11:15 〜 11:30
[MSD42-08] Ku帯ドップラー降水レーダミッション
キーワード:雲・降水プロセス、ドップラーレーダ、ACCP
地球温暖化に代表される気候変動研究における重要課題としては、将来予測の精度向上や正確な影響評価(長期トレンド・現状把握)が挙げられる.ここでは、気候変動の、人間生活への影響が大きい降水や雲をターゲットに、内部構造を捉えることに優位性を持つアクティブセンサによる観測として、Ku帯ドップラー降水レーダによるミッションを提案する.本提案は、前回公募における「アクティブセンサによる雲降水観測ミッション」が、より具体的なフェーズに移行したためタイトルを改めた.
提案ミッションの特徴は、TRMM、GPMと継続されてきたKu帯レーダによる降水観測を継続させて気候変動のモニターに供するデータを提供することに加え、直下方向のドップラー速度観測を加えることにより、従来の量的な観測に加えて発生プロセスを追求できるミッションとなる.降水プロセスが研究の主題となるため、降水の観測のみならず降水形成プロセスにつながる、エアロゾルや雲のプロセスの観測も必要になるが、その部分はNASAのACCP (aerosol, cloud, convection and precipitation)に関するミッションと連携することにより実現する.そのため、現状では2028年の打ち上げ、軌道傾斜角55度、軌道高度 407kmとなっている.
本提案ミッションは、現在JAXAではMission Definition Review(ミッション定義審査、MDR)を完了しており、2022年4月System Requirement Review (システム要求審査、SRR)を予定している.
以下に衛星およびセンサの仕様を示す。
衛星仕様
衛星軌道:太陽非同期軌道(軌道傾斜角 55度)
軌道高度:407㎞(暫定)
衛星質量:2500㎏以下
搭載センサ:Ku帯ドップラー降水レーダ
・周波数:Ku帯(13.6 GHz)
・センサ質量:574㎏(最大)
・消費電力:739 W (最大)
・設計寿命:5年
・水平分解能:5x5 km (DPRと同じ)
・鉛直分解能:500 m (250 m間隔でオーバーサンプリング)
・走査幅:250 km (ドップラー観測は直下のみ、直下付近で高密度観測)
なお、打ち上げはNASA側の分担(日本側、衛星バスとレーダ)としている.
前回提案から更新されたことを以下にまとめる.
衛星の軌道については軌道傾斜角55度の太陽非同期軌道、衛星高度407㎞で確定した.
センサについては、ドップラー速度観測を実現するために2 m x 2 m のアンテナを2枚利用したDisplaced Phase Center Antenna (DPCA)方式を採用し、衛星速度に伴うドップラー速度誤差の低減を図り、最終的な速度誤差は2m/sと見積もられる.そのため、フットプリントサイズは、2.5 km (衛星進行方向) x 5 km(衛星進行に直交する方向)から従来のGPMと同様な 5 km x 5 kmのフットプリントになった.感度については、ドップラー速度観測を行う直下方向では数dBZの感度となり従来のGPM KuPRよりも10dBほどの大幅な改善が規定できる.またドップラー速度観測以外の走査においてもGPM KuPRに対して数dBの向上が見込まれる.
降水レーダ以外の観測として、CNESが提供するマイクロ波放射計が相乗りする方向で検討が進められている.また、同じ軌道にNASAの後方散乱ライダーおよびW帯のレーダを搭載した衛星が2分以内の時間差で観測することで検討が進められている.
このミッションにより期待される成果としては、以下のことが挙げられる。
1)これまで、TRMM/PRやGPM/DPRによる降水の3次元観測に雲レーダ等との同時観測や鉛直ドップラー速度観測を付加することにより,気象学や気候学の課題である地球規模での雲・降水物理過程の理解が進む.即ち、動的な情報が追加されることにより、これまでのスカラー量の観測にもベクトル的な利用が可能になり、研究の幅が広がることが期待できる.
