日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 国際境界模式層断面とポイント

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (36) (Ch.36)

コンビーナ:松岡 篤(新潟大学理学部)、コンビーナ:佐野 晋一(富山大学大学院理工学研究部)、座長:松岡 篤(新潟大学理学部)、佐野 晋一(富山大学学術研究部都市デザイン学系)

11:00 〜 13:00

[MIS28-P02] 岐阜県荘川地域に分布する手取層群御手洗層のベレムナイト化石による時代論再検討

*佐野 晋一1、丸山 湧己2 (1.富山大学学術研究部都市デザイン学系、2.富山大学都市デザイン学部地球システム科学科)

キーワード:ジュラ紀/白亜紀境界、ベレムナイト、御手洗層、手取層群、中部日本

中部日本北部,岐阜県荘川地域に分布する手取層群御手洗層はジュラ紀/白亜紀境界を含む可能性がある地層として近年注目を集めている(Sano, 2020; Haggart and Matsukawa, 2020).また,御手洗層には海生無脊椎動物化石が多産し,それらの古生物地理学的検討によると,テチスー太平洋要素とボレアル要素の両方が産する点でも注目される.筆者らは,御手洗層の詳細な時代論の解明を目指して,地質学的・古生物学的研究を進めているが,御手洗層の時代論に関して,現時点で最も詳細な議論が可能と考えられるベレムナイト化石について再検討を行ったので,暫定的ではあるが,その結果を報告する.
研究に用いたのは,Haggart and Matsukawa (2020)で記載されたものを含む,光記念館(岐阜県高山市)所蔵のベレムナイト化石の全標本である.御手洗層最下部のベレムナイト相は典型的ボレアル要素であるCylindroteuthididae科の産出で特徴づけられ,Arctoteuthis tehamaensisと,佐野ほか(2015)のCylindroteuthis aff. knoxvillensisのほか,C. knoxvillensisSimobelus cf. compactusが暫定的に同定された.Simobelus cf. compactusの産出は本研究で初めて確認されたものである.また,C. knoxvillensis A. tehamaensisの産出自体はHaggart and Matsukawa (2020)で既に報告されているが,今回,同定を見直した標本もある.
C. knoxvillensis A. tehamaensisS. compactusは北部シベリアのVolgian/Ryazanian境界付近の層序から報告されており,3種が共通して産する可能性があるのはC. knoxvillensisベレムナイト化石帯(中期~後期Berriasianに相当)のみである(Dzyuba, 2013).しかしながら, 御手洗層産C. knoxvillensisSimobelus cf. compactusの同定は,わずかな数の,しばしば不完全な鞘の化石に基づくものであり,確実とは言いがたい.御手洗層の詳細な時代決定には,ベレムナイトの追加標本の検討のほか,石灰質ナノプランクトンなどの微化石による生層序やSr同位体層序,古地磁気層序などの手法の適用を検討し,複合的に進める必要がある.

(文献)
Dzyuba, O. S. 2013. Stratigraphy and Geological Correlation, 21(2), 189–214.
Haggart, J. W. and Matsukawa, M. 2020. Cretaceous Research, 111, 104281.
Sano, S. 2020. Paleontological Research, 24(2), 147–160.
佐野ほか.2015.地質学雑誌,121(2), 71–79.