09:30 〜 09:45
[U01-03] 科学技術外交の視点から見た日本学術会議
★招待講演
キーワード:科学技術外交、日本学術会議
2015年、外務省に外務大臣科学技術顧問のポストが置かれ、初代の顧問に任命され約4年半科学技術外交の仕事を続けた。科学技術(以下省略して科学)外交には3つの役割がある。
一つ目は「外交における科学技術(Science in Diplomacy)」で、外務大臣に対する助言・提言が重要な役割となる。となる。 例えば、STI for SDGsに関しては、国際協力によるロードマップの作成を提言し、この内容は、ニューヨークの国連本部で私自身が世界に呼びかけてきた。
二つ目は、「科学のための外交(Diplomacy for Science)」である。外交活動を進めて、日本の科学技術の向上に寄与することが目的となる。在外日本大使館、内閣府と連携し、日本のイノベーションに向けた研究開発の状況を各国に紹介し、将来の国際協調について討議した。
三つめは、「外交のための科学(Science for Diplomacy)」である。各国の科学技術外交の責任者とネットワークを形成し、将来の外交への科学技術からの貢献を探ってきた。米国、英国、ニュージランド、そして日本の4か国で、外務省科学技術顧問ネットワーク(FMSTAN)を2016年に立ち上げ、科学的助言の在り方を検討している。
ここで、外交(Diplomacy)を政策(Policy)に置き換えると、「政策における科学(Science in Policy )」,「科学のための政策(Policy for science)」, 「政策のための科学(Science for Policy)}ということになる。アカデミーの最も重要な役割である、助言・提言・勧告の位置付けと直結する。我が国の科学技術の世界では、Science in Policy は、内閣府では総合科学技術イノベーション会議(CSTI)が推進し、各省庁では審議会がその役を引き受けている。Policy for Scienceは、CSTIの最も重要な仕事と言える。これに対して、Science for Policy を推進するのがアカデミーの役割である。
この位置付けを明確にした推進が日本では理解されていない。例えば、コロナの対策においても、科学者が政府に飲み込まれ、Science in Policyの域を出ることなく、真にScience for Policy を検討する場が欠けている。感染症は長期的課題であり、日本学術会議が今からでも、トップレベルの研究者を集めた感染症対策委員会を立ち上げることが期待される。
一方で、学術会議も、会員任命で大きな問題を露呈している。政府が任命拒否しているのは認めがたいことではあるが、前回、会員任命において、実質事前協議をおこなっているのを、今回省いている学術会議側にも責任はある。ただし、今なぜ組織の見直しが表面化してきたのかは理解できない。
栄誉機関として日本学士院が存在し、討議機関として学術会議と分離している組織は日本の特徴である。栄誉ある科学者の答申であるので説得力があるという考え方は重要な視点になる。会員任命は世界中CO-OPTATIONであるが、任期があるのは日本ぐらいである。会員を選出する基盤としての研究者の定義は、博士(Phd)の学位の所有者が基本となっている。定員配分にもこの点の配慮も必要である。
もう一つ大事な点は、科学には国境がないという想定で、常に世界学術会議などとの連携を持ち、グローバルな視点からの発信が必要になる。
最後に加えたいのが、デユアルユースの取り組みである。今回、政府の反発を受けたのはこの点にあり、原則論と科学技術の両用分離が難しい事実を見て取り、大人の対応が大事であろう。また加えて、今後は技術の流用、転用など研究インテグリティ―が大きな課題になり、この点にも意を用いなくてはならない
一つ目は「外交における科学技術(Science in Diplomacy)」で、外務大臣に対する助言・提言が重要な役割となる。となる。 例えば、STI for SDGsに関しては、国際協力によるロードマップの作成を提言し、この内容は、ニューヨークの国連本部で私自身が世界に呼びかけてきた。
二つ目は、「科学のための外交(Diplomacy for Science)」である。外交活動を進めて、日本の科学技術の向上に寄与することが目的となる。在外日本大使館、内閣府と連携し、日本のイノベーションに向けた研究開発の状況を各国に紹介し、将来の国際協調について討議した。
三つめは、「外交のための科学(Science for Diplomacy)」である。各国の科学技術外交の責任者とネットワークを形成し、将来の外交への科学技術からの貢献を探ってきた。米国、英国、ニュージランド、そして日本の4か国で、外務省科学技術顧問ネットワーク(FMSTAN)を2016年に立ち上げ、科学的助言の在り方を検討している。
ここで、外交(Diplomacy)を政策(Policy)に置き換えると、「政策における科学(Science in Policy )」,「科学のための政策(Policy for science)」, 「政策のための科学(Science for Policy)}ということになる。アカデミーの最も重要な役割である、助言・提言・勧告の位置付けと直結する。我が国の科学技術の世界では、Science in Policy は、内閣府では総合科学技術イノベーション会議(CSTI)が推進し、各省庁では審議会がその役を引き受けている。Policy for Scienceは、CSTIの最も重要な仕事と言える。これに対して、Science for Policy を推進するのがアカデミーの役割である。
この位置付けを明確にした推進が日本では理解されていない。例えば、コロナの対策においても、科学者が政府に飲み込まれ、Science in Policyの域を出ることなく、真にScience for Policy を検討する場が欠けている。感染症は長期的課題であり、日本学術会議が今からでも、トップレベルの研究者を集めた感染症対策委員会を立ち上げることが期待される。
一方で、学術会議も、会員任命で大きな問題を露呈している。政府が任命拒否しているのは認めがたいことではあるが、前回、会員任命において、実質事前協議をおこなっているのを、今回省いている学術会議側にも責任はある。ただし、今なぜ組織の見直しが表面化してきたのかは理解できない。
栄誉機関として日本学士院が存在し、討議機関として学術会議と分離している組織は日本の特徴である。栄誉ある科学者の答申であるので説得力があるという考え方は重要な視点になる。会員任命は世界中CO-OPTATIONであるが、任期があるのは日本ぐらいである。会員を選出する基盤としての研究者の定義は、博士(Phd)の学位の所有者が基本となっている。定員配分にもこの点の配慮も必要である。
もう一つ大事な点は、科学には国境がないという想定で、常に世界学術会議などとの連携を持ち、グローバルな視点からの発信が必要になる。
最後に加えたいのが、デユアルユースの取り組みである。今回、政府の反発を受けたのはこの点にあり、原則論と科学技術の両用分離が難しい事実を見て取り、大人の対応が大事であろう。また加えて、今後は技術の流用、転用など研究インテグリティ―が大きな課題になり、この点にも意を用いなくてはならない