日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)

11:00 〜 13:00

[MIS18-P14] 更新世初期(MIS 93–91)の北大西洋高緯度域の氷山イベント

*李 さらん1桑原 義博1大野 正夫1、林 辰弥1 (1.九州大学)


約2.7Maの北半球大陸氷床の増大に伴って、現在まで続く氷期-間氷期サイクルが始まった(Shackleton et al.1984)。氷期-間氷期サイクルは、地球の軌道要素に関係した北半球の日射量の変動(ミランコビッチサイクル)によって引き起こされる数万年周期の気候変動である(Hays et al.1976)。しかし、最終氷期には、数十年の間に気温が10℃以上も変化する急激な気候変動(ダンスガード・オシュガーサイクル)が起こり(Dansgaard et al. 1993)、深刻な寒冷化の原因となる大陸氷床の崩壊(ハインリッヒイベント)も起きていた(Heinrich, 1988)。ダンスガード・オシュガーサイクルの原因は海洋の熱塩循環の変化に求められている(Broecker, 1994)。このように、最終氷期にはミランコビッチサイクルでは説明のつかない急激な気候変動が起きていたことがよく知られている一方で、氷期-間氷期サイクルが始まった更新世の初期においてはミランコビッチサイクルよりも短い気候変動の存在はよく分かっていない。
そこで本研究では、更新世初期における環北大西洋地域の大陸氷床の成長と崩壊を詳細に調べるために、高緯度北大西洋のガーダドリフトに位置するIODP Site U1314の海底堆積物のXRDとIRD分析を行った。IODP Site U1314の海底堆積物は、堆積速度が非常に早いために高分解能で分析を行うことができる。Ohno et al. (2016)とHayashi et al.(2020)は、同コア試料を用いて2.9~2.5Maの区間を高分解能で分析しており、およそ5~3千年の間隔で繰り返す氷山崩壊イベントがMIS 100氷期において初めて起きたことを明らかにしている。しかし、MIS 100の氷山崩壊イベントを最終氷期の急激な気候変動と比べると、イベント間の時間は数倍長い。本研究で新たに分析を行った2.38〜2.34Ma(MIS 93〜91)の区間では、MIS 92氷期とMIS 91間氷期に氷山崩壊イベントが発見された。特にMIS 92の氷山崩壊イベントはMIS 100と最終氷期の中間の時間規模であり、気候変動システムが変化した可能性が示唆される。