日本地球惑星科学連合2021年大会

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[U-11] 多様性と平等-日欧米の地球惑星科学分野からの報告と今後の展望

2021年6月4日(金) 13:45 〜 15:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:堀 利栄(愛媛大学大学院理工学研究科 地球進化学)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、Claudia Jesus-Rydin(European Research Council)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:堀 利栄(愛媛大学大学院理工学研究科 地球進化学)、坂野井 和代(駒澤大学)、阿部 なつ江(国立研究開発法人海洋研究開発機構研究プラットフォーム運用開発部門マントル掘削プロモーション室)

13:45 〜 13:57

[U11-01] JpGUにおける多様性と平等の現状と将来ビジョン

*田近 英一1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:多様性、平等、ジェンダー

日本地球惑星科学連合(JpGU)は,ジェンダー問題に関して設立当初より重視しており,ダイバーシティ推進委員会を設置してこれに取り組んできた.それにもかかわらず,現在の正会員に占める女性の比率は18.4%にすぎない.これは,年代が上がるにつれに大きく低下し,50歳代以上では10%以下である.しかし,別の見方をすれば,年齢が若くなるほどこの比率は高くなり,40歳代では16%,30歳代と20歳代では約26%となっている.さらに,大会に参加している大学学部生では30%,高校生に至っては43.5%に達する.若い世代では年配の世代と比較して顕著に比率が高くなっている.これは,日本において1999年に施行された男女共同参画社会基本法の影響かも知れない.日本の若い世代の意識が変化してきた証拠である.

一方,世界ジェンダーギャップ報告書 (Global Gender Gap Report) 2020によれば,日本のジェンダー平等格差は153カ国中121位であることは,よく認識されている.このことは,日本社会の意識・制度改革が国際的にみてきわめて遅れている事実を物語る.とりわけ,日本における大学進学率において,男女差はそれほど大きくはなくなってきたにもかかわらず,理系進学者に占める女性の割合は3割程度にすぎずない.これは,専門分野を決めるに当たって,理系進学を妨げるさまざまな要因があるためである.ここにメスを入れなければ,根本的な改善は見込めない.同時に,研究者の採用や昇進において,女性研究者を正当に評価することが必要である.

JpGUでは,今期,すべての委員会の委員及びすべてのセクションのサイエンスボードにおける女性比率の数値目標を定めた.これは初めての試みである.目標値は30%であり,最低でも20%をクリアすることをお願いした.大学院生を除いたJpGUの正会員における女性比率は15.5%であるため,結果的には女性研究者に過剰な負担をかけることになるが,こうした取り組みは重要であると考えており,今後も積極的に行っていく.選挙によって選ばれるJpGUの代議員に占める女性比率は15%,理事においては17.4%であるが,この数字を上げる努力もしていきたい.今期,JpGU執行部にようやく女性副会長を置けたことは(さらに1名は外国人副会長である)ダイバーシティの観点から,わずかではあるが,着実に前進であると考えている.

その他,Geodethicsを制定してハラスメント問題等を抑止するほか,受賞における女性研究者の正当な評価についての議論を始めるなど,現在さまざまな側面から検討を進めている.女子中高生向けに理学の面白さを伝える活動をしていくほか,女性研究者を正当に評価することを促す努力など,今後,JpGUとしてダイバーシティと平等の問題の改善に全力で取り組む.