日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] 活断層と古地震

2022年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:白濱 吉起(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター活断層火山研究部門活断層評価研究グループ)、佐藤 善輝(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 平野地質研究グループ)、コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

15:45 〜 16:00

[SSS12-06] 常時微動観測により推定した宮野原断層周辺の地盤特性と2011年長野県北部地震の家屋被害との関係

*中島 展之1小荒井 衛1先名 重樹2中埜 貴元3 (1.茨城大学理学部理学科地球環境科学コース、2.防災科学技術研究所、3.国土地理院)


キーワード:2011年長野県北部地震、家屋被害、常時微動観測、宮野原断層

2011年3月12日未明に発生した長野県北部地震(M6.7)では,長野県栄村や新潟県津南町で大きな被害が発生した.津南町に位置する宮野原断層周辺で,断層線に沿って地すべり・盛土の重力変形などの集中が見られた(中埜ほか,2013).栄村では森・青倉・横倉の3地区に甚大な被害が集中しており,その中でも被害が酷い地域が局所的に集中していた.高見ほか(2020)は地形分類と常時微動観測を行い,段丘が離水する前に後背低地であった微地形やAVS30が小さく揺れやすい場所で家屋被害が大きいことを明らかにした.しかしながら,同様の研究は津南町では行われていない.そのため,津南町の西部で常時微動観測から浅層地盤構造を推定し,地形や表層地質,築年数と家屋被害との関係を検討した.さらに震源断層では無かった宮野原断層が家屋被害に与えた影響も検討した.
津南町役場から2011年長野県北部地震の家屋被害状況資料を提供いただき,「Kunijiban」からボーリングデータを入手した.1976年撮影の空中写真を判読することにより,築年数調査と地形分類を行なった.現地調査として,露頭調査,地形計測,常時微動計測を行った.これらの調査結果を,地理情報システム(Geographic Information System:GIS)を使用して重ね合わせ,家屋被害とそれらの関係を検討した.
築年数と家屋被害との重ね合わせでは,建築基準法が改正された1980年前後の築年数の違いにより家屋被害に差が生じていることが確認できた.常時微動観測結果から,津南町の低位段丘はAVS30が300~600m/s程度で基盤深度は5mよりも浅く,栄村東部(森・青倉・横倉)の段丘でのAVS30が250~350m/s程度で基盤深度が10m前後であることと比較して地盤が良いことがわかった.しかし,宮野原断層周辺は,AVS30 が250m/s前後と相対的に小さく,他の津南地域と比べて地盤が良くない結果であった.断層線の延長部の沢で破砕帯の露頭を確認できたため,宮野原断層周辺で地盤が良くないことは,破砕帯の影響が考えらえる.また,宮野原断層は北傾斜の逆断層で,断層の低下側(南側)で全壊等の被害が集中したが,AVS30も200m/s前後と軟弱な地盤であった.これは,断層の低下側が軟弱な堆積物が堆積しやすい環境であったことによると考えられ,断層活動による地形発達過程が家屋被害に影響を与えたと考えられる.
信濃川河床の露頭観察結果と常時微動観測結果の組み合わせから,段丘礫層の上端部のS波速度が300m/s前後,基盤岩の上端のS波速度が500m/s前後と推定した.その結果と宮野原断層の上盤側と下盤側での常時微動観測結果を用いて断層の平均変位速度を推定した結果,西側の測線では0.118[m/103年],東側の測線では0.164[m/103年]となり,活断層研究会(1991)での宮野原断層の平均変位速度(0.2±[m/103年])と概ね一致した.