日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG44] 黒潮大蛇行

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (13) (Ch.13)

コンビーナ:西川 はつみ(東京大学 大気海洋研究所)、コンビーナ:平田 英隆(立正大学)、碓氷 典久(気象研究所)、コンビーナ:日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 )、座長:日下 彰(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)、西川 はつみ(東京大学 大気海洋研究所)

11:00 〜 13:00

[ACG44-P04] 黒潮大蛇行域における大気応答―新青丸KS-21-9次研究航海速報―

*西川 はつみ1岡 英太郎1杉本 周作2川合 義美3、小橋 史明4 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.東北大学、3.海洋研究開発機構、4.東京海洋大学)

キーワード:黒潮大蛇行、冷水塊、大気海洋相互作用、ラジオゾンデ観測

2017年8月に始まった今回の黒潮大蛇行は,観測史上1975~1980年のイベント(4年8ヶ月)に次ぐ長期イベントとなっている。大蛇行期には,黒潮と東海地方南岸との間の沿岸域に冷水塊が存在することが知られている。一方,関東・東海地方の南岸では大蛇行期に,西向きの黒潮分岐流が沿岸海域の昇温を引き起こしていることも報告されている。これらの大蛇行期の特徴的な海洋構造である冷水塊や沿岸昇温は,冬季の温帯低気圧経路の南方シフト(Nakamura et al. 2012; Hayasaki et al. 2013)や,関東・東海地方の猛暑(Sugimoto et al., 2020; 2021)など,大気にも影響を与えることが先行研究により報告されている。しかし,これまでの研究は再解析データ・衛星観測データ・数値実験などを用いた解析で主であり,直接観測データが不足しているため,黒潮大蛇行域の“実際の”大気鉛直構造はよく分かっていない。そこで,2021年5月に黒潮大蛇行域で集中的な大気海洋観測を実施し,大蛇行期間中の詳細な大気海洋構造を捉えた。
ラジオゾンデによる大気観測の結果,黒潮上の大気混合層は600〜800m,冷水塊上の大気混合層は200〜300mなど,黒潮上と冷水塊上の大気構造のコントラストが明瞭に確認された。また,黒潮横断時の強い海面水温フロント(3K/100km)に対する大気の応答も観測され,高度約500mまで3K/100kmの強い水平温度勾配が確認できた。
また,気象庁のメソスケールモデル(MSM)と観測値を比較したところ,冷水塊上の大気下層では観測値はMSMより0.5〜1K程度低くなっていた。MSMで用いられているMGD-SSTの海面水温は,観測された海面水温より0.5〜1K程度,冷水塊域で高かった。MSMと観測の大気下層の気温差は,MGD-SSTの海面水温の高温バイアスが原因の可能性がある。
当日は,シーロメータ―などの自動連続気象観測の結果も含め,黒潮大蛇行域での詳細な大気応答について紹介する。