16:45 〜 17:00
[SVC28-18] AMT法調査から推定される本白根山の比抵抗構造
キーワード:本白根山、比抵抗構造、AMT法、水蒸気噴火、熱水系
本白根山は、群馬県北西部に位置する草津白根火山を構成する山体のひとつであり、湯釜火口を有する白根山からは南に約2 km離れている。本白根山の鏡池北火砕丘では、2018年1月23日に数か所で小規模な水蒸気噴火が発生した。前駆的な活動が全く観測されずに発生した突発的な噴火であったため、噴石により死者1名、負傷者11名の被害を生んだ。
草津白根山の中で近年活動的であったのは湯釜付近であったため、本白根山を対象とする先行研究は少ない。2018年の噴火前に実施された広帯域MT調査では、深さ2 km付近に低比抵抗帯が存在していることを明らかにしたが、浅部の分解能は低く構造を把握することはできていない(Matsunaga et al., 2020)。2018年噴火の噴出物の粉末X線回折分析では、噴火の発生場が基盤岩の深さに達していることを示唆した(Yaguchi et al., 2019)。地質学的な研究によると、草津白根火山周辺では基盤岩とされる新第三紀の火山岩類が露出している(早川, 1983)。しかし、本白根山付近では基盤岩類の深度についての情報はない。
本研究は、浅部を対象としたAMT(Audio-frequency magnetotelluric)調査を行い、3次元インバージョンを用いて噴火した火砕丘の地下構造を推定し、本白根山浅部の熱水系を明らかにすることを目指した。AMT調査は2020年9月から10月にかけて実施し、2018年噴火の火口周辺を計30か所測定した。得られたデータから、インピーダンスの回転不変量のひとつであるdet(Re Z)を用いて見かけ比抵抗の分布を作成した。図の全体的な特徴として、高周波数で高比抵抗、低周波数で低比抵抗の分布が多く見られた。さらに2018年噴火の火口の深部を示す低周波数の一部で、特に低い比抵抗を示した。
3次元インバージョンでは、山頂付近の急峻な地形を精度よく組み込めるよう四面体メッシュを用いたインバージョンコード(Usui, 2015; Usui et al., 2017)を使用した。このとき得られたモデルの特徴として、浅部で高比抵抗、深部で低比抵抗という見かけ比抵抗分布と同じ傾向がみられた。データの整合性を確認するために、フェーズテンソル(Caldwell et al., 2004)とインダクションアロー(Parkinson, 1962)を用いて、モデル応答関数と観測データを比較した。このとき、ほとんどの観測点で観測値と計算値は整合的であったが、本白根山の東山麓では両者に大きな違いが現れた。これは人工物によるノイズの影響と考えられるので、データの精査・検討が必要である。
発表では、本研究で得られた地下比抵抗構造モデルと先行研究の地球化学的な情報を併せて、本白根山浅部の熱水系について考察する。
草津白根山の中で近年活動的であったのは湯釜付近であったため、本白根山を対象とする先行研究は少ない。2018年の噴火前に実施された広帯域MT調査では、深さ2 km付近に低比抵抗帯が存在していることを明らかにしたが、浅部の分解能は低く構造を把握することはできていない(Matsunaga et al., 2020)。2018年噴火の噴出物の粉末X線回折分析では、噴火の発生場が基盤岩の深さに達していることを示唆した(Yaguchi et al., 2019)。地質学的な研究によると、草津白根火山周辺では基盤岩とされる新第三紀の火山岩類が露出している(早川, 1983)。しかし、本白根山付近では基盤岩類の深度についての情報はない。
本研究は、浅部を対象としたAMT(Audio-frequency magnetotelluric)調査を行い、3次元インバージョンを用いて噴火した火砕丘の地下構造を推定し、本白根山浅部の熱水系を明らかにすることを目指した。AMT調査は2020年9月から10月にかけて実施し、2018年噴火の火口周辺を計30か所測定した。得られたデータから、インピーダンスの回転不変量のひとつであるdet(Re Z)を用いて見かけ比抵抗の分布を作成した。図の全体的な特徴として、高周波数で高比抵抗、低周波数で低比抵抗の分布が多く見られた。さらに2018年噴火の火口の深部を示す低周波数の一部で、特に低い比抵抗を示した。
3次元インバージョンでは、山頂付近の急峻な地形を精度よく組み込めるよう四面体メッシュを用いたインバージョンコード(Usui, 2015; Usui et al., 2017)を使用した。このとき得られたモデルの特徴として、浅部で高比抵抗、深部で低比抵抗という見かけ比抵抗分布と同じ傾向がみられた。データの整合性を確認するために、フェーズテンソル(Caldwell et al., 2004)とインダクションアロー(Parkinson, 1962)を用いて、モデル応答関数と観測データを比較した。このとき、ほとんどの観測点で観測値と計算値は整合的であったが、本白根山の東山麓では両者に大きな違いが現れた。これは人工物によるノイズの影響と考えられるので、データの精査・検討が必要である。
発表では、本研究で得られた地下比抵抗構造モデルと先行研究の地球化学的な情報を併せて、本白根山浅部の熱水系について考察する。