日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD02] 測地学・GGOS

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:三井 雄太(静岡大学理学部地球科学科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:深谷 俊太朗(国土地理院)、風間 卓仁(京都大学理学研究科)

16:15 〜 16:30

[SGD02-10] 航空重力データを用いた新たな精密重力ジオイド・モデルの試作と今後の観測計画

*深谷 俊太朗1中島 正寛1、飯塚 康裕1、豊福 隆史1、越智 久巳一1、山本 宏章1、大森 秀一1、加藤 知瑛1、畔柳 将人1、半田 優実1松尾 功二1 (1.国土地理院)

キーワード:航空重力測量、ジオイド、重力、重力ジオイド・モデル

はじめに
国土地理院は日本の新たな精密重力ジオイド・モデル構築に向け、2019年から航空重力測量を実施している。精密重力ジオイド・モデルの精度評価は、実測ジオイド高データとジオイド傾斜を比較することで行い、その較差の標準偏差が3cm以内となることを目標としている。現段階の計画としては2023年までに全国の航空重力データを取得し、2024年に航空重力データと既存の重力データを組み合わせて、精密重力ジオイド・モデルを構築する予定である。

精密重力ジオイド・モデルの試作方法と結果
2021年12月現在、東北から九州地区にかけて測定高度3000m(山岳地域と関東地方では5000m)での観測が概ね完了している。取得された重力データのクロスオーバー較差(測線の交差点における重力較差)の標準偏差は約2mGalで、高い観測精度を示している(Nakashima et al., AGU2021)。本研究では、これまでに得られた航空重力データを含めた精密重力ジオイド・モデルをMatsuo and Forsberg (2021)の手法を用いて試作した。それを既存の重力データのみを用いて同じ手法で作成したものと比較することで、重力ジオイドにおける航空重力データの寄与を検証した。結果として、鹿島灘や瀬戸内海、土佐湾といった沿岸域において10~20cmに及ぶ大きなジオイド高の差が見られた。差の生じた沿岸域では既存の地上重力データや船上重力データ、衛星アルティメトリ海上重力場モデルでは捉えられなかった重力場の情報を航空重力測量によって高精度に観測することができたと考えている。

今後の観測計画
このような重力ジオイド・モデルの差が大きい領域においては、従来の飛行高度では捉えられない短波長重力成分が多く存在することが考えられるため、空間分解能を高めるために低い高度での追加観測を検討中である。Childers et al. (1999) によると、航空機の飛行高度を半分にすることで観測できる重力場情報の空間解像度が2倍になる。これにより、より詳細な重力分布が観測される。
また、島しょ部では黒潮などの海流の影響により衛星アルティメトリ海上重力場モデルの精度が粗いため、沿岸域同様に精密重力ジオイド・モデルの精度が低下すると推測している。島しょ部においては航空重力データを含むことで精度の改善を見込めることから、航空重力測量の実施計画で当初含めていなかった島しょ部についても新たに観測を行っていく計画である。