日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC29] 火山の熱水系

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.13

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)

17:15 〜 18:30

[SVC29-P05] 焼岳1962年6月17日噴火火山灰とその水溶性成分

*谷口 無我1、平山 康夫2、大場 武3、沼波 望3 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁長野地方気象台、3.東海大学理学部)

キーワード:焼岳、1962年6月17日噴火、水蒸気噴火、火山灰、水溶性成分

焼岳は長野県-岐阜県境に位置する活火山で, 有史以降複数回の水蒸気噴火を繰り返している. 最も新しい噴火は1962-63年に発生した噴火で, 一連の噴火が始まった1962年6月17日噴火では焼岳の東方面を中心に降灰が観測された[1]. 1962年噴火の火山灰は本質物質を含まず, モンモリロナイトを含むことなどから, 当該火山灰は泥漿溜りにおける爆発によってもたらされたと考えられている[2]. 一方, 例えば火山灰粒子の鮮明な画像や火山灰から抽出した水溶性成分に関する情報は報告されていない. 今回, 発表者らは1962年6月17日の噴火翌朝に家屋の屋根上から採取された, 降雨に曝されたり土壌と混合したりする前に採取・保管された火山灰を得たので, 当該火山灰の観察と水溶性成分の分析などを試みた.

焼岳1962年6月17日の噴火は21:55頃発生し, 降灰は1962年6月17日23:50から翌18日01:45まで観測された[3][4]. 本研究で分析に供した火山灰は, 1962年6月18日の朝に, 焼岳の東方約20km地点(長野県松本市)の家屋の屋根上から採取された火山灰である. なお,松本市では 6月17日の降灰開始から火山灰が採取された6月18日午前までの間にはもやおよび弱い露(強度1)が観測されているが降水はなく[3][4], 火山灰の水溶性成分が流出した恐れは小さい. 火山灰の水溶性成分は超純水による超音波抽出後にCl, SO4をイオンクロマトグラフ法で分析した. 火山灰粒子の観察には水溶性成分分析後の火山灰を水洗・乾燥させて再利用した. なお, 火山灰の粒径のふるい分けは行っていない.

顕微鏡観察の結果, 水洗前の火山灰は大部分が500μm程度以下で, 極細粒の粒子に覆われて灰色を呈していた. 水洗後の火山灰は100~200μm程度以下の粒子が卓越する. 構成粒子の多くは透明~白色の粒子が占め, これに変質した岩片や黄鉄鉱とみられる鉱物片を伴う. なお, 新鮮なマグマに直接由来するような粒子は見当たらなかった. 一方, 水溶性成分の分析の結果, 火山灰1kgあたり1,250mgのCl, 10,800mgのSO4を検出した. この水溶性成分の量は, 典型的なマグマ噴火(例えば, 富士山1707年宝永噴火, 西之島2017年噴火)で放出された火山灰よりも明らかに多く, 水蒸気噴火(例えば, 草津白根山1982-83年噴火, 箱根山2015年噴火)で放出された火山灰の特徴に一致する. これらの結果は1962年6月17日の噴火は新鮮で高温のマグマの上昇に起因するものではなく, 水蒸気噴火によって焼岳山体内の熱水変質帯の一部が放出したものであったことを示唆しており, これは既往研究で示された結果と一致する. 本発表では, これらの分析結果のほかに粉末 X 線回折分析の結果なども加え, 当該火山灰の地球化学的特徴を提示する.

[1] Murai (1962) Bull. Earthq. Res. Inst., 40, 805-814. [2] 小坂丈予・小沢竹二郎 (1966) 火山, 11, 17-29. [3] 松本測候所 (1962) 普通気候観測日原簿, 1962年6月17日. [4] 松本測候所 (1962) 普通気候観測日原簿, 1962年6月18日.