16:30 〜 16:45
[MIS11-05] 英語圏におけるジオツーリズムの研究ー日本におけるジオツーリストの今後を考える
キーワード:観光、観光客、観光地経営、ジオパーク、ジオトラベラー傾向度、モニタリング
2022年2月現在、その数46と、もはや都道府県数に近づくほどのジオパークが日本には存在する。そして、日本にジオパークが誕生した2008年からその活動には多くの人々がたずさわってきた。その中には観光にたずさわる事業者や研究者も含まれるが、観光研究界ではこの14年間、ジオパークにおける観光、より広い枠組みでいえばジオツーリズムに対し、どのような知見がもたらされたのであろうか。本発表では、ジオツーリズムに関する研究について特に英語圏での議論を探り、特にジオツーリストやジオトラベラー(以下ジオツーリストとする)と呼ばれる観光者に対する知見を紹介する。そして、ウェブアンケートの結果を基に、日本における潜在的ジオツーリストの存在について考察する。
2018年までのジオツーリズム研究の研究動向について整理したOlafsdottir and Tverijonaite(2018)によれば、英語圏において発行されたジオツーリズムの論文は、広く観光研究のテーマが掲載される観光系学術雑誌での掲載ではなく、その多くはジオツーリズムに特化した学術雑誌における掲載だということがわかる。つまり、英語圏におけるジオツーリズム研究は、観光研究界においてもかなり内輪的な存在であると指摘できる。また、ツーリストに焦点を当てた研究が全体の6.3%と大変少ないことも指摘されている。
たとえばジオツーリズムに関する専門書においても観光者、すなわちジオツーリストに特化した章は皆無である。観光を研究対象としているにも関わらず、観光者に関する研究の蓄積が少ないのは大きな研究課題であろう。果たしてジオツーリストとはどのような観光者なのか、近年、日本の観光地経営に求められているマーケティング的思考を補佐するためにも、彼らの属性、動機、行動などを理解することができなければ、ジオパークという商品を的確に売ることすらできないであろう。
勿論、少ないながらもジオツーリストに言及する研究は英語圏でも複数ある。そこで、それらの既存研究からジオツーリスト像を探ってみたい。まず、そもそもジオツーリストとは一体誰なのであろうか。ジオパークやジオサイトに訪問した人全てをジオツーリストとみなすのであろうか。実は、既存の研究においても、ある特定のジオパークやジオサイトへ訪れた観光者へ調査を行い、その分析結果をジオツーリストの研究として発表しているものがほとんどである。つまり、最も簡素にジオツーリストを定義するのであれば「ジオパークやジオサイトを訪れた観光者」とみなすしかない。
しかし、既存研究のいくつかは、彼等をそれぞれの指標を用いてより詳細に分析や分類をしており、その濃淡をみれば本来のジオツーリスト像が浮かび上がる。たとえば、旅行動機面でいえば、ジオツーリストには「学びLearning」や「新規性の探索Novelty Seeking」、「楽しみEnjoyment」や「逃避Escape」、「社会的相互作用Social Interaction」を求めて訪問する人々が多いといわれている。そして、彼等は一般客とは異なり、現地における訪問先は一般客とは異なり、観光インフラの少ない箇所を好むという。加えて、ジオサイトの保護への意識が強いという調査結果もある。それは個々のジオサイトにおけるインタープリテーションの結果としても複数の研究で報告されている。また、ジオツーリストは認定ツアーに高いお金を払う傾向があるという。また、ジオトラベラー傾向度(GTS)の高いツーリストほど、現地での消費額も高いという研究もある。なお、属性でいえば、ジオツーリストには高学歴、高収入の人々が多いというのが今日の共通理解となっている。
総じて、ジオツーリストを真に理解するためには、これらの指標をしっかりと認識する必要がある。とある観光地への訪問者、すなわち観光者をどのような指標で分類、セグメント化し、その特性をつかむのか。そして、その結果を今後の観光地経営の戦略に活かすのか。これはDMOや観光地経営そのものに求められることであるが、ジオパークでいえば、ジオパークならではの観光者、すなわちジオツーリストを理解する指標とは何なのであろうか。このことについての議論がより今後のジオパークにおける観光やジオツーリズム研究で求められるであろうし、現場においては、それぞれのジオパークが地域の状況に合わせて的確な指標を設定し、定期的にモニタリングしていく必要があるといえる。そこで、大会時には、その議論の材料としてウェブアンケートの結果の一部を発表する予定である。
Olafsdottir, R. and Tverijonaite, E. 2018. Geotourism: A Systematic Literature Review. Geoscience 8(234): 1-16.
