日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 18:30

[SVC28-P08] 三宅島火山でみられるバンド状微動

*大塚 仁大1、長門 信也1 (1.気象庁)

キーワード:三宅島火山、バンド状微動

○はじめに
 三宅島では2000年の噴火以降,2000~2006年,2011年(9~10月)と2015年(10~12月)に間欠的に発生する火山性微動(以下,バンド状微動)が観測されている.バンド状微動は,継続時間が最長で20分程度,卓越周期は0.2秒前後の火山性微動が,30分程度(1時間を超えるイベントもあり)の間隔で繰り返し発生する特徴がある.各期間の最大振幅(雄山北東における期間中の最大)は2000~2006年では16μm/s,2011年では30μm/s,2015年では62μm/sであった.本報告では2000年以降のバンド状微動の発生場所の推移と火山活動の関連性を考察した.
○考察
 2000~2011年のバンド状微動の発生場所は,大塚・他(2012)において振幅比から火口付近の深さ約2kmに推定されている.2015年のイベントについて同手法で推定してみると火口付近の深さ約1kmとなり,2011年以前より浅い場所で発生した可能性がある(Fig1).やや低周波地震(以下,BH型地震)は2004年が2km以浅,2011年が1.5km以浅,2015年は1km以浅に求められており,こちらも発生場所が徐々に浅くなる傾向がみられている.低周波地震(以下,BL型地震)はイベント数が少なく発生場所の推移を捉え難いが,1.5km以浅に求まることが多い.
 バンド状微動の発生を考えるため,2000年の噴火以降,地震活動や地殻変動から火山活動の推移を3期間に分けてみた.期間(1)「2000~2007年」では2000年7月の山頂噴火後,同年11月から観測されたバンド状微動は,火口内温度が下がるなど熱活動の低下とともに2006年4月以降,発生がみられなくなり,この頃から深部の圧力源(GNSS基線の神着-新澪池跡など)は膨張に転じている.期間(2)「2008~2012年」では2010年7月までBH型やBL型地震を伴う噴火が繰り返し発生している.深部の膨張は2006年頃から継続しているが,浅部(GNSS基線の村営牧場南-雄山北東など)の収縮が2010年10月頃から一旦停滞して以降,バンド状微動の発生がみられている.期間(3)「2013年~現在」では深部の膨張が継続し,浅部の停滞は2014年9月頃から膨張に変わるが,2015年5月頃から一時的な停滞がみられる中でバンド状微動が発生している(火山噴火予知連絡会会報,2018).このバンド状微動が収まった後の2016年の前半に,急な山体膨張を示す地殻変動がみられ,同年5月に傾斜計で火口直下の膨張を示すガス噴出イベントが発生している(長門・他,2017).
 いずれのバンド状微動も火口内の温度と,噴煙の高さと幅から見積もった噴煙量(Q)が上向きになる期間で発生していることから,熱活動との関連が考えられる(Fig2).また,2013年前後からBH型地震の震源が浅くなり,浅部の圧力源に関連すると考えられるGNSS基線では2013年頃から収縮から停滞のちに膨張へ転じ始めている.これらから,地震活動や圧力源の動きに伴い,バンド状微動に関連した熱活動が浅い方向に移動した可能性がある.更に,期間(1)では圧力源の収縮など火山活動が低調になる時期に,期間(2)では浅部の収縮が一時的に停滞した後,期間(3)では浅部の緩やかな膨張が一時的に停滞した後でバンド状微動がみられていることから,地下での火山性流体の供給バランスの変化が関連していると考えられる.一方で1962年と1983年の噴火時では,噴火に伴う連続微動が数日発生しているが,それ以降で火山性微動の記録はみられないことから,バンド状微動は2000年噴火の特異な現象と考えられる.