日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 人間環境と災害リスク

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (14) (Ch.14)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、コンビーナ:中埜 貴元(国土交通省国土地理院)、座長:佐藤 浩(日本大学文理学部)、中埜 貴元(国土交通省国土地理院)

11:00 〜 13:00

[HDS09-P01] SARデータの防災利用について

*中村 貴子1松島 潤1六川 修一2 (1.東京大学、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:Sentinel-1A/1B、ALOS-2/PALSAR-2、防災、土砂災害

本研究はSARデータを用いた主に土砂災害に関する防災・減災の可能性を考察するものである。Sentinel-1A/1B画像とALOS-2/PALSAR-2画像を用いた土砂災害地域の発災前後の解析結果などを紹介する。テスト用に選定した解析地域は2021年7月3日に土石流が発生した静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川周辺地域や平成30年北海道胆振東部地震により被災した北海道厚真町などを中心に、過去に土砂災害が発生した場所で、その発生前後の時期に取得された衛星画像データを用いて行った。解析地域に関しては、上記のほか、台風19号の被災地である宮城県、関東北部地域、長野県、愛知県、広島県南西部、岡山県南部、愛媛県、佐賀県などの中から選定した。これらの地域は、近年、地震や台風による豪雨などが引き金となって土砂災害が発生または河川の決壊や砂防ダムの放水などで洪水に見舞われた地域である。これらの中から土砂災害の原因やタイプなどにも着目・分類した様々な解析例を紹介する。使用データはALOS-2/PALSAR-2(レベル1.1,偏波:HH,入射角:34.3°)とSentinel-1A/1B(VV:水平偏波とVH:クロス偏波)を用いた。解析結果からは、崩壊跡だけでなく、未崩壊の地点でも強い変位が見られることがあり、これらが崩壊の予測地点となる可能性が高いと思われる。また、Sentinel-1A/1BのVHクロス偏波画像からは水害の分布区域がかなり正確に抽出され、ハザードマップとの対比でもよい一致を示していることが分かっており、これらの画像データは土石流などの水分を多く含んだ土砂の流出域の抽出にも大変有効と思われる。これらは画像解析の初期段階で生成される強度画像であり複雑な解析の必要がなくまた単独の画像から作成できるためタイミングよく撮影された画像が入手できれば早急な現況把握に役立つ可能性が高いと思われる。SARデータの解析を用いたモニタリングを実運用するためには、対象地域の地質や地形、起こりうる地質現象や気象現象の特徴を十分考慮し、平時から対象地域に関するベースとなる情報を蓄積整備し、またそれらの地域的特性に合った解析パラメータを決定することが重要であると思われる。