11:00 〜 13:00
[SSS08-P02] 新潟-神戸歪集中帯中央部におけるCoda Qの時間変化
キーワード:Coda Q、新潟-神戸歪集中帯、地殻不均質
内陸地震を発生させる応力蓄積過程の解明のために歪速度が周辺地域に比べ1桁程度大きい新潟から神戸にかけての歪集中帯(新潟-神戸歪集中帯、NKTZ)(Sagiya et al., 2000) が注目されている。Jin and Aki (2005)は、新潟-神戸歪集中帯において低周波数帯で低Coda Qとなることを報告した。Iio et al. (2002) は、下部地殻の粘性率が低く、変形速度が周辺領域より大きいことが歪集中帯の成因であるとする weak zone model を提案した。Hiramatsu et al.(2013)はNKTZ中央部のCoda Q分布を調査し、低周波数帯のCoda Qが下部地殻の変形速度の指標となり、Coda Qと地震の間に良い空間的相関がみられることから高ひずみ速度帯の原因が地殻の脆性-延性遷移帯以下の高変形速度に起因する可能性を示唆している。
その一方、Dojo and Hiramatsu (2017)は、NKTZ北東部では下部地殻の変形だけでなく上部地殻の変形が支配的であることから、歪集中帯の中部と北東部で歪集中帯の成因が異なる可能性を指摘している。また、大地震が発生すると地殻の応力状態が変化し、地殻の不均質性が変化する。Hiramatsu et al. (2000) と Sugaya et al. (2009) では、1995年兵庫県南部地震震源域周辺で、Padhy et al. (2013) では、2011年東北地方太平洋沖地震によって東北地方の太平洋沿岸でそれぞれcoda Qの時間変化を報告している。2011年東北地方太平洋沖地震では、主に東西方向の変位速度が大きく変化している。列島規模の変形場の変化により歪集中帯北東部のcoda Qが変化するか否かを明らかにすることは、この地域の地殻内の高変形速度領域の存在の検証に繋がり、歪集中帯の成因を考える上で重要である。Dojo and Hiramatsu (2019)はNKTZ北東部におけるCoda Q の時空間変化を調査し、2011年東北地方太平洋沖地震前後でCodaQの空間分布や他パラメータとの相関に有意な時間的変動は見られないと報告した。したがって、高い速度での持続的な延性変形の存在が、NKTZの内陸部の高歪速度帯を発生させる主な原因である可能性が高いことを示唆している。
本研究では、NKTZ北東部と歪集中帯の成因が異なる可能性が指摘されているNKTZ中央部において2011年東北地方太平洋沖地震前後におけるCoda Qの時間変化を調査し、NKTZ中央部における歪集中帯の成因について議論を行う。本研究では、2008年3月から2011年2月と2012年1月から2015年12月のCoda Qの時間変化を調べることにより、歪集中帯の成因について議論する。解析には防災科学技術研究所のHi-net、気象庁、国立大学の観測点を使用する。震源が30 kmより浅く、M1.8よりも大きな地震を解析対象とする。震央から30 km以内の観測点の地震波形データに一次後方散乱モデル (Aki and Chouet, 1975) を適用しCoda Qを求め、各観測点でCoda Qの逆数の対数平均をとり、Coda Qの時間変化を求める。
この結果、2011年東北地方太平洋沖地震前後におけるCoda Q値は有意な時間変化を示さなかった。これは列島規模の変形場の変化により歪集中帯中央部のCoda Qが変化していないことを示し、Iio et al. (2002)で示されたweak zone modelやDojo and Hiramatsu (2019)の結果と整合的である。つまり、上部地殻と下部地殻の延性領域において局在する高い変形速度のため、歪速度が周囲よりも大きく歪集中帯の形成に寄与し、その変形領域が持続的に存在することが考えられる。
謝辞
本研究を遂行するにあたり防災科学技術研究所、気象庁、東京大学地震研究所、 東北大学地震・噴火予知研究観測センター、京都大学防災研究所地震予知研究センターより地震波形データを提供していただきました。記して感謝いたします。
その一方、Dojo and Hiramatsu (2017)は、NKTZ北東部では下部地殻の変形だけでなく上部地殻の変形が支配的であることから、歪集中帯の中部と北東部で歪集中帯の成因が異なる可能性を指摘している。また、大地震が発生すると地殻の応力状態が変化し、地殻の不均質性が変化する。Hiramatsu et al. (2000) と Sugaya et al. (2009) では、1995年兵庫県南部地震震源域周辺で、Padhy et al. (2013) では、2011年東北地方太平洋沖地震によって東北地方の太平洋沿岸でそれぞれcoda Qの時間変化を報告している。2011年東北地方太平洋沖地震では、主に東西方向の変位速度が大きく変化している。列島規模の変形場の変化により歪集中帯北東部のcoda Qが変化するか否かを明らかにすることは、この地域の地殻内の高変形速度領域の存在の検証に繋がり、歪集中帯の成因を考える上で重要である。Dojo and Hiramatsu (2019)はNKTZ北東部におけるCoda Q の時空間変化を調査し、2011年東北地方太平洋沖地震前後でCodaQの空間分布や他パラメータとの相関に有意な時間的変動は見られないと報告した。したがって、高い速度での持続的な延性変形の存在が、NKTZの内陸部の高歪速度帯を発生させる主な原因である可能性が高いことを示唆している。
本研究では、NKTZ北東部と歪集中帯の成因が異なる可能性が指摘されているNKTZ中央部において2011年東北地方太平洋沖地震前後におけるCoda Qの時間変化を調査し、NKTZ中央部における歪集中帯の成因について議論を行う。本研究では、2008年3月から2011年2月と2012年1月から2015年12月のCoda Qの時間変化を調べることにより、歪集中帯の成因について議論する。解析には防災科学技術研究所のHi-net、気象庁、国立大学の観測点を使用する。震源が30 kmより浅く、M1.8よりも大きな地震を解析対象とする。震央から30 km以内の観測点の地震波形データに一次後方散乱モデル (Aki and Chouet, 1975) を適用しCoda Qを求め、各観測点でCoda Qの逆数の対数平均をとり、Coda Qの時間変化を求める。
この結果、2011年東北地方太平洋沖地震前後におけるCoda Q値は有意な時間変化を示さなかった。これは列島規模の変形場の変化により歪集中帯中央部のCoda Qが変化していないことを示し、Iio et al. (2002)で示されたweak zone modelやDojo and Hiramatsu (2019)の結果と整合的である。つまり、上部地殻と下部地殻の延性領域において局在する高い変形速度のため、歪速度が周囲よりも大きく歪集中帯の形成に寄与し、その変形領域が持続的に存在することが考えられる。
謝辞
本研究を遂行するにあたり防災科学技術研究所、気象庁、東京大学地震研究所、 東北大学地震・噴火予知研究観測センター、京都大学防災研究所地震予知研究センターより地震波形データを提供していただきました。記して感謝いたします。