日本地球惑星科学連合2021年大会

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[U-04] JpGUにおけるSDGsの推進

2021年6月1日(火) 13:45 〜 15:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、ウォリス リチャード サイモン(東京大学)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)

13:45 〜 14:00

[U04-01] アジェンダ2030の先に向けた地球惑星科学

*沖 大幹1 (1.東京大学大学院工学系研究科)

キーワード:科学と社会、持続可能な開発目標、知的好奇心の充足

「持続可能な開発目標(SDGs)」は2015年9月に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(アジェンダ2030)」の中核をなす世界共通の目標群である。先立つミレニアム開発目標(MDGs)のように各国政府と国際機関だけで決めるのではなく、Open Working Groupで市民組織やグローバル企業も交えて話し合われたのが特徴である。

Silo Approach(タコつぼ)と揶揄されるように17の目標169のターゲットに細分化されているが、そのおかげで、多くの人や組織にとって自らの活動と何らかの結び付きが見いだせるため、我がこととしての参画が進んだという側面もある。

日本では環境の側面が強調されやすいSDGsであるが、アジェンダ2030には経済、社会、および環境という持続可能な開発の三側面の調和をさせる、あるいは人権や尊厳の尊重、地球環境の保全、繁栄の調和を目指す野心的な計画だと書かれており、環境も大事だが人権や社会正義、経済発展も同様に重要だというのがアジェンダ2030に書かれたSDGsの心である。

MDGsでは努力すれば達成可能な目標が設定された反面、「安全な飲み水にアクセスできない人口割合を半減する」といった目標では比較的容易に達成に貢献しそうな人や地域への支援や投資から始めてしまう、といういわゆるlow hanging fruitの問題が生じたという反省から、SDGsでは「誰一人取り残さない」が合言葉となり、「持続可能で公平なより良い未来へと我々の世界を変革する」と冒頭に宣言されている。

一見すると、SDG13の気候変動や海洋生態系(SDG14)、陸上生態系(SDG15)に加え、都市(SDG11)の安全や環境にも地球惑星科学は深く関係し貢献できそうであるが、ターゲットやその進捗を測る指標を細かく眺めると、純粋科学がぴったりと直接貢献できる項目は見当たらない。

しかしながら、国際天文学会は2020-2030の戦略計画の目標3に「すべての国の開発のツールとして天文学の利用を推進する」を掲げ、教育(SDG4)のみならず天文観光や機器開発といった産業振興(SDG8/SDG9)との関係、天文外交(SDG16)、ジェンダー(SDG5)に配慮したワークショップ、ハンディキャップを負った少数派を対象とした活動(SDG10)、さらには光害を削減した暗い夜空の実現(SDG7)などの取り組みで天文学を開発推進に役立てようとしている。

地球惑星科学でも、現状のSDGsの現状のターゲットや指標に厳密に従おうとするのではなく、アジェンダ2030の心、すべての人が尊厳と自尊心を持ってより良い人生を過ごせるようにしよう、という趣旨に沿った活動を様々に考案するのが良いのではないだろうか。

それに、現状のSDGsには含まれていないが、世界が解決すべき課題も多くある。例えばアジェンダ2030では急速な少子高齢化といった人口問題や、宗教をめぐる争いには言及していないし、現世の物質的な利益に重点が置かれ、文化、スポーツ、エンターテインメント、芸術、知的好奇心や幸福感の充足といった精神面に関する記述は弱い。

しかし、あるべき2030年の社会、あるいはその先の未来世界に知的好奇心の充足や芸術が不要だとは思えない。顕在化した課題の解決や現状の延長線上に想定される将来社会ではなく、望むべき未来の私たちの暮らしと知的生活を思い描き、その実現を地球惑星科学の教育と研究がどう支えるか、言語化して共有するのが良いと考えられる。