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[PPS07-19] 減衰衝撃波を用いた衝撃回収実験: 大理石, 花崗岩, 玄武岩の衝撃変成
キーワード:天体衝突、隕石、衝撃変成、衝撃回収、二段式水素ガス銃、数値衝突計算
地球上で発見される種々の隕石のほとんどには過去に起きた天体衝突による変成が記録されている. 過去の衝撃回収実験によって石英, 斜長石, 輝石, 橄欖石などの鉱物や, あるいはその集合体である岩石に衝撃を加えたときの変成度が調査され, Shock stageとしてまとめられている [e.g., Stöffler et al., 2018]. これはStöffler tableとして知られ, 地質試料に刻まれた衝撃変成を読み解き, 太陽系で起きた過去の衝突事件を復元するための辞書として用いられてきた. 過去の衝撃回収実験の多くは金属平板を用いた一軸圧縮実験であった. この手法には衝撃圧力を精度よく計算できるという長所があるが, 反射衝撃波の影響を取り除くのが難しいこと, 衝撃波の伝播方向と垂直方向への伸長変形による剪断応力の影響を無視しているという問題があった.
この弱点を打破すべく, 我々は~3 cmの岩石標的に対して十分に小さい飛翔体を用いて, 標的中に減衰衝撃波を伝播させ回収する実験系を構築している [Kurosawa et al., In revision]. 標的中には半球状に衝撃波が伝播するため, 天然衝突に近い幾何学条件となる. この手法の弱点は試料中の圧力, 温度を解析的に計算できないことであるが, 状態方程式が確立している物質であれば数値衝突計算によって精度のよい推定が可能である. これまでに大理石, 玄武岩, 花崗岩を用いた実験を実施してきた. 本講演では実験手法を紹介するとともにこれまでに得られた成果について述べる.
以下に実験及び分析手順を述べる. 衝突実験は千葉工業大学惑星探査研究センターに設置された二段式水素ガス銃を用いて実施した. 岩石試料は直径30 mm, 長さ24 mmの円柱形状に加工した. 着脱可能な前蓋を備えたチタンコンテナに岩石試料を封入し, 金属板で蓋をした. 飛翔体は直径4.8 mmのポリカーボネイト球, もしくは直径2 mmのチタン球を使用した. 飛翔体を金属前蓋に衝突させることで岩石試料中に減衰衝撃波を作用させた. 実験後には金属蓋にクレータが形成されるが, 岩石試料は衝撃を受ける前の層序を保ったまま回収することができる. 回収試料は衝突軸と平行な面に切断し, 薄片へと加工し, 各種分析(X線CT撮影, 光学/電子顕微鏡観察, 電子線元素分析, 局所X線回折分析, ラマン分光計測)を実施した.
以下に得られた結果を簡単に述べる. (1)炭酸塩鉱物(Calcite)は>3 GPaの衝撃で波状消光を示すこと [Kurosawa et al., In revision], (2)花崗岩, 玄武岩中の衝撃変成は概ねStöffler tableによる分類と一致したこと[Ono et al., 2021, LPSC, #1810; Hamann et al., 2022, LPSC, #2020], (3) 花崗岩中で8–18 GPaでFeather featuresと呼ばれる組織が形成されること [Tada et al., 2022, LPSC, #1733](3)花崗岩中では10–20 GPaで脈状の高圧相鉱物及び熔融ガラス組織が形成すること[Hamann et al., 2022, LPSC, #2020], (4)玄武岩中では~10 GPaで熔融ガラスの脈が形成したこと[Ono et al., to be submitted], がこれまでの結果である. 圧力指標については概ねStöffler tableの分類と調和的な結果が得られた. しかし, 10–20 GPa程度の低衝撃圧力条件でも熔融組織が観察されたことは従来の分類の見直しが必要であることを示唆する結果である.
この弱点を打破すべく, 我々は~3 cmの岩石標的に対して十分に小さい飛翔体を用いて, 標的中に減衰衝撃波を伝播させ回収する実験系を構築している [Kurosawa et al., In revision]. 標的中には半球状に衝撃波が伝播するため, 天然衝突に近い幾何学条件となる. この手法の弱点は試料中の圧力, 温度を解析的に計算できないことであるが, 状態方程式が確立している物質であれば数値衝突計算によって精度のよい推定が可能である. これまでに大理石, 玄武岩, 花崗岩を用いた実験を実施してきた. 本講演では実験手法を紹介するとともにこれまでに得られた成果について述べる.
以下に実験及び分析手順を述べる. 衝突実験は千葉工業大学惑星探査研究センターに設置された二段式水素ガス銃を用いて実施した. 岩石試料は直径30 mm, 長さ24 mmの円柱形状に加工した. 着脱可能な前蓋を備えたチタンコンテナに岩石試料を封入し, 金属板で蓋をした. 飛翔体は直径4.8 mmのポリカーボネイト球, もしくは直径2 mmのチタン球を使用した. 飛翔体を金属前蓋に衝突させることで岩石試料中に減衰衝撃波を作用させた. 実験後には金属蓋にクレータが形成されるが, 岩石試料は衝撃を受ける前の層序を保ったまま回収することができる. 回収試料は衝突軸と平行な面に切断し, 薄片へと加工し, 各種分析(X線CT撮影, 光学/電子顕微鏡観察, 電子線元素分析, 局所X線回折分析, ラマン分光計測)を実施した.
以下に得られた結果を簡単に述べる. (1)炭酸塩鉱物(Calcite)は>3 GPaの衝撃で波状消光を示すこと [Kurosawa et al., In revision], (2)花崗岩, 玄武岩中の衝撃変成は概ねStöffler tableによる分類と一致したこと[Ono et al., 2021, LPSC, #1810; Hamann et al., 2022, LPSC, #2020], (3) 花崗岩中で8–18 GPaでFeather featuresと呼ばれる組織が形成されること [Tada et al., 2022, LPSC, #1733](3)花崗岩中では10–20 GPaで脈状の高圧相鉱物及び熔融ガラス組織が形成すること[Hamann et al., 2022, LPSC, #2020], (4)玄武岩中では~10 GPaで熔融ガラスの脈が形成したこと[Ono et al., to be submitted], がこれまでの結果である. 圧力指標については概ねStöffler tableの分類と調和的な結果が得られた. しかし, 10–20 GPa程度の低衝撃圧力条件でも熔融組織が観察されたことは従来の分類の見直しが必要であることを示唆する結果である.