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[SCG50-05] 日本海沿岸の反射法地震探査のデータも活用した三次元地震波速度構造
キーワード:地震波トモグラフィー、反射法地震探査、日本海、2007年中越沖地震、2007年能登半島地震
1. はじめに
日本列島を構成するユーラシア・北アメリカプレートの下に太平洋・フィリピン海プレートが沈み込むため、日本列島の下は非常に複雑な構造となっている。防災科学技術研究所(防災科研)は高感度地震観測網(Hi-net)を運用し、気象庁や国立大学、国立研究開発法人なども微小地震を観測する地震観測点を運用している。海域では、防災科研や気象庁に加えて東京大学地震研究所(東大地震研)も陸域から直線的に伸びる海底地震計によるオンライン観測を行ってきた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は南海トラフ沿いで地震・津波観測監視システム(DONET)を構築・運用し、防災科研が東北地方の太平洋沖で日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築・運用している。現在DONETは防災科研に移管され、防災科研はHi-net, S-net, DONETに広帯域地震観測網(F-net)、全国強震観測網(K-NET)や基盤強震観測網(KiK-net)、基盤的火山観測網(V-net)を加え、日本全国を網羅する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)を運用している。JAMSTECは文部科学省によるひずみ集中帯プロジェクトや日本海地震・津波調査観測プロジェクトの中で、日本海沿岸におけるエアガンを用いた反射法探査を実施してきた。これらのエアガンからの振動は、陸域の微小地震観測網においても観測されている。複数のエアガンの振動を重合することによりS/N比が向上し、エアガンの記録も読み取ることが可能となる。本研究では、防災科研Hi-netや気象庁、大学等の微小地震観測網により観測されたデータにエアガンからの到達時刻データを合わせて用い、地震トモグラフィー法を用いて地震波速度構造モデルを構築した。
2. データ・手法
2000年10月から2019年12月までに東経120~148°、北緯20~48°の領域において、深さ10kmまでは水平0.01°、深さ1kmの領域内から、深さ10km以深では、水平0.1°、深さ2.5kmの領域内から到達時刻データ最多の地震を1つずつ抽出した。太平洋沖ではS-netの観測開始が2017年からであり、地震の数が少ないためいずれの深さにおいても水平0.01°、深さ1kmの領域内から地震を1つずつ抽出した。エアガン記録については、佐渡島から能登半島にかけて行われた測線と山形沖で行われた探査測線からのエアガン記録をそれぞれ9ショット重合してS/N比を3倍に高め、約1km間隔のエアガンからの記録について陸域観測網において波の到達時刻を読み取った。
総じて294,865個の地震からの14,850,442個のP波、12,278,029個のS波到達時刻データに加え、482個のエアガンからの11,089個のP波到達時刻データを、Zhao et al (1992)の地震波トモグラフィー法に観測点補正値やスムージングを導入した手法(Matsubara et al., 2004, 2005)を用いて地震波速度構造を推定した。初期速度構造は、防災科研Hi-netのルーチンで用いている鵜川他(1982)の構造を用いた。
3. 結果
エアガンデータを用いることにより、山形沖から能登半島にかけての日本海沿岸では海域の深さ5-10kmの解像度が向上した。能登半島と佐渡島の間の領域では、非常に低速度な領域が存在する結果を得た。深さ20km以深では、エアガンデータを用いない場合と同様の結果を得た。
得られた三次元地震波速度構造を用いて、2000年10月から2019年12月までのマグニチュード1.5以上の地震を再決定した。2019年山形沖の地震の本震は北西のP波高速度域と南東のP波低速度域の境界付近に位置し、上下のS波低速度、低Vp/Vs領域に挟まれている。余震は本震の西側に東傾斜で分布している。
2007年中越沖地震の本震は、P波高速度域、Vp/Vsが1.83の領域の南端に位置していた。余震は高速度域かつVp/Vsが1.80-1.85の領域の上端に分布している。
2007年能登半島地震の本震は浅部のP波高速度と深部のP波低速度域の境界かつ北部のS波低速度域と南部のS波高速度域の境界に位置している。余震はP波、S波ともに高速度域内に位置し、低Vp/Vs域を囲んでいる。
4. 議論
佐渡海嶺と最上トラフはインバージョンテクトニクスにより半地溝の隆起により形成された(Okamura et al., 1996)。2019年山形沖の地震の西側の深さ10-30kmは最上トラフに対応する高速度域となっている。この高速度下部地殻は粟島を通り佐渡島と本州の間の佐渡海盆まで達している。東北日本弧の主要なリフト帯が秋田から新潟にかけて日本海沿岸を走り、高速度下部地殻と対応し、浅いモホ面が中絶リフトと一致する(Matsubara et al., 2017, 2019)。