2)気候変動による降水システムやプロセス自体の変化と全球降水量を継続的に把握する.レーダによる降水観測は感度・精度が高く、わずかな降水システムの変化に対しても検出が可能であり,数値気候モデルと連携させることにより気候変動のメカニズムの理解の飛躍的進展や予測精度の向上が期待できる
なお、本ミッションは、宇宙基本計画 工程表では、レーダの継続的高度化 [⽂部科学省等]において、「2020年度に検討を着⼿した降⽔レーダ後継ミッションについて、NASAで計画中のA-CCPミッションとの相乗りを⾒据えつつ検討を進める.」とあり、国のプロジェクトとして認められつつある。
提案ミッションの特徴は、TRMM、GPMと継続されてきたKu帯レーダによる降水観測を継続させて気候変動のモニターに供するデータを提供することに加え、直下方向のドップラー速度観測を加えることにより、従来の量的な観測に加えて発生プロセスを追求できるミッションとなる.降水プロセスが研究の主題となるため、降水の観測のみならず降水形成プロセスにつながる、エアロゾルや雲のプロセスの観測も必要になるが、その部分はNASAのACCP (aerosol, cloud, convection and precipitation)に関するミッションと連携することにより実現する.そのため、現状では2028年の打ち上げ、軌道傾斜角55度、軌道高度 407kmとなっている.
本提案ミッションは、現在JAXAではMission Definition Review(ミッション定義審査、MDR)を完了しており、2022年4月System Requirement Review (システム要求審査、SRR)を予定している.
以下に衛星およびセンサの仕様を示す。
衛星仕様
衛星軌道:太陽非同期軌道(軌道傾斜角 55度)
軌道高度:407㎞(暫定)
衛星質量:2500㎏以下
搭載センサ:Ku帯ドップラー降水レーダ
・周波数:Ku帯(13.6 GHz)
・センサ質量:574㎏(最大)
・消費電力:739 W (最大)
・設計寿命:5年
・水平分解能:5x5 km (DPRと同じ)
・鉛直分解能:500 m (250 m間隔でオーバーサンプリング)
・走査幅:250 km (ドップラー観測は直下のみ、直下付近で高密度観測)
なお、打ち上げはNASA側の分担(日本側、衛星バスとレーダ)としている.
前回提案から更新されたことを以下にまとめる.
衛星の軌道については軌道傾斜角55度の太陽非同期軌道、衛星高度407㎞で確定した.
センサについては、ドップラー速度観測を実現するために2 m x 2 m のアンテナを2枚利用したDisplaced Phase Center Antenna (DPCA)方式を採用し、衛星速度に伴うドップラー速度誤差の低減を図り、最終的な速度誤差は2m/sと見積もられる.そのため、フットプリントサイズは、2.5 km (衛星進行方向) x 5 km(衛星進行に直交する方向)から従来のGPMと同様な 5 km x 5 kmのフットプリントになった.感度については、ドップラー速度観測を行う直下方向では数dBZの感度となり従来のGPM KuPRよりも10dBほどの大幅な改善が規定できる.またドップラー速度観測以外の走査においてもGPM KuPRに対して数dBの向上が見込まれる.
降水レーダ以外の観測として、CNESが提供するマイクロ波放射計が相乗りする方向で検討が進められている.また、同じ軌道にNASAの後方散乱ライダーおよびW帯のレーダを搭載した衛星が2分以内の時間差で観測することで検討が進められている.
このミッションにより期待される成果としては、以下のことが挙げられる。
1)これまで、TRMM/PRやGPM/DPRによる降水の3次元観測に雲レーダ等との同時観測や鉛直ドップラー速度観測を付加することにより,気象学や気候学の課題である地球規模での雲・降水物理過程の理解が進む.即ち、動的な情報が追加されることにより、これまでのスカラー量の観測にもベクトル的な利用が可能になり、研究の幅が広がることが期待できる.
2)気候変動による降水システムやプロセス自体の変化と全球降水量を継続的に把握する.レーダによる降水観測は感度・精度が高く、わずかな降水システムの変化に対しても検出が可能であり,数値気候モデルと連携させることにより気候変動のメカニズムの理解の飛躍的進展や予測精度の向上が期待できる
なお、本ミッションは、宇宙基本計画 工程表では、レーダの継続的高度化 [⽂部科学省等]において、「2020年度に検討を着⼿した降⽔レーダ後継ミッションについて、NASAで計画中のA-CCPミッションとの相乗りを⾒据えつつ検討を進める.」とあり、国のプロジェクトとして認められつつある。