日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、コンビーナ:池田 昌之(東京大学)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

11:00 〜 13:00

[HCG25-P01] 浚渫土投棄による深海底の堆積の特徴 − 相模湾三崎沖の例

*芦 寿一郎1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所)

キーワード:浚渫土投棄、サイドスキャンソナー、相模湾

相模湾三崎沖の水深700 m付近のサイドスキャンソナー海底音響画像において直径150 m前後の斑点状の構造が7 km四方にわたって多数発見され,海底下からの噴出や地すべりによる構造と推定された.しかし,その後の調査および聞き取りの結果,浚渫土投棄によって出来た人工的な堆積物であることが分かった. 三崎沖の小海盆においてサイドスキャンソナーIZANAGI(11, 12 kHz)を用いて得られた海底音響画像には直径100〜300 mの強い後方散乱を示す構造が150個以上確認された.相模湾東部はプレート沈み込み帯の上盤に位置し,海底音響画像がガス噴出跡のポックマークに類似していることからガスや堆積物の噴出による構造であると推定された(徳山,2002,海洋と生物).「かいよう」KY04-11航海における無人探査機NSSを用いた海底観察では,強後方散乱の原因は泥質の平坦な海底面上の礫の密集によるものであることが分かった.礫の密集点で採取した柱状試料は主に泥からなり,層序的な不連続はなく礫の集中の原因は特定できなかった(芦ほか,2005,月刊地球).「なつしま」NT05-19航海では,ハイパードルフィンを用いて海底観察と礫の採取を行なった.礫は後期中新世の暗灰色のシルト岩,および砂泥のマトリックス中に火山砕屑物の細礫を含む礫岩で,円摩度が低く平面で囲まれた形状を示した.礫の集中域には段差や裂罅などの変形は認められず周囲の通常の海底と同じであり,海底下からの堆積物噴出では説明のつかない構造であることが分かった.海底面のみに分布する礫は最近の地すべりを示唆するが,流痕が全く見られないことより人為的なものである可能性が高まった.そこで横須賀土木事務所への聞き取り調査を行なったところ三浦漁港の浚渫土の沖捨て位置とほぼ一致する結果を得た.陸から10 km以上の沖であること,7 km四方に渡る大規模な分布であることから人為的なものを当初想定しなかったが,海底音響画像の解釈には深海底においても人工物に注意を払う必要がある.