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[SVC31-02] 噴出物組織から推定される浅間火山1783年噴火の噴火様式変化の要因
キーワード:浅間火山、噴火様式、マグマ上昇過程
火山噴火の様式のひとつであるプリニー式噴火は, 大規模な噴煙柱の形成に特徴づけられるが, しばしば火砕流の発生へと活動が変化することで知られる. 噴火様式変化を引き起こすメカニズムを明らかにすることは火山学上の大きな課題であり, マグマ上昇過程の定量的研究が不可欠である. マグマの火道上昇過程における結晶化や脱ガス, 発泡などの素過程は噴出物の岩石組織に反映されるため, 岩石組織の解析はマグマ上昇過程を制約する重要な手段となりうる. 本研究では, 噴火推移を示した事例として浅間火山1783年噴火を対象とし, 噴出物の地質学的記載, 化学組成分析, 岩石組織解析を通して活動推移メカニズムを考察した. 1783年噴火のクライマックスでははじめに噴煙柱形成を伴うプリニー式噴火が発生し, その後火砕流へと様式が変化した. 噴火様式の変化に伴ってマグマの化学組成が変化し, 比較的苦鉄質な組成が卓越するようになる. 降下堆積物, 吾妻火砕流堆積物について記載, 採取を行い, 降下積物層については14枚の層準に区別した. 下半部はクライマックス噴火より前のプリニー式噴火で, 上半部はクライマックス噴火時に噴出した白色軽石であり, 中部には小規模な火砕流の灰神楽に由来するサージ堆積物とみられる赤褐色シルトが少なくとも5枚確認できる. また, いずれの層においても本質岩片を10wt%以上含む. 吾妻火砕流の本体は比較的発泡度の低い灰色軽石が卓越し, 基底部は白色軽石を主体とする. 降下軽石層の各層, 吾妻火砕流の2種類の本質物について, 密度測定および電子顕微鏡による観察, 画像解析による気泡組織の解析を行った. みかけ密度は降下軽石と火砕流本質物で異なる分布を示し, 火砕流本質物は降下軽石よりも密度が高い. 降下軽石の平均みかけ密度は0.7~0.8 g/㎤, 火砕流本質物は2つのピークを持ち, 0.8~0.9 g/cm3低密度な分布と1.20 g/cm3以上の高密度な分布を示した. SiO2量は67wt%, 73wt%にピークを持つバイモーダルな分布を示す. 降下軽石は72wt%, 火砕流本体の灰色軽石は67wt%の組成が卓越する. マグマの温度, 含水量については, Putirka (2008) の斜長石―メルト温度計, Waters and Lange (2015) の斜長石―メルト含水量計を用いて計算を行い, SiO2= 67 wt%のマグマでT=1030~1090℃, H2O=1.6~2.0 wt%, SiO2=72 wt%のマグマでT=960~1000℃, H2O=1.9~2.3 wt%という値を得た. 100μm未満の小型の気泡は噴火直前に形成されたものであり, 100μm以上の大型の気泡は合体の効果を強く受けているか, あるいはマグマ溜りで形成された気泡であることが推測された. 火砕流発生時には5μm以下の気泡が顕著に含まれる. 気泡数密度は1014~1015(個/m3)程度であり, Toramaru (2006)の気泡数密度減圧速度計から, 降下軽石では4.2~12MPa/s, 火砕流と同時期の降下軽石で16~21MPa/s, 火砕流本質物で15~36MPa/sの値が得られた. これらの値は定常的な火道上昇時に見積もられる減圧速度より大きく, 急減圧を経験したと考えられる.
火砕流発生時の噴出物に含まれる本質岩片量から, 火砕流発生ステージには火道の閉塞があったことが示唆される. 火道閉塞の解消に伴って火道深部へ急減圧が伝播し, 気泡核形成が発生した可能性が考えられる. 火砕流発生時では5μm未満の気泡が顕著に含まれ, 高い数密度と低い発泡度を示した. このような特徴を示す原因として, 破砕深度が低下したことにより気泡成長・合体の時間が制限された可能性が考えられる. 火砕流発生の要因については, 異質岩片量の変化をもとにすると火道径の大幅な拡大とそれに伴う噴出速度の低下は考えにくい. 一方, 減圧から破砕までの時間が短くなった場合, 気相へ析出するガス量が減少し, 気泡同士の合体が促進されず噴出物外部にガスが分離されにくくなるかもしれない. このようなプロセスは, 噴煙に供給されるガス量を減少させ火砕流発生の要因となる可能性がある.
火砕流発生時の噴出物に含まれる本質岩片量から, 火砕流発生ステージには火道の閉塞があったことが示唆される. 火道閉塞の解消に伴って火道深部へ急減圧が伝播し, 気泡核形成が発生した可能性が考えられる. 火砕流発生時では5μm未満の気泡が顕著に含まれ, 高い数密度と低い発泡度を示した. このような特徴を示す原因として, 破砕深度が低下したことにより気泡成長・合体の時間が制限された可能性が考えられる. 火砕流発生の要因については, 異質岩片量の変化をもとにすると火道径の大幅な拡大とそれに伴う噴出速度の低下は考えにくい. 一方, 減圧から破砕までの時間が短くなった場合, 気相へ析出するガス量が減少し, 気泡同士の合体が促進されず噴出物外部にガスが分離されにくくなるかもしれない. このようなプロセスは, 噴煙に供給されるガス量を減少させ火砕流発生の要因となる可能性がある.