日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 国際境界模式層断面とポイント

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (36) (Ch.36)

コンビーナ:松岡 篤(新潟大学理学部)、コンビーナ:佐野 晋一(富山大学大学院理工学研究部)、座長:松岡 篤(新潟大学理学部)、佐野 晋一(富山大学学術研究部都市デザイン学系)

11:00 〜 13:00

[MIS28-P03] 中生界のGSSPの現状と日本の地層における国際年代層序への貢献

★招待講演

*高嶋 礼詩1 (1.東北大学総合博物館)

キーワード:GSSP、中生界、日本

中生界のステージの多くは,ヨーロッパに露出する陸棚以浅の堆積相からなる地層に対して1800年代に提唱されてきた.各ステージは元々,岩相層序区分的な意味合いで提唱され,これらの地層から産出した大型化石を基に広域対比の試みがなされていた.その後,層序学的研究の進展に伴い,模式地とされた地域の地層でみられるステージ境界の大部分は不整合関係もしくはハイエイタスであることが明らかにされ,ステージ境界の再定義や見直しが進むようになった.その結果,境界模式層の多くは海水準変動の影響を受けにくい半深海域で堆積した地層に設定されている.ステージ境界を定義づける第一次マーカーも大型化石の生基準面だけでなく,コノドントや浮遊性有孔虫,カルピオネラなどの微化石,古地磁気の反転なども取り入れられるようになった.さらに,境界模式層において各タクサの生基準面だけでなく,古地磁気層序と炭素・オスミウム・ストロンチウムなどの同位体層序の検討がなされるようになると,GSSPから遠く離れた,生物地理区を異にするセクションとの層序対比の精度が飛躍的に向上している.一方,中生界のGSSPの多数を占めるヨーロッパ地域は非活動的大陸縁辺であるために,地層中に凝灰岩が挟まることは極めてまれで,ステージ境界の年代値の決定が困難な場合が多い.このような地層ではサイクロ層序に基づいてステージ境界の年代が推定されてきたが,始新世より古い地層については放射年代による校正が必要であり,これまでGeologic Time Scaleで何度もステージ境界の年代値の変更がなされてきた.
日本は中生界のGSSPがあるヨーロッパとは生物地理区も異なることから,共通の年代示準種が豊富に産出するわけではなく,化石を用いた層序対比だけでは十分な精度が得られない.しかしながら,日本の中生界,とりわけ白亜系では,活動的大陸縁辺で形成された地層のために,多くの凝灰岩が挟まる.近年,日本の中生界でも様々なタクサの化石に加え,各種同位体層序と古地磁気層序を組み合わせた統合層序がなされるようになり,GSSPとの高精度の対比に基づき,ヨーロッパで定義されている各ステージ境界や海洋無酸素事変などの古環境イベント層準が特定されるようになってきた.これらの層準あるいはその近傍に挟まる凝灰岩の放射年代を測定することにより,日本の地層は国際地質年代尺度に大きな貢献できる可能性がある.