17:15 〜 18:30
[SVC29-P02] 霧島火山群硫黄山火口湯だまりにおける水質組成の経時変動
キーワード:水岩石反応、化学組成変動モニタリング
霧島火山群硫黄山では,2018年4月に水蒸気噴火が発生により複数の火口で湯だまりが形成され,現在でも活発な噴気活動・噴湯現象が継続している.化学的手法による火山活動や熱水活動の評価を目的として,2018年7月から2年余りにわたって継続して湯だまりの温泉水を採取し化学分析を行っている.本研究では,これまでに予知連絡会に報告されている陰イオンの組成に加えて陽イオンの組成を報告し、それらの経時変動について議論を行う.
試料採取は,硫黄山から約500m離れた位置の西火口湯だまり(W4)を主に,硫黄山南側に位置する南火口群湯だまり(Y2a,Y2b),および周囲にあるいくつかの噴気孔に形成された小規模な湯だまりから行った.現地では、水温・pH・ORP(酸化還元電位)・EC(電気伝導度)を測定した.持ち帰った試料について,陽イオン,微量元素はICP-OES,ICP-MSにより,陰イオンはイオンクロマトグラフ(IC)により定量した.
陽イオン組成の経時変動の長期的傾向は、陰イオン組成(Cl/SO4比)の変動と概ね連動している.西火口湯だまり(W4)では,噴火直後から2019年12月までは陽イオン濃度が高い水準で推移していたが,2020年2月以降に減少が確認された.
次にOhba et.al(2008)を参考にそれぞれの陽イオンに対して,湯だまり温泉水中の濃度(Ci)を周囲の岩石(安山岩)からの溶出を仮定した際に期待される濃度(Di)と比較した(酸性の温泉水中で二次鉱物として取り除かれにくいMgとの比をとって比較する).NaとMnについては、観測期間を通じてCi>Diとなっていた.ただし,2019年12月以前にはかなり過剰であったものが,2020年2月以降はCiとDiの差が小さくなった.CaとSiについては,逆に調査期間を通してCi<Diであった.Kについては2019年12月まではCi<Diあった傾向が,2020年2月以降に逆転しCi>Diとなった.
これらの結果の解釈として,2020年2月以降の湯だまり温泉水の陽イオン組成は岩石からの溶出と二次鉱物の沈殿による除去でほぼ説明できるのに対して,2019年12月までは別の陽イオン供給源からの供給が優勢であったと考えることができる.この供給源として火山体地下に発達した熱水帯水層の存在が考えられ,Li,Rb,Csなどの微量元素の分析を行って検討していきたい.
試料採取は,硫黄山から約500m離れた位置の西火口湯だまり(W4)を主に,硫黄山南側に位置する南火口群湯だまり(Y2a,Y2b),および周囲にあるいくつかの噴気孔に形成された小規模な湯だまりから行った.現地では、水温・pH・ORP(酸化還元電位)・EC(電気伝導度)を測定した.持ち帰った試料について,陽イオン,微量元素はICP-OES,ICP-MSにより,陰イオンはイオンクロマトグラフ(IC)により定量した.
陽イオン組成の経時変動の長期的傾向は、陰イオン組成(Cl/SO4比)の変動と概ね連動している.西火口湯だまり(W4)では,噴火直後から2019年12月までは陽イオン濃度が高い水準で推移していたが,2020年2月以降に減少が確認された.
次にOhba et.al(2008)を参考にそれぞれの陽イオンに対して,湯だまり温泉水中の濃度(Ci)を周囲の岩石(安山岩)からの溶出を仮定した際に期待される濃度(Di)と比較した(酸性の温泉水中で二次鉱物として取り除かれにくいMgとの比をとって比較する).NaとMnについては、観測期間を通じてCi>Diとなっていた.ただし,2019年12月以前にはかなり過剰であったものが,2020年2月以降はCiとDiの差が小さくなった.CaとSiについては,逆に調査期間を通してCi<Diであった.Kについては2019年12月まではCi<Diあった傾向が,2020年2月以降に逆転しCi>Diとなった.
これらの結果の解釈として,2020年2月以降の湯だまり温泉水の陽イオン組成は岩石からの溶出と二次鉱物の沈殿による除去でほぼ説明できるのに対して,2019年12月までは別の陽イオン供給源からの供給が優勢であったと考えることができる.この供給源として火山体地下に発達した熱水帯水層の存在が考えられ,Li,Rb,Csなどの微量元素の分析を行って検討していきたい.