17:15 〜 18:30
[SVC28-P09] GNSSおよび水準測量データの統合処理による三宅島火山の地下圧力源の推定
キーワード:三宅島、GNSS観測、水準測量
三宅島は,東京の約180 km南に位置する活火山で,20世紀以降では1940, 1962, 1983, 2000年と約20年の間隔で噴火を繰り返している.三宅島にはGNSSの連続観測点は存在するが,数が限られており詳細な地殻変動を得ることができていない.そのため,2011年から2019年に6回の稠密なGNSSキャンペーン観測を実施した.Fukui et al. (2015)では,2011~2013年の観測結果を基に,三宅島の圧力源の位置,体積変化量を推定しているが,GNSS観測の水平成分のデータしか考慮していない.本研究では最新の2013~2019年の期間においてGNSS観測を増強するとともに水準測量のデータも使用することで三宅島の地殻変動量を正確に把握し,三宅島火山の直下にある圧力源の位置や時間的変化を詳細に推定した.
2013年,2015年,2016年および2019年の9月に,三宅島全体にほぼ均等に分布するように配置した基準点(最大30点)においてGNSSキャンペーン観測を行った.本研究ではこのGNSSキャンペーン観測で得られたデータのうち継続したデータがある12点と国土地理院・気象庁・防災科学技術研究所が設置している連続観測点の同期間のデータ10点を使用した.また東京都がほぼ2年ごとに実施している三宅島の水準測量のデータを使用し,同期間の上下変動も使用した.
GNSSデータを解析するためにGNSSリアルタイム・後処理基線解析ソフトウェアRTKLIBver.2.4.2(高須・他, 2007)を使用し,GNSS観測点の座標値を求めた.2013~2019年のGNSSの水平変位は,どの期間においても三宅島南西部を中心として放射状の変位が見られた.一方,2014~2019年の水準測量の上下変位は,すべての期間で三宅島の南西側に対する北東側の沈降が見られた.
2013~2019年におけるGNSS水平変位と2014~2019年における水準測量の上下変位に基づいて圧力源を推定した.圧力源の位置および体積変化量の最適値は,火山の地殻活動を分析するために火山用地殻変動解析支援ソフトウェアMaGCAP-V(気象研究所地震火山部,2008)を使用することによって得た.この結果,2つの深さが異なる圧力源が推定された.1つは三宅島火口直下・深さ海面下0.3 km水平板状のシルであり,もう1つは三宅島火口から南西約2.5 km・深さ9.0 kmの位置の球状圧力源である.それぞれの体積変化量は,シルが3.3×105 m3/yrの収縮,球状圧力源が1.2×107 m3/yrの膨張となった.浅部のシルは火口からの脱ガスにより収縮し,深部の球状圧力源はさらに深部からのマグマの上昇により蓄積膨張しているものと推定される.
本研究では水準測量による上下成分の変動も含めて解析することにより,島内の圧力源の位置を正確に決定することができた.深部の球状圧力源は西村・他(2002)の結果とほぼ同じ位置に推定された.また前回の噴火休息期(1983~2000年)に地下深部に蓄積されているマグマだまりの体積蓄積率は,西村・他(2002)は10.2×106 m3/yrと推定している.一方,2000~2019年の間の体積蓄積率を地理院データ(2011),Fukui et al.(2015),および本研究から見積もると12.6×106 m3/yrと推定された.このことから2000年の噴火ではカルデラ火口形成というこれまでの噴火様式は大きく異なる噴火が発生したが,それ以降も地下深部にあるマグマだまりは1983~2000年の期間と同じ位置にあり,しかもほぼ同じ割合で膨張していることがわかった.
本研究は,文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」および東京大学地震研究所共同利用(2016-B- 09)の助成を受けて実施された.国土地理院および気象庁からは連続観測点データの提供を受けた.東京都総務局からは水準測量データの提供をうけた.GNSSキャンペーン観測には多くのGPS大学連合のメンバーに協力を受けた.ここに記して感謝する.
2013年,2015年,2016年および2019年の9月に,三宅島全体にほぼ均等に分布するように配置した基準点(最大30点)においてGNSSキャンペーン観測を行った.本研究ではこのGNSSキャンペーン観測で得られたデータのうち継続したデータがある12点と国土地理院・気象庁・防災科学技術研究所が設置している連続観測点の同期間のデータ10点を使用した.また東京都がほぼ2年ごとに実施している三宅島の水準測量のデータを使用し,同期間の上下変動も使用した.
GNSSデータを解析するためにGNSSリアルタイム・後処理基線解析ソフトウェアRTKLIBver.2.4.2(高須・他, 2007)を使用し,GNSS観測点の座標値を求めた.2013~2019年のGNSSの水平変位は,どの期間においても三宅島南西部を中心として放射状の変位が見られた.一方,2014~2019年の水準測量の上下変位は,すべての期間で三宅島の南西側に対する北東側の沈降が見られた.
2013~2019年におけるGNSS水平変位と2014~2019年における水準測量の上下変位に基づいて圧力源を推定した.圧力源の位置および体積変化量の最適値は,火山の地殻活動を分析するために火山用地殻変動解析支援ソフトウェアMaGCAP-V(気象研究所地震火山部,2008)を使用することによって得た.この結果,2つの深さが異なる圧力源が推定された.1つは三宅島火口直下・深さ海面下0.3 km水平板状のシルであり,もう1つは三宅島火口から南西約2.5 km・深さ9.0 kmの位置の球状圧力源である.それぞれの体積変化量は,シルが3.3×105 m3/yrの収縮,球状圧力源が1.2×107 m3/yrの膨張となった.浅部のシルは火口からの脱ガスにより収縮し,深部の球状圧力源はさらに深部からのマグマの上昇により蓄積膨張しているものと推定される.
本研究では水準測量による上下成分の変動も含めて解析することにより,島内の圧力源の位置を正確に決定することができた.深部の球状圧力源は西村・他(2002)の結果とほぼ同じ位置に推定された.また前回の噴火休息期(1983~2000年)に地下深部に蓄積されているマグマだまりの体積蓄積率は,西村・他(2002)は10.2×106 m3/yrと推定している.一方,2000~2019年の間の体積蓄積率を地理院データ(2011),Fukui et al.(2015),および本研究から見積もると12.6×106 m3/yrと推定された.このことから2000年の噴火ではカルデラ火口形成というこれまでの噴火様式は大きく異なる噴火が発生したが,それ以降も地下深部にあるマグマだまりは1983~2000年の期間と同じ位置にあり,しかもほぼ同じ割合で膨張していることがわかった.
本研究は,文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」および東京大学地震研究所共同利用(2016-B- 09)の助成を受けて実施された.国土地理院および気象庁からは連続観測点データの提供を受けた.東京都総務局からは水準測量データの提供をうけた.GNSSキャンペーン観測には多くのGPS大学連合のメンバーに協力を受けた.ここに記して感謝する.