日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 黒潮大蛇行

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西川 はつみ(東京大学 大気海洋研究所)、コンビーナ:平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、コンビーナ:日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 )、座長:碓氷 典久(気象研究所)、平田 英隆(立正大学)

13:45 〜 14:05

[ACG44-01] 黒潮大蛇行(2017~)のこれまでとこれから

★招待講演

*美山 透1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構・アプリケーションラボ)

キーワード:黒潮大蛇行、海洋予測、スケール相互作用

2017年に始まった黒潮大蛇行は、予稿執筆時点で約4年7か月続いている。観測史上最長の1975-1980年の4年8か月を超える目前である。この大蛇行は、海洋生物の変調、高潮、南岸低気圧による降雪、夏期の関東・東海の湿潤高温などに関係している可能性が指摘されている。
 2017年の大蛇行は小蛇行が発達することで始まった。これは従来の大蛇行の発展と同じである。一方で、黒潮流路が八丈島の南を流れる(離岸流路)状態から始まるというかつて無い始まりを見せた。
 4年を越える黒潮流路は常に同じような流路であった訳ではない。黒潮大蛇行が始まってから2018年前半までは、しばしば流路が八丈島の南を通る非典型的な流路を見せていた。2018年からは蛇行が西に移動した。このことにより東海沿岸での内則反流の影響が大きくなった。一方で、黒潮大蛇行からしばしば冷水渦が切離した。特に2020年10月の冷水渦の切離は大きく、一時大蛇行が終わったような流路になったが、その後大蛇行流路が再開した。2022年2月にも大規模な冷水渦の切離が起こり、今後の流路への影響が注目される。大蛇行の本質が大スケール渦だと考えれば、小さな渦とのスケール相互作用が成長・維持・衰退に関わっている。
 この大蛇行が長期間続いている理由は、黒潮が弱く冷水渦を東に押し流さないためだと考えられる。気象庁の137度線観測によれば、黒潮の流量は1970年台から1980年台に増加した後、1990年代降は減少してきている。これが久しぶりの黒潮大蛇行長期化の理由である可能性がある。このことは今後の黒潮大蛇行の頻度や期間に影響を与えるだろう。