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[MIS23-06] 諏訪之瀬島2021年噴火活動におけるレーダー反射強度と空振パルス振幅の関係
キーワード:XバンドMPレーダー、レーダー反射強度、空振パルス、諏訪之瀬島
気象レーダー観測から得られるレーダー反射因子と火山灰量との関係式を用いて,降下火山灰量および分布の推定が行われている(Maki et al., 2021).一方,噴火に伴う空振から噴出物の放出量の推定が行われてきている(例えば,Yamada et al., 2017).レーダーが噴煙内の火砕物による電波の反射を見ているのに対して,空振は噴火時の火口における空気の瞬間移動を反映していることから,両者の比較が重要である.
京都大学防災研究所は南九州の主要火山近傍の6箇所にXバンドMPレーダーを2017年8月に設置してレーダーによる噴煙観測を行っている(中道・他,2018).諏訪之瀬島においては2020年9月より特定方向範囲を仰角方向に走査し,クシ型に3次元データを生成するセクタRHIスキャンにてレーダーの運用を行っている.また,京都大学防災研究所は2021年3月に火口から水平距離0.6 km(SWA)に空振計(白山工業SI-104)を設置した.
諏訪之瀬島では2020年秋から噴火が頻発しており,日別噴火回数が10回を超える日が大半で,2021年8月下旬から9月では40回を超える日もあった.そのため,多数の噴火を対象に,レーダー観測と空振観測の比較を行える.そこで,本研究では諏訪之瀬島の2021年6月下旬から同年9月末までのレーダー反射強度と空振の関係を調べる.御岳火口の座標(東経129.715度,北緯29.642度)において,海抜高度900 mから6100 mの間を200 m間隔にてレーダー反射強度を抽出する.SWAにおいて10Pa以上の増圧位相振幅の空振パルスを対象として,振幅200Pa以下の空振パルスが卓越する期間と,200Pa以上の空振パルスが頻発する期間に分割して,各期間における1時間における積算レーダー反射強度と空振パルスの最大空振振幅を比較した(図).
最大空振振幅が大きい時間帯では積算レーダー反射強度が小さく,積算レーダー反射強度が大きい時間帯では最大空振振幅が小さい傾向が見て取れる.この期間において最大空振振幅の最大値(591Pa)となったのは7月7日0時10分の空振パルスであり,7月7日0時〜1時における積算レーダー反射強度は48 mm6/m3である.一方,積算レーダー反射強度が最大値(6.8 x 107 mm6/m3)となったのは7月13日15時〜16時で,この時間帯における最大空振振幅は29Paであった.なお,積算レーダー反射強度が100 mm6/m3未満で空振振幅が100Pa未満の時間帯は,2021年7月31日19時〜21時,8月23日2時〜5時,8月28日14時〜15時,9月27日1時〜6時などであり,小振幅の空振パルスが頻発している時間に対応しており,これらの時間帯ではストロンボリ式噴火が頻発していた.そこで,ストロンボリ式噴火の時間帯を除外して議論する.空振振幅が大きい時間帯(最大値300Pa以上)は積算レーダー反射強度が小さく(105 mm6/m3未満),気象庁が報告している噴煙高度は2000 m未満である.一方,空振振幅が小さい時間帯(最大値200Pa以下)では積算レーダー反射強度が大きい(106 mm6/m3以上)時間帯があり,このような時間帯は7月13日,8月21日,9月26日にあり,これらの日では噴煙高度が3000 mを超える噴火があった.例えば,7月13日11:21噴煙高度3300 m,8月21日6:17噴煙高度3200 m,9月26日7:11噴煙高度5400 mである.
