日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.16

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 18:30

[SVC28-P11] 干渉SAR時系列解析を用いた西之島における噴火間の地殻変動

*安藤 忍1、奥山 哲1 (1.気象研究所 火山研究部)

キーワード:だいち2号、スポットライトモード、InSAR時系列解析、西之島

2013年11月に噴火が始まった小笠原諸島の西之島の噴火活動は,大きく第I期:2013.11–2015.12,第II期:2017.4–2017.8,第III期:2018.7–2018.8,第IV期:2019.12–2020.8のステージに分類される。第III期こそ海岸まで溶岩流の到達はなかったが,それ以外ではいずれも多量の溶岩を噴出させ陸域を拡大した。また,第IV期の後半の活動では,多量の降灰が確認されるなど,一連の噴火活動において最も活発な噴火活動であった(安藤ほか2020,JPGUおよび測地学会)。

気象研究所では,だいち2号(ALOS-2/PALSAR-2)のデータ利用が可能になった2014年8月以降,大規模地震や火山周辺について解析を行っている。西之島周辺においては,特に観測頻度の高いスポットライトモード(SPT:分解能3m×1m(レンジ×アジマス))のデータを使った解析を行っている。また,干渉SAR解析では一般的に垂直基線長距離(Bperp)が長いと干渉性が著しく悪くなるが,だいち2号の場合,概ねBperp<500mと非常によくコントロールされており,時間的コヒーレンス低下を除けば,ほとんどすべてのペアで干渉解析が可能である。

本発表では,西之島の各噴火ステージ間における微細な地殻変動を調査すべく,干渉SAR時系列解析を用いた結果について報告する。例えば,第III〜IV期の場合では,直近の差分干渉解析ペアで目立った位相変化が確認されなくなった2018年11月末から,第IV期の噴火が開始する直前の2019年11月末の1年間を対象期間とした。この間にPALSAR-2で撮像されたSPTモードのデータは25シーンで,概ね3か月以内のデータセットについて干渉解析を行い,合計129ペアのデータを得た。これらの結果を使ってSBAS法による時系列解析を行い,局所的な地殻変動の時間変化を検出した。なお,西之島の場合は対象領域が非常に小さいため,個々の干渉ペアについて対流圏遅延補正や電離圏遅延補正は行わず,SPTモード解析特有の基線再推定の実行にとどめた。その結果,中央火砕丘東側周辺で局所的に約14mm/年の一定の視線方向伸長変化が確認できるほか,第III期に流下した溶岩の南端では,伸長変化が指数関数的に低下していることなどが分かった。本発表では,第I〜II期,第II期〜III期の解析結果についても紹介する。

本解析で用いたPALSAR-2データは,火山噴火予知連絡会が中心となって進めている防災利用実証実験に基づいて,JAXAにて観測・提供された。PALSAR-2に関する原初データの所有権はJAXAにある。PALSAR-2の解析にはGamma,RINC(Ozawa et al, 2016),LiCSBAS(Morishita et al, 2020)を使用した。また,処理の過程では,国土地理院技術資料C1-No.463, 478, 489から生成した地形データを使用した。