日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS21] 全球海洋観測システムの現状・成果と将来:ニーズへの適合と発展

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (10) (Ch.10)

コンビーナ:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、コンビーナ:増田 周平(海洋研究開発機構)、藤井 陽介(気象庁気象研究所)、コンビーナ:藤木 徹一(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、座長:細田 滋毅(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[AOS21-P02] 全球海洋観測網の多様なデータの統合的解析へ向けた取り組み~4次元データ同化システムを利用して~

*纐纈 慎也1長船 哲史1、土居 知将1、杉浦 望実1、赤澤 文彦1、服部 美紀1、邉見 忠1増田 周平1 (1.海洋研究開発機構)

海洋開発研究機構海洋観測研究センターデータ統合研究グループでは、主にデータ同化システムを用いて全球的観測と整合的な海洋循環変動の再現を通じた研究を行っています。本研究グループは、高密度な観測を活かした微細な現象の現実的再現を目指すシステムと異なり、特に広域の分布再現、長期変動再現を対象としていて、大規模な海洋循環持つ時間スケールの長さと全球観測網を有効に結びつけることが企図されています。このシステムで推定された物理場をもとに物質分布の再現にも取り組んでいます。これらの取り組みの中で、全球自動観測網と未だ空間的に疎らな溶存物質観測を結びつけ、観測の難しかった期間を含む長期変動や観測が難しい場所での推定につなげる試みも行っています。本発表では、その取り組みのうち最近の状況を紹介します。
例えば、海洋深層の変動の空間パターンのより詳細な再現のため、海底からの地熱の効果、海底付近の乱流混合の空間分布を導入する実験を行いました。その結果、同システムで以前には再現されていなかった観測にみられる海洋深層昇温空間的特徴をより詳細に表すことができるようになりました。これは、データ同化システムを改善することで観測を適切に表現・解釈する一歩につながっています。また、観測でとらえられていたパターンが物理的メカニズムと一体となって解釈されうることを示している点で重要でした。今後、深層観測にも自動観測が広がることでより高度な情報を得る基礎となることを期待しています。
物質循環についてもデータ同化手法による再現を行っています。その一つに海洋内部の溶存鉄分布の再現があります。溶存鉄の観測は限られていますが、その空間的特徴とモデルの中での起源とを結び付けて3次元的な分布の再現を目指しています。この再現に利用するのはより高密度な自動水温・塩分観測網と整合的な物理的循環であるため、間接的に物質分布観測とより高密度な自動観測を統合し、まばらな観測をうまく利用して広大な海洋全体の推定に結び付けられることを現しており、海洋内部のさまざまな物質観測の有用性を目に見える形にする点で有効であると考えています。また、物質分布観測については、溶存酸素など自動観測網に取り入れられていて、深層水温変動の時のように、今後、より詳細な仕組みと全球観測によってあらわされた広域の変動パターンを結び付けることができることが期待されています。このため、我々のグループでも自動観測網の溶存酸素データを利用した物質循環に関するデータ同化の取り組みも行っていて、実際にデータ同化を通して溶存酸素循環にかかわるモデル内のパラメータの調整とそれによるモデル表現力の向上を確認しています。
この他に、データ同化システムのより高度な改善のための数理的手法の検討や、自動観測網による観測から比較的直接的に得られた結果など、全球海洋観測網をより有効に利用すべく行っている取り組みを紹介します。