日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG41] 航空機・無人機観測による地球惑星科学の推進

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、町田 敏暢(国立環境研究所)、コンビーナ:篠田 太郎(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、座長:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

16:30 〜 16:45

[ACG41-05] 新ジェット機へのドロップゾンデシステムの搭載と台風Mindulleのテスト観測

*坪木 和久1,8高橋 暢宏1篠田 太郎1、加藤 雅也1金田 幸恵1大東 忠保2山田 広幸3伊藤 耕介3平野 創一朗3、中澤 哲夫4辻野 智紀4堀之内 武5南出 将志6清水 慎吾2、清水 健作7長浜 則夫7 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所、3.琉球大学理学部、4.気象研究所、5.北海道大学地球環境科学研究院、6.東京大学大学院工学系研究科、7.明星電気株式会社、8.横浜国立大学 台風科学技術研究センター)

キーワード:台風、航空機観測、ドロップゾンデ観測、急速発達

台風は、北太平洋西部で最も激しい気象現象で、毎年、日本だけでなく東アジアに大きな災害を起こしている。台風の強さや進路を正確に予測することは防災上最も重要であるが、台風の強度推定には大きな不確実性があり、強度予測はこの数十年ほとんど改善されていない。さらに、台風の急速発達が、強度予測をより困難にしている。これらの問題を解決するためには、航空機を用いた直接観測が必要である。T-PARCII(Tropical cyclone-Pacific Asian Research Campaign for Improvement of Intensity estimations/forecasts)プロジェクトでは、2017年から台風の航空機による直接観測を実施している。T-PARCIIの第1期は2021年度に終了し、2021年7月から科学研究費補助事業科研費基盤研究(S)の支援を受けた第2期が開始された。第2期では、台風強度の正確な計測と予測に加え、急速発達のメカニズムや二重壁雲構造の解明を目的としている。
ダイヤモンドエアサービス株式会社のガルフストリームIIが退役し、新たにガルフストリームIV(G-IV)が就航した。名古屋大学の支援により、2021年8月に明星電気株式会社のドロップゾンデシステムをG-IVに搭載した。2021年9月7日、日本海上空でドロップゾンデ投下試験飛行が行われた。G-IVの後を別の航空機が追尾し、高度2万フィートでドロップゾンデ投下を観察した。さらにG-IVは、高度40,000フィートでドロップゾンデの投下試験を行った。G-IVからは8個のドロップソンドが射出され、すべて成功した。
G-IVに搭載されたドロップゾンデシステムを使って、T-PARCIIチームは台風の観測実験を行った。台風16号(Mindulle)が2021年9月23日に北緯13.6度、東経143.3度で発生し、沖縄方面に向かって北西に進んだ。Mindulleは9月26日にフィリピンの東でスーパー台風の強度に達し、このとき二重壁雲構造を示した。9月29日、沖縄本島の南西で北緯23度付近に達したとき、T-PARCIIはMindulleの航空機観測を実施した。G-IVは名古屋小牧空港を離陸し、南下して沖縄地方に向かい、南大東島上空では、ドロップソンデの精度を確認するため、ドロップソンデと南大東島から打ち上げられたバルーンゾンデとの比較を実施した。比較試験の後、G-IVは南西からMindulleの眼に接近した。Mindulleの内部コア領域を観測するため、バタフライパターンのフライトパスを用いて、高度45,000フィートで眼に3回侵入する観測が行われ、眼と眼のアイの周辺に合計31個のドロップソンドを投下した。ドロップゾンデのデータはすべてリアルタイムで名古屋大学に送信された。観測時には二重壁雲構造は消滅していたが、中心気圧と最大風速は観測され、眼の暖気核構造も確認された。この試験観測は、今後の台風の航空機観測に期待させるものである。