日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS06] 月の科学と探査

2022年5月27日(金) 10:45 〜 12:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、コンビーナ:鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、長岡 央(理化学研究所)、コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、座長:鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、小野寺 圭祐(パリ大学)

11:45 〜 12:00

[PPS06-05] 月面衝突閃光によるメテオロイドと月探査

*阿部 新助1柳澤 正久3小野寺 圭祐2 (1.日本大学理工学部、2.宇宙航空研究開発機構、3.電気通信大学)

キーワード:月面衝突閃光、流星体、隕石、彗星、小惑星

彗星や小惑星を起源とする直径μm〜mのダストを流星体(メテオロイド: meteoroid)と呼ぶ.直径が1mm程度のメテオロイドが秒速数10kmで地球大気に突入する際の発光現象が流星(meteor)である.一方,直径cm〜数10cmのメテオロイドが月面に衝突すると,0.01〜0.1秒程の短時間発光である月面衝突閃光(Lunar Impact Flash; 以下LIF)が可視から近赤外線波長領域で発生し,約5〜11等級の点光源として地上望遠鏡で観測される.稀な流星現象である火球(fireball)の多くは,cmサイズ以上のメテオロイドの大気突入によって生じるが,広大な月面を望遠鏡代わりにしたLIF観測は,地上単点観測に比べて約100倍効率良くcmサイズ以上のメテオロイドを観測することができる.つまりLIF観測は,近年のカメラセンサーの感度・速度の向上により可能となった,地球-月圏へ流入する微小天体のうち未解明領域である流星と小惑星を繋ぐメトロイドのサイズ分布,衝突頻度と季節・時間変動を統計的に調べることができる新たなツールといえる.しかし,地上からのLIF観測は,月齢の制限や天候の影響などにより,安定した長時間モニターは困難である.一方,月周回あるいは月近傍からは,LIFの長時間継続モニターが可能で,月面でのメテオロイド衝突モデルのアップデートと衝突予報の持続的な提供が期待される.LIF観測は,今後の人類の月面活動の際の環境モニターの一つとしても考慮されるべきテーマと考えられる.

月面衝突閃光観測を通して,(1)流星と小惑星を繋ぐメテオロイドのサイズ(質量)分布関数と衝突頻度の解明,(2)メテオロイドの月面衝突を震源とした月震計測とのコラボによる月内部構造探査,(3)LIF分光観測による極域月面下の水氷探査,(4)天体衝突物理を理解するため天然の実験,(5)流星群に伴うLIFによって形成された衝突クレーター付近からのサンプルリターンといった分野横断的で新たな切り口となるサイエンス・テーマ群が考えられる.また,月面衝突に伴う広範囲におよぶ放出物による影響評価や,今後増えることが予想される人工飛翔体の廃棄現場となる月面衝突地点の確認などへの利用も考えられる.

本発表では,月面衝突閃光を通したメテオロイドの研究だけでなく,月探査への応用について提案を行う.