日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

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[U-07] 日本の学術出版とオープンサイエンス、オープンデータ

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)、座長:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)

16:30 〜 16:45

[U07-05] J-STAGEにおけるオープンサイエンス推進の取り組み:「J-STAGE Data」の開始

★招待講演

*中島 律子1 (1.国立研究開発法人科学技術振興機構)

キーワード:オープンサイエンス、論文、研究データ、J-STAGE

「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)は、国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST)が運営する電子ジャーナルプラットフォームである。日本から発表される科学技術(人文科学・社会科学を含む)研究成果の発信及びその迅速な流通を目的として、学協会や研究機関等の発行機関における科学技術刊行物の発行を支援し、国際情報発信力の強化、オープンアクセスの推進を図っている。

J-STAGEでは、サービスの企画・方針の策定、及びこれを受けたシステムの開発・運用、発行機関への各種サポートをJSTが担っている。システムは、発行機関が記事を登載するための機能と、登載された記事を公開する機能の両方を有しており、発行機関がこのシステムを用いて論文を公開することにより、サービスが成り立っている。

現在J-STAGEでは、国内の1,700以上の発行機関により、3,000誌以上のジャーナルや会議録等の刊行物が公開され、その記事数は500万記事を超える。このうち、およそ85%以上のジャーナルは誰でも自由にアクセスすることができ、日本の研究成果のオープン化に大きく貢献している。



しかし一方、世界に目を転じると、近年の学術コミュニケーションや研究ワークフローの変化に伴い、論文出版とそれを取り巻く各種情報提供サービスの姿は急激に変化している。変化として現れているものとして例えば、オープンアクセスに関わる出版形態と契約の多様化、プレプリントの増加、出版後査読やオープン査読等の新しい出版形態の出現、論文に紐付く研究データの公開の動き等が挙げられるが、その根底に流れるのはオープンサイエンスの潮流といえるだろう。

オープンサイエンスの進展に伴うデータの共有・利活用による新たな価値を創出する取り組みへの期待や、研究不正の防止や透明性向上に対する要求に応えるため、多くの大学や研究機関、研究資金提供機関等でデータ管理・公開に係る方針の策定が行われている。さらに、データの公開や共有に関するポリシーの整備が論文出版においても進んでおり、研究者が研究成果論文を発表する際、その根拠となるデータの公開を求められる場面が増えている。国際的な大手商業出版社では、論文に関連する研究データに係るポリシーがWebサイトで公開されている。データの入手可不可に関する表示、リポジトリへのデータの登載、論文からのデータ引用及びリンク、データの査読、再利用に関するライセンス等について、推奨、義務化等の要求レベルが示されており、そこで出版されるジャーナルではこれらに準拠したポリシーが示されるようになっている。



このような状況を受けて、JSTにおいても、令和2年3月に、論文根拠データの公開プラットフォーム「J-STAGE Data」のパイロット運用を開始した。登載されたデータには、DOI(デジタルオブジェクト識別子)が登録され、J-STAGE等に登載された論文からリンクさせることが可能であるとともに、研究データ単独で流通させることも容易になる。そのため、メタデータの記述も詳細に行う仕組みとなっており、分野、キーワード、著者、タイトル、データの種類等で検索可能である。J-STAGE Dataに登載されるデータはすべてオープンアクセスであり、出版元である利用機関が、二次利用の範囲を定めるライセンスを付与している。

令和3年1月末現在、3誌により37データが公開されており、今後さらに参加誌が増加する見通しである。JSTでは、このパイロット期間中に、参加機関の協力のもと運用体制の整備を進めており、今年度末の本格運用開始を目指している。