これらのことから,空振振幅の大きい噴火は火山灰放出量が少なく,噴煙高度が低い.一方,空振振幅が小さい噴火は火山灰放出量が多く,噴煙高度が高いと言える.ストロンボリ式噴火が発生している時間帯を含めると,レーダー反射強度が小さい時間帯では,火山灰量が少なく,火山ガス放出量が多い噴火が卓越,つまり,新鮮なマグマによる噴火が卓越していると考えられる.一方,レーダー反射強度が大きい時間帯では,火山灰放出量が多く,火山ガス放出が少ない噴火が卓越,つまり,脱ガスが進行したマグマによる噴火が卓越していると考えられる.
京都大学防災研究所は南九州の主要火山近傍の6箇所にXバンドMPレーダーを2017年8月に設置してレーダーによる噴煙観測を行っている(中道・他,2018).諏訪之瀬島においては2020年9月より特定方向範囲を仰角方向に走査し,クシ型に3次元データを生成するセクタRHIスキャンにてレーダーの運用を行っている.また,京都大学防災研究所は2021年3月に火口から水平距離0.6 km(SWA)に空振計(白山工業SI-104)を設置した.
諏訪之瀬島では2020年秋から噴火が頻発しており,日別噴火回数が10回を超える日が大半で,2021年8月下旬から9月では40回を超える日もあった.そのため,多数の噴火を対象に,レーダー観測と空振観測の比較を行える.そこで,本研究では諏訪之瀬島の2021年6月下旬から同年9月末までのレーダー反射強度と空振の関係を調べる.御岳火口の座標(東経129.715度,北緯29.642度)において,海抜高度900 mから6100 mの間を200 m間隔にてレーダー反射強度を抽出する.SWAにおいて10Pa以上の増圧位相振幅の空振パルスを対象として,振幅200Pa以下の空振パルスが卓越する期間と,200Pa以上の空振パルスが頻発する期間に分割して,各期間における1時間における積算レーダー反射強度と空振パルスの最大空振振幅を比較した(図).
最大空振振幅が大きい時間帯では積算レーダー反射強度が小さく,積算レーダー反射強度が大きい時間帯では最大空振振幅が小さい傾向が見て取れる.この期間において最大空振振幅の最大値(591Pa)となったのは7月7日0時10分の空振パルスであり,7月7日0時〜1時における積算レーダー反射強度は48 mm6/m3である.一方,積算レーダー反射強度が最大値(6.8 x 107 mm6/m3)となったのは7月13日15時〜16時で,この時間帯における最大空振振幅は29Paであった.なお,積算レーダー反射強度が100 mm6/m3未満で空振振幅が100Pa未満の時間帯は,2021年7月31日19時〜21時,8月23日2時〜5時,8月28日14時〜15時,9月27日1時〜6時などであり,小振幅の空振パルスが頻発している時間に対応しており,これらの時間帯ではストロンボリ式噴火が頻発していた.そこで,ストロンボリ式噴火の時間帯を除外して議論する.空振振幅が大きい時間帯(最大値300Pa以上)は積算レーダー反射強度が小さく(105 mm6/m3未満),気象庁が報告している噴煙高度は2000 m未満である.一方,空振振幅が小さい時間帯(最大値200Pa以下)では積算レーダー反射強度が大きい(106 mm6/m3以上)時間帯があり,このような時間帯は7月13日,8月21日,9月26日にあり,これらの日では噴煙高度が3000 mを超える噴火があった.例えば,7月13日11:21噴煙高度3300 m,8月21日6:17噴煙高度3200 m,9月26日7:11噴煙高度5400 mである.
これらのことから,空振振幅の大きい噴火は火山灰放出量が少なく,噴煙高度が低い.一方,空振振幅が小さい噴火は火山灰放出量が多く,噴煙高度が高いと言える.ストロンボリ式噴火が発生している時間帯を含めると,レーダー反射強度が小さい時間帯では,火山灰量が少なく,火山ガス放出量が多い噴火が卓越,つまり,新鮮なマグマによる噴火が卓越していると考えられる.一方,レーダー反射強度が大きい時間帯では,火山灰放出量が多く,火山ガス放出が少ない噴火が卓越,つまり,脱ガスが進行したマグマによる噴火が卓越していると考えられる.