日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)

11:00 〜 13:00

[MIS18-P21] 二種の凝集同位体組成(Δ47とΔ48)の併用による多様な炭酸塩試料中の非平衡効果の推定

*加藤 大和1狩野 彰宏1 (1.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:炭酸凝集同位体、Δ47、Δ48、非平衡効果、温度復元

炭酸凝集同位体温度計は、炭酸塩の酸解離で生じたCO2を分析することで、結晶中の13C-18O 結合の存在度異常 (Δ47)を求め、これを沈澱温度に読み替える。試料母液の同位体情報を必要としないため、過去の温度を復元する強力な手法となりえる。しかし、母液からのCO2の脱ガスや吸収は、溶存無機炭素(DIC)中の同位体非平衡を引き起こし、CO2脱ガスによって沈澱が生じる鍾乳石やトゥファでは、Δ47値が平衡状態に比べて低い値(より高い温度を示す)をとり、CO2吸収によって沈澱が生じるサンゴや軟体動物の炭酸塩骨格では、そのΔ47値が高い値(低温)をとることが問題となる。
近年の理論的研究により、2種の炭酸凝集同位体組成(Δ47とΔ48)を併用することで、このような非平衡効果を推量できることが示唆された(Guo and Zhou, 2019; Guo, 2020)。CO2脱ガス(吸収)の初期には、Δ47値が平衡より低い(高い)方向にずれ、その際、もう一方のΔ48値は高い(低い)方向にずれる。そして、非平衡によるこの2種間のずれには一定の関係があり、理論的に計算することができる。
発表者らの研究室では、これまで多様な種類の炭酸塩試料のΔ47値とΔ48値を測定してきた。例えば、Kato et al. (2019)では、日本産のトゥファのΔ47値が平衡状態から0.011–0.012‰低い方向へずれていることを示し、同様のずれは日本の石筍でも見られることがわかっている(Kato et al., 2021)。今回新たに計算した結果、同上のトゥファのΔ48値は平衡状態から約0.03–0.05‰高い方向へずれていることがわかった。
本研究では、我々が測定した合成カルサイトやトゥファ、石筍、魚類耳石、サンゴ骨格など様々な炭酸塩試料のΔ47値とΔ48値を示して相互に比較することで、凝集同位体に影響する非平衡効果を推定する。

引用文献
Guo, W. & Zhou, C. 2019, GCA 267, 196–226.
Guo, W. 2020. GCA 268, 230–257.
Kato et al. 2019. GCA 244, 548–564.
Kato et al. 2021. QSR 253, 106746.