日本列島を構成するユーラシア・北アメリカプレートの下に太平洋・フィリピン海プレートが沈み込むため、日本列島の下は非常に複雑な構造となっている。防災科学技術研究所(防災科研)は高感度地震観測網(Hi-net)を運用し、気象庁や国立大学、国立研究開発法人なども微小地震を観測する地震観測点を運用している。海域では、防災科研や気象庁に加えて東京大学地震研究所(東大地震研)も陸域から直線的に伸びる海底地震計によるオンライン観測を行ってきた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は南海トラフ沿いで地震・津波観測監視システム(DONET)を構築・運用し、防災科研が東北地方の太平洋沖で日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築・運用している。現在DONETは防災科研に移管され、防災科研はHi-net, S-net, DONETに広帯域地震観測網(F-net)、全国強震観測網(K-NET)や基盤強震観測網(KiK-net)、基盤的火山観測網(V-net)を加え、日本全国を網羅する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)を運用している。JAMSTECは文部科学省によるひずみ集中帯プロジェクトや日本海地震・津波調査観測プロジェクトの中で、日本海沿岸におけるエアガンを用いた反射法探査を実施してきた。これらのエアガンからの振動は、陸域の微小地震観測網においても観測されている。複数のエアガンの振動を重合することによりS/N比が向上し、エアガンの記録も読み取ることが可能となる。本研究では、防災科研Hi-netや気象庁、大学等の微小地震観測網により観測されたデータにエアガンからの到達時刻データを合わせて用い、地震トモグラフィー法を用いて地震波速度構造モデルを構築した。
2. データ・手法
2000年10月から2019年12月までに東経120~148°、北緯20~48°の領域において、深さ10kmまでは水平0.01°、深さ1kmの領域内から、深さ10km以深では、水平0.1°、深さ2.5kmの領域内から到達時刻データ最多の地震を1つずつ抽出した。太平洋沖ではS-netの観測開始が2017年からであり、地震の数が少ないためいずれの深さにおいても水平0.01°、深さ1kmの領域内から地震を1つずつ抽出した。エアガン記録については、佐渡島から能登半島にかけて行われた測線と山形沖で行われた探査測線からのエアガン記録をそれぞれ9ショット重合してS/N比を3倍に高め、約1km間隔のエアガンからの記録について陸域観測網において波の到達時刻を読み取った。
総じて294,865個の地震からの14,850,442個のP波、12,278,029個のS波到達時刻データに加え、482個のエアガンからの11,089個のP波到達時刻データを、Zhao et al (1992)の地震波トモグラフィー法に観測点補正値やスムージングを導入した手法(Matsubara et al., 2004, 2005)を用いて地震波速度構造を推定した。初期速度構造は、防災科研Hi-netのルーチンで用いている鵜川他(1982)の構造を用いた。
3. 結果
エアガンデータを用いることにより、山形沖から能登半島にかけての日本海沿岸では海域の深さ5-10kmの解像度が向上した。能登半島と佐渡島の間の領域では、非常に低速度な領域が存在する結果を得た。深さ20km以深では、エアガンデータを用いない場合と同様の結果を得た。
得られた三次元地震波速度構造を用いて、2000年10月から2019年12月までのマグニチュード1.5以上の地震を再決定した。2019年山形沖の地震の本震は北西のP波高速度域と南東のP波低速度域の境界付近に位置し、上下のS波低速度、低Vp/Vs領域に挟まれている。余震は本震の西側に東傾斜で分布している。
2007年中越沖地震の本震は、P波高速度域、Vp/Vsが1.83の領域の南端に位置していた。余震は高速度域かつVp/Vsが1.80-1.85の領域の上端に分布している。
2007年能登半島地震の本震は浅部のP波高速度と深部のP波低速度域の境界かつ北部のS波低速度域と南部のS波高速度域の境界に位置している。余震はP波、S波ともに高速度域内に位置し、低Vp/Vs域を囲んでいる。
4. 議論
佐渡海嶺と最上トラフはインバージョンテクトニクスにより半地溝の隆起により形成された(Okamura et al., 1996)。2019年山形沖の地震の西側の深さ10-30kmは最上トラフに対応する高速度域となっている。この高速度下部地殻は粟島を通り佐渡島と本州の間の佐渡海盆まで達している。東北日本弧の主要なリフト帯が秋田から新潟にかけて日本海沿岸を走り、高速度下部地殻と対応し、浅いモホ面が中絶リフトと一致する(Matsubara et al., 2017, 2019)。