17:15 〜 18:30
[SVC29-P08] 伊豆大島火山における地表面熱収支観測
キーワード:伊豆大島火山、熱収支観測
1. はじめに
伊豆大島火山1986年噴火の際には,噴火前の火孔底での熱異常域の拡大や噴火開始後にも新たな噴気の出現等,地下の熱水系の発達を示唆する現象が観測された.これら活動推移を把握する上で熱観測は重要である.熱活動を把握する上で,接触温度計や赤外放射温度計を利用した地中・地表面温度測定がしばしば行われる.しかし地表面付近の温度は,太陽や大気による放射や気象要素等の外的要因に強く依存するため,火山活動に伴う熱兆候を検出するとともにそれらを定量化するためには,これら外的要因の影響を把握し補正する必要がある.地表面におけるこれらの影響の解明を目的として,伊豆大島カルデラ内の噴気地及び非噴気地の2ヶ所に熱収支観測装置を設置し観測を開始した.
2. 熱収支観測装置
本装置は,地中や地表面の温度の他に,これらに影響を与えうる太陽や大気による放射,気象要素を測定する機器,さらに補助情報として,地中の土壌水分,熱伝導率を測定する機器から成る.観測項目や機器は2観測点で共通である.
センサー
地中温度測定には,その勾配も把握するために5深度(10,30,50,70,100cm)にT型熱電対温度計CHINO SCHS1-5を,地表面温度測定には赤外放射温度計Apogee SI-431を設置している.気象要素は複合気象センサーVaisala WXT536により,風向・風速・気圧・気温・湿度・降水・降雹を測定している.短波放射(太陽放射およびその地表面からの反射)の測定のためにアルベドメータHukseflux SRA01,大気放射(赤外放射)の測定のために長波放射計Hukseflux IR02を用いている.土壌水分計(Sentek EnviroSMART)のセンサーは地中温度と同じ5深度に取り付けた.また,熱伝導率を推定するために熱特性センサーHuluseflux TP01を20~30cm程度の深度に取付けている.
記録・伝送
測定は最短10秒間隔で行い,これらをCampbell Scientific社製ロガーCR-1000Xにて記録している.さらに,携帯電話回線を用い,定時に気象研究所からデータ回収を行っている.
3. 観測
伊豆大島火山カルデラ内の2ヶ所に本装置を設置した.1ヶ所は噴気地,もう1ヶ所は非噴気地である.いずれの観測点も2020年3月に設置し観測を開始した.
HB01(三原山火口原東)
三原山中央火孔の東側火口原の亀裂沿いに分布する噴気地に設置した.気象庁が1991年より噴気温度を継続的に測定している定点の近傍である.これによれば1991年におよそ80 °Cだったものが経年的に低下し,近年は45~50 °C程度で推移している.
HB02(カルデラ床南東)
HB01を噴気地に設置したのに対し,放射や気象条件などの外的要因による熱収支を把握することを目的とし,むしろ火山活動に伴う噴気等が認められない場所を選択した.カルデラ床南東の裸地に設置した.地表面はスコリア質のシルト・砂・礫で覆われている.
4. 観測データの特徴
地表面及び地中温度の変化の特徴は2点間で全く異なる.非噴気地のHB02の地表面,地中温度には日周変化及び年周と考えられる季節変化が明瞭に認められる.特に晴天時の日射の影響を強く受けており,深くなるにつれて温度変化の振幅が減衰し,位相が遅れる特徴が認められる.一方,噴気地では地表面においては温度の日周変化が見られるものの,地中では明瞭ではない.地中温度は深度10 cmから100 cmまで季節を通して45 ℃から48 ℃程度でほぼ一定である.ただし,10分平均風速で概ね5 m/sを越えると,地表面から深部に向けて急激に温度が低下する場合があり,顕熱輸送あるいは潜熱輸送が促進されることが示唆される.
発表では,本観測装置の概要の他,これまでの取得されたデータの特徴について報告する.
伊豆大島火山1986年噴火の際には,噴火前の火孔底での熱異常域の拡大や噴火開始後にも新たな噴気の出現等,地下の熱水系の発達を示唆する現象が観測された.これら活動推移を把握する上で熱観測は重要である.熱活動を把握する上で,接触温度計や赤外放射温度計を利用した地中・地表面温度測定がしばしば行われる.しかし地表面付近の温度は,太陽や大気による放射や気象要素等の外的要因に強く依存するため,火山活動に伴う熱兆候を検出するとともにそれらを定量化するためには,これら外的要因の影響を把握し補正する必要がある.地表面におけるこれらの影響の解明を目的として,伊豆大島カルデラ内の噴気地及び非噴気地の2ヶ所に熱収支観測装置を設置し観測を開始した.
2. 熱収支観測装置
本装置は,地中や地表面の温度の他に,これらに影響を与えうる太陽や大気による放射,気象要素を測定する機器,さらに補助情報として,地中の土壌水分,熱伝導率を測定する機器から成る.観測項目や機器は2観測点で共通である.
センサー
地中温度測定には,その勾配も把握するために5深度(10,30,50,70,100cm)にT型熱電対温度計CHINO SCHS1-5を,地表面温度測定には赤外放射温度計Apogee SI-431を設置している.気象要素は複合気象センサーVaisala WXT536により,風向・風速・気圧・気温・湿度・降水・降雹を測定している.短波放射(太陽放射およびその地表面からの反射)の測定のためにアルベドメータHukseflux SRA01,大気放射(赤外放射)の測定のために長波放射計Hukseflux IR02を用いている.土壌水分計(Sentek EnviroSMART)のセンサーは地中温度と同じ5深度に取り付けた.また,熱伝導率を推定するために熱特性センサーHuluseflux TP01を20~30cm程度の深度に取付けている.
記録・伝送
測定は最短10秒間隔で行い,これらをCampbell Scientific社製ロガーCR-1000Xにて記録している.さらに,携帯電話回線を用い,定時に気象研究所からデータ回収を行っている.
3. 観測
伊豆大島火山カルデラ内の2ヶ所に本装置を設置した.1ヶ所は噴気地,もう1ヶ所は非噴気地である.いずれの観測点も2020年3月に設置し観測を開始した.
HB01(三原山火口原東)
三原山中央火孔の東側火口原の亀裂沿いに分布する噴気地に設置した.気象庁が1991年より噴気温度を継続的に測定している定点の近傍である.これによれば1991年におよそ80 °Cだったものが経年的に低下し,近年は45~50 °C程度で推移している.
HB02(カルデラ床南東)
HB01を噴気地に設置したのに対し,放射や気象条件などの外的要因による熱収支を把握することを目的とし,むしろ火山活動に伴う噴気等が認められない場所を選択した.カルデラ床南東の裸地に設置した.地表面はスコリア質のシルト・砂・礫で覆われている.
4. 観測データの特徴
地表面及び地中温度の変化の特徴は2点間で全く異なる.非噴気地のHB02の地表面,地中温度には日周変化及び年周と考えられる季節変化が明瞭に認められる.特に晴天時の日射の影響を強く受けており,深くなるにつれて温度変化の振幅が減衰し,位相が遅れる特徴が認められる.一方,噴気地では地表面においては温度の日周変化が見られるものの,地中では明瞭ではない.地中温度は深度10 cmから100 cmまで季節を通して45 ℃から48 ℃程度でほぼ一定である.ただし,10分平均風速で概ね5 m/sを越えると,地表面から深部に向けて急激に温度が低下する場合があり,顕熱輸送あるいは潜熱輸送が促進されることが示唆される.
発表では,本観測装置の概要の他,これまでの取得されたデータの特徴について報告する.