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[MIS23-05] 桜島ブルカノ式噴火の噴煙からのテフラ粒子の時空間分離特性
キーワード:ブルカノ式噴火、桜島、テフラ粒子の分離鉛直プロファイル、噴煙ダイナミクス、ディスドロメータ
1.はじめに
観測に基づいた,噴煙から分離するテフラ粒子の重量分布の鉛直プロファイル(以下「プロファイル」)の研究は十分でない。従来の降灰予測では,関数モデル (例えば,Suzuki, 1983) や解析的なモデル (例えば,Woods, 1988) が使われてきた。瀧下・他(2020)は,ディスドロメータによる降灰観測に基づいて,桜島の6回のブルカノ式噴火において上下に2つのピークを持つバイモーダルなプロファイルを推定した。上部のピークはきのこ型の噴煙柱上部の傘の部分に,下部のピークは柄の部分に相当する。これは噴煙フェーズが瞬間的な爆発から準定常的なテフラ放出へと移行したことを示唆する。本研究では,多数のブルカノ式噴火でもこの鉛直プロファイルが一般的なのか検証した。
2.降灰観測と噴火の特徴
観測にはOTT社製のディスドロメータParsivel2を用いて,桜島の島内17地点で,粒径と落下速度区間の組み合わせごとの粒子数を1分毎に計測し,経験的な換算式 (Takishita et al., 2022) により,降灰重量に換算した。
2018年から2019年にかけて,降雨がなく噴煙高度が気象庁または京大防災研に記録されていて,3地点以上で降灰が検知された39回の噴火を解析した。地震と地盤変動の観測値に基づいて推定された,1分ごとのテフラの質量噴出率の時系列から,噴火は4種に分類された:爆発直後に粒子放出が終了する単発型 (I型: 7事例),爆発直後から数十分間,毎分10t前後の粒子を放出する準定常型 (QS型 :7事例),数分おきに毎分数100から数1000tの粒子放出を繰り返す連発型 (R型: 18事例),これらの中間型(C型:7事例)。
3.解析対象の噴火と解析方法
プロファイルにはSuzuki (1983) が提案した分布関数に最大到達高度,鉛直分散パラメータを組み合わせたものと,これらから最大到達高度の異なる2種類を組み合わせたものを用意した。各プロファイルは初期条件として,移流拡散モデルTephra4D (Takishita et al., 2021) を用いたシミュレーションに適用された。Tephra4Dは,粒子群の重心の落下速度を終端速度と下向きの風の和で表せると仮定する。気象場はWRF (Skamarock et al., 2019) を用いて計算し,地形や空間三次元の不均質性と時間変化を考慮した。最適なプロファイルは,落下速度区間を4つに区分して(以下,各区間の粒子を落下速度の遅い方から「低速粒子」「準低速粒子」「準高速粒子」「高速粒子」と呼ぶ)それぞれ観測値との残差評価により決定した。
4.結果
降灰予測は準定常型 (QS型),単発型 (I型),連発型 (R型) の順に高精度だった。多くの事例では,積算すると複数の高度ピークからなる鉛直プロファイルを持つが,その大半では速度区間ごとの一つのピークから成るプロファイルを組合せたプロファイルだった。これは,複数の高度ピークが落下速度の違いに起因することを示唆する。準定常型 (QS型) の噴火の多くは噴煙低部にピークを持った。連発型 (R型)の噴火は,準高速粒子では大半が噴煙高部にピークを持ち,準低速粒子では高部にピークを持つプロファイルと底部にピークを持つプロファイルの数が拮抗した。いずれの種別でも,準高速のほうがピーク高度の高い噴火が優勢だった。
5.議論
異なる落下速度でのピーク高度の違いは,解析的なモデルと矛盾する。議論の対象となった速度区間は噴煙から放出される粒子の数wt%に限られるため,さらなる検討が必要である。
噴火の種別による精度の違いは,噴煙が噴火開始時刻に瞬間的に形成され,その鉛直プロファイルのピークが最大で2個であるという仮定に起因すると考えられる。この仮定と実態が最もかけ離れているのは連発型 (R型) であり,予測精度の悪い区分と合致することから,鉛直プロファイルの時間変化を考慮する必要性が示唆された。
