日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 地理情報システムと地図・空間表現

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

11:00 〜 13:00

[HTT21-P02] 航空レーザー測量の水深取得可能海域とその季節変化の可視化
 ~衛星画像から得られる海水の光学特性情報の活用~

*小川 遥1、山野 寛之1、住吉 昌直1 (1.海上保安庁海洋情報部)

キーワード:拡散消散係数、航空レーザー測量、可視化

航空レーザー測量は近赤外線による陸域測量が一般的に知られているが、グリーンレーザ光を使用した水域の測量にも利用されている。この発表における「航空レーザー測量」とはグリーンレーザ光を使用し、水路測量において沿岸域の地形を、海図基準を高さの基準として陸上から海底までシームレスに測量する技術を指す。一般に、多くの水路測量はマルチビーム測深機を使用して行われるが、浅海域ではスワス幅がせまくなるため測量効率が低下し、測量船の座礁の危険も伴う。一方、航空レーザー測量は上空から測量することにより、広範囲の浅海域の測量を迅速に行うことができる。そのため、航空レーザー測量は海底地形図作成や海岸保全情報収集等に幅広く活用されている。また、航空レーザー測量の測深限界水深は海水の光学特性を表す透明度や拡散消散係数(Kd:Diffused Attenuation Coefficient)で表すことができる。
 海洋情報部では、水路測量技術の一つとして航空レーザー測量を2003年から導入し、運用を行ってきた。この手法は一般的な水路測量に比べ、浅海域でも安全に広範囲を短時間で効率的に測量ができる一方、水質や気象、海象だけでなく航空障害物、飛行制限空域などの航空交通条件の制約など勘案すべき事項が多い。そのため事前調整や計画立案に時間を要する。
 本発表では航空レーザー測量の運用計画策定の負担を軽減するために行った、衛星画像から取得した海水のKdを使用して、日本周辺における航空レーザー測量による水深取得可能海域とその海域の季節変動の可視化について、その方法と結果を発表する。
 まず、衛星画像から取得可能な490nmの波長帯のKd(Kd490)をグリーンレーザ光の波長帯532nmのKd(Kd532)に変換した。次に航空レーザー測深システムのスペックシ-トに記載されているKd532とシステムの固有値を使用した測深限界水深を求める式を使用し、測深限界水深(Dmax(1))を算出した。そして、日本周辺の500 m水深データ(J-EGG500: JODC-Expert Grid data for Geography)を海底地形とみなし、J-EGG500のメッシュ水深値よりもDmax(1)が大きかった場合に、航空レーザー測量が実施可能であると判定することとし、この時の測深限界水深をDmax(2)とした。これらの作業をKdの統計平均値と季節平均値(春、夏、秋、冬)の5パターン分実施した。
 結果は、航空レーザー測量に好適な季節が海域によって違うだけでなく、同じ海域や地点であっても季節によって取得可能な最大水深が異なることが明らかになった。今後の検証は必要であるものの、求められた測深限界水深は運用計画策定の検討のための指標として有用であることがわかった。結果の詳細は発表にて説明する。