11:00 〜 13:00
[MIS18-P03] 南西諸島の樹木年輪セルロース酸素同位体比データと太平洋気候因子の関係
キーワード:樹木年輪、酸素同位体比、大気海洋相互作用、南西諸島、リュウキュウマツ
樹木年輪セルロース同位体比測定による古気候の研究は、石筍、珊瑚、氷床コアと同様に有効なプロキシである。特に樹木年輪に含まれている酸素同位体比は相対湿度との相関を強く反映していることがわかっている。
近年では大気海洋との相互作用を含めた気候因子の検討が活発に行われている。大気・海洋相互作用の検討に用いる気候因子としてはENSO(El Nino-Southern Oscillation)、PDO(Pacific Decadal Oscillation)、NPGO(North Pacific Gyre Oscillation)等があり、これらの変動は独立したものではなく互いに影響を及ぼしながら変化していることが明らかになっている。
本研究では、樹木年輪セルロース酸素同位体比を測定し、気候因子と比較することで海洋の変化と気象の結びつきについて検討を行う。本研究の特徴として1年輪を分割することで、季節ごとの事象について検討できることがある。
実験方法として、鹿児島県奄美市名瀬朝仁新町の千年松公園に生育していたリュウキュウマツ(以下千年松とする)と,鹿児島県奄美市名瀬浦上町の有盛神社に生育していたリュウキュウマツ2個体(以下サンテラ松,ウンテラ松とする)を用いた.円盤標本から採取したサンプルをダイヤモンドホイールソーを用いて厚さ2mm程度の薄板に切り出しセルロースを抽出した.作成したセルロース板を双眼実体顕微鏡と眼科用ナイフを用いて1年輪を成長方向に12分割した.幅が広い場合は24分割,狭い場合は6分割または2分割の場合がある.同位体測定には名古屋大学環境学研究科に設置された熱分解元素分析計と同位体比質量分析計のオンラインシステム(TCEA-Delta V Advantage)を用いた.
これらの実験から年輪の年層内分割を行った1788年から2014年までの酸素同位体比測定データを示す。
気象庁からダウンロードしたSST(沖縄の東・東シナ海南部)との比較により夏季平均海面水温との正相関(r=0.36, N=45)が得られた。これは平年より高い(低い)SSTの場合、水蒸気供給量が増加(減少)し、平年より湿度の増加(低下)が起こることが要因であると考えられ、樹木から得られたデータが海洋変動を反映している可能性を示唆するデータを得ることができた。
また大気海洋相互作用因子NPGOデータを用いて、酸素同位体比と比較した結果、NPGOと酸素同位体比(lag+4年)の夏季に対応すると考えられる期間で(r=0.58, N=21)が得られた。黒潮や気圧により変動が伝播し、南西諸島周辺の夏季の気候へ影響を及ぼすと考えられるが、正確なメカニズムに関しては検討が必要である。
近年では大気海洋との相互作用を含めた気候因子の検討が活発に行われている。大気・海洋相互作用の検討に用いる気候因子としてはENSO(El Nino-Southern Oscillation)、PDO(Pacific Decadal Oscillation)、NPGO(North Pacific Gyre Oscillation)等があり、これらの変動は独立したものではなく互いに影響を及ぼしながら変化していることが明らかになっている。
本研究では、樹木年輪セルロース酸素同位体比を測定し、気候因子と比較することで海洋の変化と気象の結びつきについて検討を行う。本研究の特徴として1年輪を分割することで、季節ごとの事象について検討できることがある。
実験方法として、鹿児島県奄美市名瀬朝仁新町の千年松公園に生育していたリュウキュウマツ(以下千年松とする)と,鹿児島県奄美市名瀬浦上町の有盛神社に生育していたリュウキュウマツ2個体(以下サンテラ松,ウンテラ松とする)を用いた.円盤標本から採取したサンプルをダイヤモンドホイールソーを用いて厚さ2mm程度の薄板に切り出しセルロースを抽出した.作成したセルロース板を双眼実体顕微鏡と眼科用ナイフを用いて1年輪を成長方向に12分割した.幅が広い場合は24分割,狭い場合は6分割または2分割の場合がある.同位体測定には名古屋大学環境学研究科に設置された熱分解元素分析計と同位体比質量分析計のオンラインシステム(TCEA-Delta V Advantage)を用いた.
これらの実験から年輪の年層内分割を行った1788年から2014年までの酸素同位体比測定データを示す。
気象庁からダウンロードしたSST(沖縄の東・東シナ海南部)との比較により夏季平均海面水温との正相関(r=0.36, N=45)が得られた。これは平年より高い(低い)SSTの場合、水蒸気供給量が増加(減少)し、平年より湿度の増加(低下)が起こることが要因であると考えられ、樹木から得られたデータが海洋変動を反映している可能性を示唆するデータを得ることができた。
また大気海洋相互作用因子NPGOデータを用いて、酸素同位体比と比較した結果、NPGOと酸素同位体比(lag+4年)の夏季に対応すると考えられる期間で(r=0.58, N=21)が得られた。黒潮や気圧により変動が伝播し、南西諸島周辺の夏季の気候へ影響を及ぼすと考えられるが、正確なメカニズムに関しては検討が必要である。