日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 水惑星学

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (34) (Ch.34)

コンビーナ:関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、コンビーナ:渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、座長:玄田 英典(東京工業大学 地球生命研究所)、渋谷 岳造(海洋研究開発機構)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、関根 康人(東京工業大学地球生命研究所)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)

11:00 〜 13:00

[MIS17-P02] 地球上の様々な球状炭酸塩コンクリーションの成因究明:火星生命探査に向けて

*渡辺 隼生1長谷川 精1池原 実3、浅井 沙紀2隈 隆成2、吉田 英一2 (1.高知大学 理工学部、2.名古屋大学、3.高知大学海洋コア総合研究センター)


キーワード:コンクリーション、成因、火星

コンクリーションとは,地層中の砕屑粒子の隙間が炭酸塩鉱物で充填され,非常に硬くなった塊のことである。コンクリーションを構成する炭酸塩鉱物は方解石(カルサイト: CaCO3)や苦灰石(ドロマイト: Ca,Mg(CO3)2),菱鉄鉱(シデライト: FeCO3)など様々であり,その多くは球状を呈しており,数cm大から数mの巨大なものなど様々なサイズを持つ。とくに海成層中から産出する球状コンクリーションの内部には,体化石や生痕化石を含むものがあり,生物遺骸から炭素を得て形成されたことが示されている(Yoshida et al., 2015, 2018a)。また,明確な化石を含まず,埋没続成過程(Loyd et al., 2014; Muramiya et al., 2020)やメタン湧水起源(Maeyama et al., 2020)で巨大コンクリーションに成長するものもある。一方,乾燥環境下の風成砂岩の中には地下水の蒸発による濃集で形成される無機起源のもの(数cm大)も存在する(Hasegawa et al., 2009)。また,火星にも類似の球状物体が地層中に含まれることが探査機オポチュニティやキュリオシティによって確認されており,炭酸塩コンクリーションを先駆物質とすることが示唆されている(Yoshida et al., 2018b)。火星に見られるものも「ブルーベリー」と呼ばれる数mm大の小さなもの(Chan et al., 2004)や,ゲールクレーターで見つかっている十数cm大の大きなもの(Wiens et al., 2017)など,多様なサイズを持つ。しかし,火星の球状コンクリーションの成因について,地球上のものと比較した検証がなされていない。そこで本研究では,火星の球状物体の成因究明に向けて,地球の地層中に見られる様々な球状炭酸塩コンクリーションを形状や化学的特徴に基づいてタイプ分けを試みた。
本研究では,(1)北海道羽幌町の上部白亜系蝦夷層群,(2)愛知県知多半島の下部中新統師崎層群,(3)高知県土佐清水市の中新統三崎層群竜串層,(4)富山県八尾町の中期中新統八尾層群(5)米国ユタ州の下部ジュラ系ナバホ砂岩,(6)モンゴル南部の上部白亜系ジャドフタ層,などの様々な地域や地質時代,堆積環境の地層中に含まれる多様なコンクリーション試料を研究対象とする。採取した試料の切断・研磨し,反射蛍光顕微鏡による観察とX線分析顕微鏡(Horiba XGT-5000)を用いた元素マッピング分析を行った。そして内部構造や元素分布の特徴に基づき,次の3つのタイプに区分した。Type1は体化石の核を持ち,リンが体化石周辺やコンクリーション縁辺部に濃集する特徴が見られた。Type2は明確な体化石は含まないものの生痕化石や糞化石が核となり,黄鉄鉱が濃集する特徴が見られた。Type3は明確な核を持たず,生物の影響でできたのか不明なものである。Type 1と2は濃集元素の違いから,埋没後の酸化還元環境の違いを反映している可能性がある。今後は炭素・酸素同位体比分析を行うことにより,Type分けしたコンクリーションごとの特徴の違いを調べ,成因について考察を行う。