2018年までのジオツーリズム研究の研究動向について整理したOlafsdottir and Tverijonaite(2018)によれば、英語圏において発行されたジオツーリズムの論文は、広く観光研究のテーマが掲載される観光系学術雑誌での掲載ではなく、その多くはジオツーリズムに特化した学術雑誌における掲載だということがわかる。つまり、英語圏におけるジオツーリズム研究は、観光研究界においてもかなり内輪的な存在であると指摘できる。また、ツーリストに焦点を当てた研究が全体の6.3%と大変少ないことも指摘されている。
たとえばジオツーリズムに関する専門書においても観光者、すなわちジオツーリストに特化した章は皆無である。観光を研究対象としているにも関わらず、観光者に関する研究の蓄積が少ないのは大きな研究課題であろう。果たしてジオツーリストとはどのような観光者なのか、近年、日本の観光地経営に求められているマーケティング的思考を補佐するためにも、彼らの属性、動機、行動などを理解することができなければ、ジオパークという商品を的確に売ることすらできないであろう。
勿論、少ないながらもジオツーリストに言及する研究は英語圏でも複数ある。そこで、それらの既存研究からジオツーリスト像を探ってみたい。まず、そもそもジオツーリストとは一体誰なのであろうか。ジオパークやジオサイトに訪問した人全てをジオツーリストとみなすのであろうか。実は、既存の研究においても、ある特定のジオパークやジオサイトへ訪れた観光者へ調査を行い、その分析結果をジオツーリストの研究として発表しているものがほとんどである。つまり、最も簡素にジオツーリストを定義するのであれば「ジオパークやジオサイトを訪れた観光者」とみなすしかない。
しかし、既存研究のいくつかは、彼等をそれぞれの指標を用いてより詳細に分析や分類をしており、その濃淡をみれば本来のジオツーリスト像が浮かび上がる。たとえば、旅行動機面でいえば、ジオツーリストには「学びLearning」や「新規性の探索Novelty Seeking」、「楽しみEnjoyment」や「逃避Escape」、「社会的相互作用Social Interaction」を求めて訪問する人々が多いといわれている。そして、彼等は一般客とは異なり、現地における訪問先は一般客とは異なり、観光インフラの少ない箇所を好むという。加えて、ジオサイトの保護への意識が強いという調査結果もある。それは個々のジオサイトにおけるインタープリテーションの結果としても複数の研究で報告されている。また、ジオツーリストは認定ツアーに高いお金を払う傾向があるという。また、ジオトラベラー傾向度(GTS)の高いツーリストほど、現地での消費額も高いという研究もある。なお、属性でいえば、ジオツーリストには高学歴、高収入の人々が多いというのが今日の共通理解となっている。
総じて、ジオツーリストを真に理解するためには、これらの指標をしっかりと認識する必要がある。とある観光地への訪問者、すなわち観光者をどのような指標で分類、セグメント化し、その特性をつかむのか。そして、その結果を今後の観光地経営の戦略に活かすのか。これはDMOや観光地経営そのものに求められることであるが、ジオパークでいえば、ジオパークならではの観光者、すなわちジオツーリストを理解する指標とは何なのであろうか。このことについての議論がより今後のジオパークにおける観光やジオツーリズム研究で求められるであろうし、現場においては、それぞれのジオパークが地域の状況に合わせて的確な指標を設定し、定期的にモニタリングしていく必要があるといえる。そこで、大会時には、その議論の材料としてウェブアンケートの結果の一部を発表する予定である。
Olafsdottir, R. and Tverijonaite, E. 2018. Geotourism: A Systematic Literature Review. Geoscience 8(234): 1-16.