17:15 〜 18:30
[SVC30-P02] 富士南麓・鑵子山溶岩流の割れ目噴火口洞窟と表層溶岩チューブ洞窟について
キーワード:富士山、溶岩流、溶岩チューブ、溶岩洞窟、割れ目噴火口
[はじめに]
鑵子山溶岩流(十里木丸尾溶岩流)はAD710-800に噴出したSiO2 50.9wt%の粘性が低い溶岩流で,黒塚溶岩流を被覆している1)。鑵子山溶岩流の長さは5km程度であり,その溶岩流の中に雷穴,十里木氷穴(樹型),すずみ風穴(樹型),十里木樹型群の存在が知られている2,3,4)。鑵子山から連なるチャンネル状窪みに雷穴が存在していることが知られているが最近の調査によりそのチャンネル状窪みの上流と下流の表層に小規模の溶岩チューブが幾つか存在することが分かった。これにより溶岩降伏値と表層溶岩チューブ洞窟が形成された時の温度を推定したので報告する。図1に鑵子山と雷穴及び見つかった溶岩チューブ洞窟及び樹型の位置示す。
[割れ目噴火口列と雷穴]
図2と表1に示す雷穴は深い縦穴開口部の下に連通した横穴空洞をもつ洞窟である(写真1,2)。雷穴の深い縦穴開口部は従来からガス噴出孔2,4)と言われており,2010年の立原弘,大島治らの調査により割れ目噴火口列の延長線上にあることから割れ目噴火口の一部であると指摘されている. その底部にある横穴空洞は溶岩チューブ洞窟としての特徴(床面の縄状溶岩、壁面の溶岩棚、アーチ状天井等)は全くみられず,割れ目をマグマがドレンバックして出来た割れ目噴火口洞窟と明らかに見なせる。空洞は両側の平行した壁に挟まれ,崩落した側壁の奥にスコリア層がみられる.
[表層溶岩チューブ洞窟]
雷穴のすぐ上流と下流の表層には図1に位置を示す小規模な矩形断面の溶岩チューブ洞窟(大きなもので空洞高さ:1m,幅:4.8m,長さ:5.8m)が存在する(写真3)。下流にあるものは等高線から判断すると傾斜角α=8度(sinα=0.143)程度で,チューブ空洞高さH=1m ,g =9.8m/sec2, ρ=2500kg/m3から,溶岩降伏値5) fb=(H g ρ sinα)/3からfb=1168 Paとなる。玄武岩として妥当な値である。ここではIshibasi&Sato6)が富士山1707噴出玄武岩で計測したデータを利用して作成した温度依存式7)を使って温度を求めると1068℃であった。
[おわりに]
鑵子山から南部に連なる雷穴があるチャンネル状窪みの表層に,幾つかの表層溶岩チューブ洞窟が形成されている。表層溶岩チューブ洞窟から得られた降伏値1168 Paは玄武岩として妥当な値である。この降伏値から表層溶岩チューブ洞窟が形成された時の温度を推定すると1068℃であった。なお、鑵子山溶岩流の十里木樹型群については現在調査を継続中である。
参考文献:
1)高田亮,山元孝広,石塚吉浩,中野俊(2016):富士火山地質図(第2版)説明書,産業技術総合研究所
2)小川孝徳(1980):富士山の溶岩洞穴・溶岩樹型の地質学的観察,洞人,第2巻,第3号,日本洞窟協会
3)遠藤秀男(1983):奇怪と伝説 富士山の洞窟探検,昭和58年6月1日発行,緑星社
4)小川孝徳(1991):裾野市文化財調査報告書第5集,富士南麓の溶岩洞窟,裾野市教育委員会
5)本多力(2017):溶岩チューブ生成と溶岩チューブ洞窟形成モデルの 月・火星への適用,第61回宇宙科学技術連合講演会予稿集1B11
6)H.Ishibashi,H.Sato(2010):Journal of Mineralogical and Petrological Science,volume105,pp334-339
