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[SVC29-10] 八幡平地域の地熱坑井から得られたカッティングス試料を用いた熱物性測定及び温度構造解析
キーワード:八幡平地域、カッティングス、熱伝導率、非定常面熱源法、温度プロファイル
坑井の温度プロファイルに影響を与える要因を明らかにすることは熱水流動の有無を調べる上で重要である。温度プロファイルを解析する上で、岩石の熱伝導率は重要なデータとなり、一般的にコア試料を測定することで地層や岩体の熱物性を得ることができる。しかしながら、地熱資源開発のために採掘された坑井ではコアは採取されないことが多く、カッティングスのみが採取されるため、カッティングス試料を用いた熱伝導率の測定が求められる。本研究では、非定常面熱源法を用いて、岩手県八幡平地域のN19-HA-1坑井の掘削で得られたカッティングス試料の熱伝導率を測定した。また、坑内温度構造を決定する要因を抽出するため、カッティングスからコア相当の熱伝導率を求め、坑井の温度構造解析を行い、熱伝導の観点から温度プロファイルを考察した。
まず、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する手法の妥当性を確認するため、阿蘇火山地域から採取した安山岩のコアを粉砕することで人工的にカッティングスを作成し、カッティングスの熱伝導率の計測を行い、コア試料の測定値と比較検討を行った。カッティングス試料の粒径が結果に影響を及ぼすか確認するために、異なる粒径分布をもつカッティングス試料を作成し、それぞれの粒径分布で測定を3回行った。また、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する際に用いる岩石物理モデルを選定した。岩石物理モデルの選定においては、カッティングス試料の熱伝導率測定値と水の熱伝導率、カッティングスの粒子内空隙率を5つの熱伝導混合モデル(算術平均モデル、調和平均モデル、幾何平均モデル、二乗平方根モデル、有効媒質モデル)を用いて、モデルごとにコア相当の熱伝導率を算出し、コアの測定熱伝導率と比較することで最も整合的な値を示したモデルを選定した。
次に、決定したモデルを八幡平地域の安山岩やデイサイト質凝灰岩のカッティングス試料18個(120~220 mで5試料、305~385 mで4試料、925~1165 mで9試料)に適用した。そして、求めたコア相当の熱伝導率を対応する3つの深度帯においてフーリエの法則(j=λgradT、jは熱流束、λは熱伝導率、gradTは温度勾配)を適用した。このとき、熱の移動は一次元の熱流束のみにより、熱流束が一定であると仮定した。なお、同解析では、それぞれの深度帯において、深度ごとの熱伝導率の調和平均を取ることで深度帯の平均熱伝導率を求め、地温勾配から熱流束を計算した。
安山岩のコア試料およびこのコアから実験室で作成したカッティングスの計測の結果、二乗平方根モデルを用いたものでは誤差が最大で1.8%と最もコアの測定熱伝導率に近い値を示した。また、異なる粒径分布から得られた熱伝導率の差は1%と、非定常面熱源法における熱伝導率測定値の公称再現性である2%以下という結果になった。以上から、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する際、カッティングスの粒径による影響は少なく、二乗平方根モデルを用いることで、コア相当の熱伝導率が良く求まることが分かった。そのため、八幡平地域のカッティングス試料は4mm以下の無差別の粒径分布で測定し、二乗平方根モデルを用いてコア相当の熱伝導率を算出した。120 m~220 mの深度帯は、熱伝導の影響が優位だと考えられるが170 m付近において実測温度プロファイルと熱伝導率より見積もられた温度プロファイルの間に1.4℃の差が確認された。本研究では、25 m間隔で熱伝導率の測定を行ったため、このような差が生まれたと考えられる。実測温度勾配が変化する215 m付近の熱伝導率を測定し、その熱伝導率も用いて温度構造解析を行うことで改善することが見込まれる。次に、305 m~385 mでは330 m以深において、実測の温度プロファイルは熱伝導率により見積もられた温度プロファイルとよく一致しており、熱伝導のみによって決定されていることが分かる。一方、925 m~1165 mでは一部の区間の温度構造は熱伝導から再現できなかった。本研究の温度構造解析によって熱伝導率から再現されなかったという結果から、対流の存在が示唆されると考えている。
まず、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する手法の妥当性を確認するため、阿蘇火山地域から採取した安山岩のコアを粉砕することで人工的にカッティングスを作成し、カッティングスの熱伝導率の計測を行い、コア試料の測定値と比較検討を行った。カッティングス試料の粒径が結果に影響を及ぼすか確認するために、異なる粒径分布をもつカッティングス試料を作成し、それぞれの粒径分布で測定を3回行った。また、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する際に用いる岩石物理モデルを選定した。岩石物理モデルの選定においては、カッティングス試料の熱伝導率測定値と水の熱伝導率、カッティングスの粒子内空隙率を5つの熱伝導混合モデル(算術平均モデル、調和平均モデル、幾何平均モデル、二乗平方根モデル、有効媒質モデル)を用いて、モデルごとにコア相当の熱伝導率を算出し、コアの測定熱伝導率と比較することで最も整合的な値を示したモデルを選定した。
次に、決定したモデルを八幡平地域の安山岩やデイサイト質凝灰岩のカッティングス試料18個(120~220 mで5試料、305~385 mで4試料、925~1165 mで9試料)に適用した。そして、求めたコア相当の熱伝導率を対応する3つの深度帯においてフーリエの法則(j=λgradT、jは熱流束、λは熱伝導率、gradTは温度勾配)を適用した。このとき、熱の移動は一次元の熱流束のみにより、熱流束が一定であると仮定した。なお、同解析では、それぞれの深度帯において、深度ごとの熱伝導率の調和平均を取ることで深度帯の平均熱伝導率を求め、地温勾配から熱流束を計算した。
安山岩のコア試料およびこのコアから実験室で作成したカッティングスの計測の結果、二乗平方根モデルを用いたものでは誤差が最大で1.8%と最もコアの測定熱伝導率に近い値を示した。また、異なる粒径分布から得られた熱伝導率の差は1%と、非定常面熱源法における熱伝導率測定値の公称再現性である2%以下という結果になった。以上から、カッティングス試料からコア相当の熱伝導率を推定する際、カッティングスの粒径による影響は少なく、二乗平方根モデルを用いることで、コア相当の熱伝導率が良く求まることが分かった。そのため、八幡平地域のカッティングス試料は4mm以下の無差別の粒径分布で測定し、二乗平方根モデルを用いてコア相当の熱伝導率を算出した。120 m~220 mの深度帯は、熱伝導の影響が優位だと考えられるが170 m付近において実測温度プロファイルと熱伝導率より見積もられた温度プロファイルの間に1.4℃の差が確認された。本研究では、25 m間隔で熱伝導率の測定を行ったため、このような差が生まれたと考えられる。実測温度勾配が変化する215 m付近の熱伝導率を測定し、その熱伝導率も用いて温度構造解析を行うことで改善することが見込まれる。次に、305 m~385 mでは330 m以深において、実測の温度プロファイルは熱伝導率により見積もられた温度プロファイルとよく一致しており、熱伝導のみによって決定されていることが分かる。一方、925 m~1165 mでは一部の区間の温度構造は熱伝導から再現できなかった。本研究の温度構造解析によって熱伝導率から再現されなかったという結果から、対流の存在が示唆されると考えている。