日本地球惑星科学連合2021年大会

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[U-01] 地球惑星科学コミュニティと日本学術会議

2021年5月31日(月) 10:45 〜 12:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、沖 大幹(東京大学大学院工学系研究科)、木村 学(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:佐竹 健治(東京大学地震研究所)、木村 学(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[U01-07] 学術の大型研究施設計画・大規模研究計画のマスタープラン策定

★招待講演

*藤井 良一1 (1.情報•システム研究機構)

キーワード:学術の大型研究施設計画・大規模研究計画、マスタープラン、日本学術会議

日本学術会議が策定する学術の大型施設計画・大規模研究計画(以下「学術大型研究計画」)に関するマスタープラン (以下,「マスタープラン」) は,科学者コミュニティの代表としての日本学術会議が,全学術分野における学術的意義の高い大型研究計画を網羅的に体系化して日本の学術のポテンシャルを示すとともに,我が国の大型研究計画のあり方の指針を与えることを目的として策定するものである.2010年に最初のマスタープランを策定し,2011年に小改訂を行なった.それ以降2014年,2017年と3年ごとに改訂し,昨年2020年には科学者委員会 研究計画・研究資金検討分科会(以下「分科会」)が公募・審査・採択しマスタープラン2020を公表した.

学術大型研究計画は,人文社会科学,生命科学,理学工学及びこれらの融合領域からなる学術の全分野を対象に,各学術分野が,科学者コミュニティの十分な議論と準備,総意の下に立案し実施を目指すもので,長期(10年程度またはそれ以上)の実施期間と予算総額数10億円超の規模を有する大型施設計画と大規模研究計画からなる.大型施設計画は,大型研究施設や付随する設備等を建設・整備・運用して科学の最先端を切り開く研究計画である.大規模研究計画は,科学者コミュニティが一致して熱望する重要課題を実施するために多くの研究者を組織し,長期間に亘る観測の推進や大規模なデータ収集組織やデータベースの構築,広範な研究者を巻き込んだ共同研究を展開することによって,新たな知を創造する計画である.重点大型研究計画は,これらの学術大型研究計画の中から特に速やかに推進すべき計画として選定されるものである.提案及び審査いずれもボトムアッププロセスで行っている.

マスタープラン2020を例に説明すると,「第24期学術の大型施設計画・大規模研究計画に関するマスタープラン策定の方針」を2018年12月6日に公表し,その後公募(2019 年2月1日〜3月29日)により,学術大型研究計画の提案募集を行った.人文・社会科学分野の提案については,第一部(人文社会科学)評価小分科会で,生命科学分野及び理学・工学分野の提案については,それぞれ第二部(生命科学),第三部(理学・工学)の分野別委員会に対応する専門分野別の22の評価小分科会で評価を行った.今回,融合領域の提案については,新たに第一部,第二部,第三部の会員・連携会員で構成される融合領域の評価小分科会を設置し評価を行なった.

従来重点大型研究計画は,前期に採択された計画も新たに審査してきたが,マスタープラン2020では新たな方式として,3期9年以上継続して重点大型研究計画に選定された計画はリセットして新規提案として扱い,一方2期6年以内の重点大型研究計画で継続を希望する場合には,以下の2条件を満たすと分科会が判定した場合には,重点大型研究計画に選定することとした.(条件1)計画の準備状況に進展が見られる.(条件2)当該学術コミュニティが総意として継続を希望・了承している.一方,新規の重点大型研究計画の選定については,当該専門分野の評価小分科会の評価結果を基にヒアリング対象計画を選定し,分科会と評価小分科会の委員長からなる重点大型研究計画審査小委員会でヒアリングを行い,その評価結果を基に分科会が新規の重点大型研究計画を選定した.

評価は,学術大型研究計画については,1)計画の学術的意義,2)科学者コミュニティ の合意,3)計画の実施主体の明確性,4)計画の妥当性,5)共同利用体制の充実度,6) 社会的価値,7)大型研究計画としての適否,の観点から実施した.さらに観点1)から7)に加えて,8)成熟度,9)我が国としての戦略性,緊急性等の観点から,特に速やかに推進すべき計画として新規の重点大型研究計画を選定した.

これらのプロセスを経て,マスタープラン2020として146件の新規の学術大型研究計画を選定した.いずれも学術的意義の高い大型研究計画である.さらにこの中から16件の新規重点大型研究計画を選定するとともに,15件の重点大型研究計画の継続を承認し,計31件の重点大型研究計画を選定した.重点大型研究計画は,学術大型研究計画の中でも特に優先順位が高く可及的速やかに推進されるべきものである.科学者コミュニティのボトムアッププロセスによって策定されたマスタープランは直接的に予算獲得と結びつける趣旨はないが,十分に検討された将来の骨格をなす研究計画を持つことは各学術分野を国際的にも強め,将来の発展に寄与するものであり,多様な学術の発展に貢献すると確信している.実現のため,我が国の学術政策,さらに関係省庁,大学,研究機関等における具体的施策や予算措置に活かされるよう提言するものである.