7)本多力(2020):P10富士火山の溶岩チューブ洞窟形成時の溶岩温度の同定,2020年日本火山学会秋季講演会
鑵子山溶岩流(十里木丸尾溶岩流)はAD710-800に噴出したSiO2 50.9wt%の粘性が低い溶岩流で,黒塚溶岩流を被覆している1)。鑵子山溶岩流の長さは5km程度であり,その溶岩流の中に雷穴,十里木氷穴(樹型),すずみ風穴(樹型),十里木樹型群の存在が知られている2,3,4)。鑵子山から連なるチャンネル状窪みに雷穴が存在していることが知られているが最近の調査によりそのチャンネル状窪みの上流と下流の表層に小規模の溶岩チューブが幾つか存在することが分かった。これにより溶岩降伏値と表層溶岩チューブ洞窟が形成された時の温度を推定したので報告する。図1に鑵子山と雷穴及び見つかった溶岩チューブ洞窟及び樹型の位置示す。
[割れ目噴火口列と雷穴]
図2と表1に示す雷穴は深い縦穴開口部の下に連通した横穴空洞をもつ洞窟である(写真1,2)。雷穴の深い縦穴開口部は従来からガス噴出孔2,4)と言われており,2010年の立原弘,大島治らの調査により割れ目噴火口列の延長線上にあることから割れ目噴火口の一部であると指摘されている. その底部にある横穴空洞は溶岩チューブ洞窟としての特徴(床面の縄状溶岩、壁面の溶岩棚、アーチ状天井等)は全くみられず,割れ目をマグマがドレンバックして出来た割れ目噴火口洞窟と明らかに見なせる。空洞は両側の平行した壁に挟まれ,崩落した側壁の奥にスコリア層がみられる.
[表層溶岩チューブ洞窟]
雷穴のすぐ上流と下流の表層には図1に位置を示す小規模な矩形断面の溶岩チューブ洞窟(大きなもので空洞高さ:1m,幅:4.8m,長さ:5.8m)が存在する(写真3)。下流にあるものは等高線から判断すると傾斜角α=8度(sinα=0.143)程度で,チューブ空洞高さH=1m ,g =9.8m/sec2, ρ=2500kg/m3から,溶岩降伏値5) fb=(H g ρ sinα)/3からfb=1168 Paとなる。玄武岩として妥当な値である。ここではIshibasi&Sato6)が富士山1707噴出玄武岩で計測したデータを利用して作成した温度依存式7)を使って温度を求めると1068℃であった。
[おわりに]
鑵子山から南部に連なる雷穴があるチャンネル状窪みの表層に,幾つかの表層溶岩チューブ洞窟が形成されている。表層溶岩チューブ洞窟から得られた降伏値1168 Paは玄武岩として妥当な値である。この降伏値から表層溶岩チューブ洞窟が形成された時の温度を推定すると1068℃であった。なお、鑵子山溶岩流の十里木樹型群については現在調査を継続中である。
参考文献:
1)高田亮,山元孝広,石塚吉浩,中野俊(2016):富士火山地質図(第2版)説明書,産業技術総合研究所
2)小川孝徳(1980):富士山の溶岩洞穴・溶岩樹型の地質学的観察,洞人,第2巻,第3号,日本洞窟協会
3)遠藤秀男(1983):奇怪と伝説 富士山の洞窟探検,昭和58年6月1日発行,緑星社
4)小川孝徳(1991):裾野市文化財調査報告書第5集,富士南麓の溶岩洞窟,裾野市教育委員会
5)本多力(2017):溶岩チューブ生成と溶岩チューブ洞窟形成モデルの 月・火星への適用,第61回宇宙科学技術連合講演会予稿集1B11
6)H.Ishibashi,H.Sato(2010):Journal of Mineralogical and Petrological Science,volume105,pp334-339
7)本多力(2020):P10富士火山の溶岩チューブ洞窟形成時の溶岩温度の同定,2020年日本火山学会秋季講演会