日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 地球表層における粒子重力流のダイナミクス

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 203 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:酒井 佑一(京都大学大学院理学研究科)、志水 宏行(防災科学技術研究所)、コンビーナ:田邊 章洋(防災科学技術研究所)、座長:酒井 佑一(宇都宮大学農学部)、志水 宏行(防災科学技術研究所)、田邊 章洋(防災科学技術研究所)

16:30 〜 16:45

[MIS16-04] サイクリックステップを形成する混濁流の特性と粒度分布についての実験的研究

*横川 美和1、永野 蓮1、松波 和真1、福岡 篤生1 (1.大阪工業大学情報科学部)

キーワード:サイクリックステップ、混濁流、粒度分析

混濁流によって,デルタ斜面や海底谷近辺にセディメントウェーブが形成されることが知られている.例えば,富山深海長谷でも,そこを流れる混濁流の溢れ出しによって自然堤防上にセディメントウェーブが形成されている(Nakajima & Satoh, 2001).このセディメントウェーブを構成するタービダイトを流れ方向に追跡してその最粗部の粒度を比較すると,場所によって上流側斜面の粒度が下流側斜面に比べて粗い場合もあれば,逆の傾向になることもある.また,サージ的混濁流によってサイクリックステップを形成する実験(Fujita et al., 2019)でも,条件により上流側と下流側の粒度の大小が変わった.この実験では,上流側が粗いときは水路全体で下流細粒化が見られ,下流側が粗い時には水路全体で下流粗粒化が見られた.混濁流によるサイクリックステップの形成過程や,その粒度分布については,実験例が少なく,詳細はわかっていないことが多い.そこで本研究では,実験水路でサージ的混濁流によってサイクリックステップを形成し,その粒度分布と混濁流の特徴を詳細に調べた.
 本実験では,長さ760cm,幅30cm,高さ120cmの水槽の中に,長さ700cm,幅8cm,高さ50cmの水路を勾配7°で設置した.また,サイクリップステップが形成されやすいようにアクリル板で上流端に傾斜7°の斜面(長さ180cm)を設置した.塩水(密度1.16g/cm3)と2種類のプラスチック粒子を重量比20:1:1の割合で自動攪拌機を用いて混ぜ合わせてヘッドタンクから供給し,混濁流を発生させた.プラスチック粒子の粒度範囲は,粒径75-150µmと180-325µmである. 1回のサージは3sで,流量約17.7Lを141回流した.その結果,2つのステップが形成された.ステップの波形勾配は0.06であった.
 今回の実験条件は流量が大きかったためか,ボディーでも数カ所で周囲水の巻き込みが観察された.ヘッドの移動速度は,上流端から400-500cm地点で最大約45cm/sに達していた.PIV計測の結果,ヘッドの先端部分の平均流速は約50cm/sとなった.さらに,上流端から400cm,590cm地点で混濁流中の浮遊砂の濃度と粒度を調べた.その結果,400cm,590cm地点ともに底面付近(底面からの高さ0.5cm)の浮遊砂の体積濃度は約4%で,ボディーよりヘッドの方が濃度が高いことがわかった.ボディー,ヘッドともに590cm地点より400cm地点の方が濃度が高い.粒度はヘッドの底面付近は400cm, 590cm地点ともに約230μ程度,ボディーは400cm地点付近でおよそ180μm,5910cm付近でおよそ160μmであった.
 141回流した後の堆積物表面では中央粒径は下流側に向かうほど大きくなる傾向が見られた.浮遊砂の中央粒径と比較すると,400cm付近ではボディーの浮遊砂の中央粒径と堆積物表面の中央粒径が近く,560cm付近ではヘッドの浮遊砂の中央粒径と堆積物表面の中央粒径が近かった.ステップ内部については,上流端距離365cm,388cm,433cm,467cmの地点でステップの底面から表面の間でサンプリングを行った.その結果,底面からの高さ0-1cmの部分では中央粒径は下流側に向かうほど大きくなる傾向が見られた.底面と底面より高い位置とでは,中央粒径に大きな差があり,高い位置の中央粒径の方が大きい傾向があった.しかし,高くなるほど,中央粒径も大きくなるわけではなく,高さ60mm-100mm程度の中間層が最も中央粒径が大きく,それよりも高い位置になると,また徐々に中央粒径が小さくなっていることがわかった.これはステップが徐々に上流側に移動した結果,ステップ表面での流れ方向の粒度分布の変化が反映されていると考えられる.
Fujita, K. et al., 2019, Abstract of Annual meeting of the Geological Society of Japan.
Nakajima, T., and Satoh, M., 2001, Sedimentology, 48, 435-463