3つの観測点は、草津白根山を取り囲むように4-6 kmほどの距離に配置されている。広帯域地震計の水平成分は傾斜成分の寄与による影響を大きく受けていた。

本研究では、並進成分と傾斜成分の両者の寄与を考慮した波形インバージョン法を適用した。また、観測点数が限られていることから、フリーパラメータ数を減らすため、あらかじめメカニズムを開口クラックと仮定した。点ソースを仮定し、その位置とクラックの向きについてグリッドサーチを実施した。広帯域地震計の6つの水平成分のうち、観測点N.KSHVの南北成分(N.KSHV.BN)は他の成分とは異なる時間に最大振幅を取っていた。これが真の火山活動によって引き起こされたのかは定かではない。そこで、(1)すべての広帯域地震計記録(9成分)、(2)N.KSHV.BNを除く広帯域地震計記録(8成分)、(3)すべての広帯域地震計記録と傾斜計記録(15成分)、(4)N.KSHV.BNを除く広帯域地震計記録と傾斜計記録(14成分)、以上の4つのデータ組み合わせについて波形インバージョンを実施した。

解析の結果、各データ組み合わせについて(1)、(2)、(4)では3つ、(3)で2つのソース候補地(合計11個)を見出した。しかし、ほとんどのソース候補地で場所やクラックの向き、または推定されるソースのサイズが噴火口周辺の傾斜記録や比抵抗構造から見込まれる熱水活動域の場所、火山活動の活発な領域、ソースの深さまたは地表の火口の位置と合わなかった。ソース候補地の中で最も考えられるソースは、噴火口近くに位置する南北開口の鉛直クラックである。推定された震源時間関数より105 m3ほどの急速な膨張が発生し、噴火開始時刻前9-12 sに緩やかな収縮に転じた動きが見られた。以上の結果から、噴火時に推定されたクラックを通じて火山性流体が深部から浅部に移動したものと解釈した。

本研究はJSPS科研費JP19K04016の補助を受けて実施した。防災科学技術研究所のデータを用いた。