日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

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[U-06] 1時間でわかる学術会議:地球惑星科学分野の国際団体への支援

2021年6月3日(木) 13:45 〜 15:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:三枝 信子(国立環境研究所)、中村 卓司(国立極地研究所)、春山 成子(三重大学名誉教授)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:中村 卓司(国立極地研究所)、三枝 信子(国立環境研究所)

14:35 〜 14:40

[U06-10] INQUA(国際第四紀学連合)の活動と日本の貢献

*齋藤 文紀1 (1.島根大学エスチュアリー研究センター)

キーワード:国際第四紀学連合、チバニアン、人新世、地球環境変動

1928年に設立されたINQUA(国際第四紀学連合)は、第四紀を総合的に科学する世界で唯一の機関です。第四紀は、最も新しい地球史である今から258万年前までの期間を示します。現在の自然、環境、人類を理解する上で、また近未来の将来予測をする上で、最も重要な地質時代です。また、第四紀は人類が寒冷化や氷床拡大、海水準の変動、突発的な大気や海洋循環の変化によって、自然・生物の変化とともに進化してきた時代でもあります。第四紀におけるこれらの記録は、将来の氷床の減少や海面上昇、海洋の温暖化や酸性化、気候の不安定化、動植物の絶滅、火山や地震などの地殻変動、急激な環境変化への適応など、現在問題となっている環境問題を評価するための重要な基礎データとなります。
これらを理解するために、地質、地理、古生物、動物、植物、土壌、人類、考古、地球物理、地球化学、工学などの多岐にわたる分野から総合的に、また学際的に取り組むためにINQUAが設立され、多様な活動が取り組まれています。現在約60ケ国が加盟し、共にINQUAの活動を行なっています。
INQUAでは、現在以下の5つのコミッションが設置され、重点研究課題が遂行されています。
CMP:海岸・海洋プロセスコミッション、HABCOM:人類と生物圏コミッション、PALCOM:古気候コミッション、SACCOM:第四紀層序・年代学コミッション、TERPRO:陸域プロセスコミッション
INQUAでは、これらのコミッションを通じて、研究支援のプロジェクトを実施しており、第四紀の研究における国際的な協力や各地域における研究を促進し、知識や技術の発展や移転とともに、世界の若手研究者の育成を行なっています。INQUAの機関誌が、Quaternary Internationalになります。
また、INQUAは国際学術会議(ISC)の正式メンバーで、他の地球科学のユニオンとともに、ISCの中でGeoUnionを構成しています。
日本では、1955年に日本学術会議に地質学研連第四紀小委員会が設置され、後に第四紀研究連絡委員会となり、地質科学総合研連第四紀学専門委員会、地球惑星科学委員会INQUA分科会を経て、現在はINQUA小委員会としてINQUAに対応してきています。1957年以降、毎回INQUA大会に代表を派遣し、INQUA副会長職やコミッション委員長などを歴任してきています。これまでに20回の大会が実施され、第19回大会は2015年に名古屋において、日本学術会議の共催で、また天皇皇后両陛下のご隣席の下、行われています。
第四紀は、更新世と完新世に分けられ、更新世は前期、中期と後期に分かれます。昨年、中期更新世がチバニアンと国際的に命名されました。日本における第四紀研究の最も大きな貢献と言えるかと思います。INQUAが取り組む、人類の現在や未来に関わる地球規模の課題に対して、INQUAに参加し、貢献することは日本学術会議の大きな責務の一つです。