観測に基づいた,噴煙から分離するテフラ粒子の重量分布の鉛直プロファイル(以下「プロファイル」)の研究は十分でない。従来の降灰予測では,関数モデル (例えば,Suzuki, 1983) や解析的なモデル (例えば,Woods, 1988) が使われてきた。瀧下・他(2020)は,ディスドロメータによる降灰観測に基づいて,桜島の6回のブルカノ式噴火において上下に2つのピークを持つバイモーダルなプロファイルを推定した。上部のピークはきのこ型の噴煙柱上部の傘の部分に,下部のピークは柄の部分に相当する。これは噴煙フェーズが瞬間的な爆発から準定常的なテフラ放出へと移行したことを示唆する。本研究では,多数のブルカノ式噴火でもこの鉛直プロファイルが一般的なのか検証した。
2.降灰観測と噴火の特徴
観測にはOTT社製のディスドロメータParsivel2を用いて,桜島の島内17地点で,粒径と落下速度区間の組み合わせごとの粒子数を1分毎に計測し,経験的な換算式 (Takishita et al., 2022) により,降灰重量に換算した。
2018年から2019年にかけて,降雨がなく噴煙高度が気象庁または京大防災研に記録されていて,3地点以上で降灰が検知された39回の噴火を解析した。地震と地盤変動の観測値に基づいて推定された,1分ごとのテフラの質量噴出率の時系列から,噴火は4種に分類された:爆発直後に粒子放出が終了する単発型 (I型: 7事例),爆発直後から数十分間,毎分10t前後の粒子を放出する準定常型 (QS型 :7事例),数分おきに毎分数100から数1000tの粒子放出を繰り返す連発型 (R型: 18事例),これらの中間型(C型:7事例)。
3.解析対象の噴火と解析方法
プロファイルにはSuzuki (1983) が提案した分布関数に最大到達高度,鉛直分散パラメータを組み合わせたものと,これらから最大到達高度の異なる2種類を組み合わせたものを用意した。各プロファイルは初期条件として,移流拡散モデルTephra4D (Takishita et al., 2021) を用いたシミュレーションに適用された。Tephra4Dは,粒子群の重心の落下速度を終端速度と下向きの風の和で表せると仮定する。気象場はWRF (Skamarock et al., 2019) を用いて計算し,地形や空間三次元の不均質性と時間変化を考慮した。最適なプロファイルは,落下速度区間を4つに区分して(以下,各区間の粒子を落下速度の遅い方から「低速粒子」「準低速粒子」「準高速粒子」「高速粒子」と呼ぶ)それぞれ観測値との残差評価により決定した。
4.結果
降灰予測は準定常型 (QS型),単発型 (I型),連発型 (R型) の順に高精度だった。多くの事例では,積算すると複数の高度ピークからなる鉛直プロファイルを持つが,その大半では速度区間ごとの一つのピークから成るプロファイルを組合せたプロファイルだった。これは,複数の高度ピークが落下速度の違いに起因することを示唆する。準定常型 (QS型) の噴火の多くは噴煙低部にピークを持った。連発型 (R型)の噴火は,準高速粒子では大半が噴煙高部にピークを持ち,準低速粒子では高部にピークを持つプロファイルと底部にピークを持つプロファイルの数が拮抗した。いずれの種別でも,準高速のほうがピーク高度の高い噴火が優勢だった。
5.議論
異なる落下速度でのピーク高度の違いは,解析的なモデルと矛盾する。議論の対象となった速度区間は噴煙から放出される粒子の数wt%に限られるため,さらなる検討が必要である。
噴火の種別による精度の違いは,噴煙が噴火開始時刻に瞬間的に形成され,その鉛直プロファイルのピークが最大で2個であるという仮定に起因すると考えられる。この仮定と実態が最もかけ離れているのは連発型 (R型) であり,予測精度の悪い区分と合致することから,鉛直プロファイルの時間変化を考慮する必要性が示唆された。