16:00 〜 16:15
[MIS16-02] 雪を含む火山泥流における凝集体の形成条件と力学特性
キーワード:火山泥流、混合実験、圧縮試験
積雪や氷河で覆われた冠雪活火山では,火山噴火や豪雨によって雪と氷が解かされ,多量の融雪水を伴う融雪型火山泥流が発生する.多様種類を有する火山泥流の観測は世界各地で取り組まれており,その運動メカニズムの解明は室内実験や数値モデルにより進められている.火山泥流に関する先行研究の多くは火山砕屑物(テフラ)と水の二相流に着目しているが,融雪型火山泥流の堆積物に多量の雪氷を含む事例が近年の野外調査で報告されている[1, 2].つまり,融雪型火山泥流はテフラと水に加えて雪も含んでいると考えられ,その運動メカニズムの解明にテフラ・水・雪の三相流の実験と数値モデリングが必要となる.テフラ・水・雪の混合物を水路に流す先駆的な実験では,テフラ・水・雪から成る凝集体が泥流中に形成され,凝集体の存在により泥流の流動性の低下が確認されている[3].しかしながら,今のところ融雪型火山泥流の観測で,凝集体の証拠は見つかっていない.そこで,テフラ・水・雪の三相流において凝集体の形成条件と力学特性を解明するため,我々は回転台での試料の混合実験および万能試験機による凝集体の圧縮試験を0℃の低温室で実施した[4].
混合実験では,分級したテフラと雪,水を一定の総体積で円筒容器に封入し,一定の角速度で円筒容器を回転させた.回転後,試料を篩に取り出し,凝集体の有無を確認した.凝集体が形成された場合,凝集体の個数と質量,大きさ(長さ,幅,高さ)を計測し,凝集体を乾燥させることでテフラの質量分率を算出した.圧縮試験では,凝集体の圧縮力と変位を計測し,楕円体近似した凝集体の断面積と高さから応力とひずみの関係を得た.そして,応力の変化率を近似式でフィッティングすることで,凝集体の力学パラメータを推定した.
混合実験および圧縮試験の結果は次のとおりである:(i) 凝集体は急速に成長し,混合時間5分で最大質量に達した;(ii) 凝集体の質量は泥流中の雪濃度の上昇とともに増加し,その関係は線形であった;(iii) 単体の凝集体は低いまたは高いテフラ濃度で形成されたが,複数の凝集体は中間のテフラ濃度で観察された;(iv) 凝集体の圧力における力学挙動は実験的表式(非線形モデル)で記述可能であった.さらに,実際の融雪型火山泥流で凝集体が形成・維持されるか議論するため,実験結果と雪を含む火山泥流の観測データを用いてスケーリング解析を行った.解析では,粒子レイノルズ数により泥流中で形成される凝集体の直径を推定し,凝集体強度を泥流の動圧で割った無次元数で凝集体の維持または崩壊を評価した.その結果,大規模な融雪型火山泥流で凝集体の形成および維持は不可能であると考えられ,実際の流れは泥流中に雪が分散した懸濁液であると示唆された.
[1] Cronin SJ, Neall VE, Lecointre HA, Palmer AS (1996) Unusual ``snow slurry'' lahars from Ruapehu volcano, New Zealand, September 1995. Geology 24:1107–1110.
[2] Lube G, Cronin SJ, Procter JN (2009) Explaining the extreme mobility of volcanic ice-slurry flows, Ruapehu volcano, New Zealand. Geology 37:15–18.
[3] Okita R, Kawashima K. Matsumoto T, Kataoka KS, Watabe S (2018) Influence of snow on the fluidity of lahars triggered by snowmelt. In: Proceedings of cold region technology conference 34:I-007 (in Japanese).
[4] Niiya H, Oda K, Tsuji D, Katsuragi H (2020) Formation conditions and mechanical properties of aggregates produced in tephra-water-snow flows. Earth, Planets and Space 72:148.
混合実験では,分級したテフラと雪,水を一定の総体積で円筒容器に封入し,一定の角速度で円筒容器を回転させた.回転後,試料を篩に取り出し,凝集体の有無を確認した.凝集体が形成された場合,凝集体の個数と質量,大きさ(長さ,幅,高さ)を計測し,凝集体を乾燥させることでテフラの質量分率を算出した.圧縮試験では,凝集体の圧縮力と変位を計測し,楕円体近似した凝集体の断面積と高さから応力とひずみの関係を得た.そして,応力の変化率を近似式でフィッティングすることで,凝集体の力学パラメータを推定した.
混合実験および圧縮試験の結果は次のとおりである:(i) 凝集体は急速に成長し,混合時間5分で最大質量に達した;(ii) 凝集体の質量は泥流中の雪濃度の上昇とともに増加し,その関係は線形であった;(iii) 単体の凝集体は低いまたは高いテフラ濃度で形成されたが,複数の凝集体は中間のテフラ濃度で観察された;(iv) 凝集体の圧力における力学挙動は実験的表式(非線形モデル)で記述可能であった.さらに,実際の融雪型火山泥流で凝集体が形成・維持されるか議論するため,実験結果と雪を含む火山泥流の観測データを用いてスケーリング解析を行った.解析では,粒子レイノルズ数により泥流中で形成される凝集体の直径を推定し,凝集体強度を泥流の動圧で割った無次元数で凝集体の維持または崩壊を評価した.その結果,大規模な融雪型火山泥流で凝集体の形成および維持は不可能であると考えられ,実際の流れは泥流中に雪が分散した懸濁液であると示唆された.
[1] Cronin SJ, Neall VE, Lecointre HA, Palmer AS (1996) Unusual ``snow slurry'' lahars from Ruapehu volcano, New Zealand, September 1995. Geology 24:1107–1110.
[2] Lube G, Cronin SJ, Procter JN (2009) Explaining the extreme mobility of volcanic ice-slurry flows, Ruapehu volcano, New Zealand. Geology 37:15–18.
[3] Okita R, Kawashima K. Matsumoto T, Kataoka KS, Watabe S (2018) Influence of snow on the fluidity of lahars triggered by snowmelt. In: Proceedings of cold region technology conference 34:I-007 (in Japanese).
[4] Niiya H, Oda K, Tsuji D, Katsuragi H (2020) Formation conditions and mechanical properties of aggregates produced in tephra-water-snow flows. Earth, Planets and Space 72:148.