日本地球惑星科学連合2021年大会

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[U-14] 変動する地球に生きるための素養を育む地球教育の現状と課題

2021年6月5日(土) 17:15 〜 18:30 Ch.01

コンビーナ:市川 洋、中井 咲織(京都光華女子大学こども教育学部こども教育学科)、熊谷 英憲(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、西 弘嗣(東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館)

17:15 〜 18:30

[U14-P02] 教員養成段階での理科・地学の学びの実態 -小学校教諭二種免許状取得の場合-

*根本 泰雄1 (1.立命館大学理工学部)

キーワード:教員養成課程、小学校教諭二種免許状、小二免、理科、地学

小中高等学校にて地学に関係する教科・科目を担当する教員を養成する,大学等の教員養成課程での学びの実態を明らかにすることが本研究の目的である.その第一段階として,小学校教諭二種免許状(小二免)の取得が可能な短期大学教職課程での科目開講状況等の調査を行った.
 調査の結果,小二免取得が可能な課程を2019年度に卒業した約2,000人の卒業生のうち,高等教育段階(短大)にて理科に関係する学びが皆無のまま小学校教員となった人が少なくとも50人程度はいる可能性が見出された.また,小二免取得者の約半数は高等教育段階(短大)にて理科に関係する学びが皆無である可能性も見出された.
 小二免は,教科「理科」が無い小学校1・2年生だけを担当可とする限定免許とする,小二免取得要件として理科に関係する科目の必修化を行う,といった意見を,今後教員養成に関する提言の内容に取り入れていくことを考えるべきである.


調査概要:
 調査には,小二免取得可能な教職課程のある短期大学(短大)全19校の履修の手引き等の履修ガイドが掲載されている冊子等,および開講されている理科教育,地学,地学教育など理科に関係する科目(理科関連科目)のシラバスを用いた.対象とした年度は,COVID-19の影響を考え,2019年度とした.

結果概要:
(1)理科関連科目のうち,理科教育に関わる科目(2単位)に関して
 全15回(換算)の授業回数にて地学を取り扱っている回数は,平均すると1回であり,最も多い科目で4回,最も少ない科目では0回であった.よって,授業内で地学に触れる時間数は多くても僅かに6時間である.
(2)必修,選択必修,選択の違い
 教育職員免許法に依れば,小二免取得のためには,理科関連科目の単位取得は必ずしも求められてはいない.
 全19校のうち,理科関連科目を必修として設定している短大が8校,選択必修として設定している短大が11校であった.仮に,必修としていない短大の学生が理科関連科目の履修を全く行わなかったとするなら,短大生時代に理科関連科目を履修する学生は約4割と半数以下であることが判明した.逆に考えると,半数以上の卒業生が高等教育段階(短大)にて理科に関する学びが皆無であることとなる.
(3)小学校教員になった卒業生の状況
 小二免取得可の課程を2019年度に卒業した約2,000人のうち約12%が小二免を取得しており,その約半数が教員となっていた.正規採用,臨任等の内訳が公表されている短大8校(その他の短大は,過去3年間の合計数などの公表であり,2019年度の状況が読み取れなかった)に限定すると,正規採用が15名,臨任等での採用が49名であった.前者の2割は確実に理科関連科目を履修しているが,8割は未履修である可能性もある.後者の約3割は確実に理科関連科目を履修しているが,約7割は未履修である可能性もある.

考察:
 個々の卒業生の取得科目を調べることは困難であり,正確な実態を掴むことはほぼ無理ではあるが,仮に理科関連科目が必修ではない短大を卒業した人は理科関連科目未履修であると仮定するなら,高等教育段階(短大)にて理科関連の学びが0で小学校の教壇に立つ人が,2019年度卒業生の場合,全国で少なくとも50人弱いたこととなる.また,理科関連科目を履修していても,理科教育に関わる科目であれば,地学の内容は授業として最大6時間の学びでしかない.
 小学校での「理科」の学び,“地学”の学びを考えるのであれば,小二免取得要件や小二免の位置づけの変更などを真剣に考え直す必要があると思われる.また,JpGU等が中心となり,小学校教員を目指す短大生向けの地学の自学自習書などを作成することも考える必要があると思われる.