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[PEM13-P12] HFドップラー観測による流星エコーの解析
流星が高度80~120 kmの地球大気に突入したとき電離圏に擾乱が発生することが知られている.この時擾乱として生じるプラズマは流星飛跡と呼ばれ,電子密度の増加によりHF,VHF帯の電波を反射する性質をもつ.これまで流星電波観測の多くは,VHF 帯の電波を使用して行われてきた.そこで本研究では,HF 帯の電波による,流星に伴うエコーの解析を行った.本研究は HF ドップラー観測システムにより取得された流星エコーを使用した.電気通信大学調布キャンパスより送信された8 MHzの電波を杉戸,柿岡,大洗,鹿島の各観測点で受信した際のドップラーデータを使用した.解析対象は2014/10/25/20:30:27 JST に発生した流星である.観測された流星エコーの受信強度時系列データを解析したところ,先行研究にてオーバーデンスエコーとして報告されている時間変化と類似する波形が得られた.VHF 帯の観測で得られたエコーの継続時間より本研究で得られたエコーの継続時間は約15分とかなり長くなった.これは流星エコーの継続時間は送信周波数の波長が大きいほど長くなるためであると考えられる.また,今回得られた流星エコーはオーバーデンスエコーであることから,ドップラーシフトの大きさは,流星飛跡の拡散を反映していると考えられる.但し,中性風による飛跡の移動も含まれていると考えられることから,流星発生時刻のドップラーシフトと次にドップラーシフトが変化する時刻のドップラーシフトの差から流星飛跡の半径方向への広がりの速さを求め,過去の統計的な結果から得られた関係式(Fish and Barkey, 1998)を使用して求めた飛跡の広がりの速さと比較したところほぼ一致した値が得られた.但し,大洗では流星発生時刻からドップラーシフトが変化するまで40秒程度たっており,時間間隔が長かったため値は2倍程度の大きさであった.これは時間が経つにつれて,流星飛跡が風などの影響により変形していくためであると考えられる.