日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:深谷 俊太朗(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)

15:45 〜 16:00

[SGD02-08] GAMITプログラムを用いたGEONET観測点のGPS・GLONASS・GALILEOのマルチGNSS解析

*島田 誠一1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:マルチGNSS、GEONET、GAMITプログラム

島田(2020)は日本測地学会第134回講演会において,GAMITプログラムを用いて2019年1月~2月の42日間のGEONET観測データについて,GPS及びGalileo衛星を用いて解析し,座標値再現性を検討した.また,中尾ら(2020, 2021)は,測地学会第134回及び第136回講演会において,Berneseプログラムを用いてGEONET観測データのGPS・GLONASS・GalileoのマルチGNSS解析を試みている.さらに,国土地理院ではGPS・GLONASSの同時解析を試みている.
GAMITプログラムでは,2020年3月にリリースしたバージョン10.71において,マルチGNSS衛星の軌道計算精度を向上させ,マルチGNSS衛星を持たした解析精度の向上を図っている.

本発表では,GAMIT/GLOBKプログラム・バージョン10.71を用いて,GEONET観測データについて,GPS・GLONASS・Galileoの各衛星を用いたGEONET観測網の観測データのマルチGNSS解析結果について報告する.
精密軌道暦については,GPS・GLONASS衛星はIGS最終暦(それぞれigs及びigl sp3ファイル),Galileo衛星はCODE精密暦を用いた.基準座標系としてはITRF2014を用い,東アジア及びその周辺のIGS点を座標基準点として用いた.GLONASS及びGalileo衛星については,すべてのIGS点の受信機で受信できるわけではないので,GPS衛星と比べると座標基準点が少ない.
2022年1月10日~19日の新潟地方のGEONET点の予備的解析における,座標値再現性(weighted rms)をTable 1に示す.水平成分のうち東西成分では,GPS衛星のみを用いた解析の方がmulti-GNSS解析より良好な結果になっているが,南北成分については,GLONASS衛星を加えた解析がGPS衛星のみの解析とほとんど変わらないか,やや座標値再現性が低い結果になっている.さらに,上下成分について,GPS衛星にGalileo衛星を加えた解析の方が,GPS衛星のみの解析によりも座標値再現性が優れていることがわかる.

この結果は,マルチGNSS解析の方が,成分によってはGPS衛星のみの解析よりも精度が向上している可能性を示している.これは,特にGLONASS衛星の軌道傾斜角が大きく北極点近くの衛星がカバーできない穴の面積が小さいことや,マルチGNSS衛星の解析では,GPS衛星のみの場合よりも衛星数が増えていることが解析精度に関係している可能性がある.
ただし,この期間の新潟地方は豪雪に見舞われていて,消雪用地下水利用による上下変動が大きかったことが想像される.このため,10日間の座標値が変わらないはずと考えて算出した座標値再現性の評価は適当ではない可能性がある.このため発表では,2020年秋の観測データについて,GEONET全点での解析結果を報告する.