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[AAS09-P10] 全中性大気を対象とする長期再解析データを用いた数日周期ノーマルモードのクライマトロジーの研究
キーワード:ノーマルモード、中層大気、大気力学
ラプラスの潮汐方程式から得られる波動解の中には、地球大気の固有振動であるノーマルモードが存在する。特に一様な背景場では、ノーマルモードは鉛直には外部波の構造、南北には潮汐方程式の固有関数であるHough関数で表される構造をもつことが理論的に示されている。現実大気では、背景場は非一様で季節変化があることに伴い、ノーマルモードの空間構造も季節変化することが観測や理論研究により報告されている。また、背景場による構造の変化はドップラー効果の度合い等により、一般に高周波のモード(重力モード)では小さく、低周波のモード(ロスビーモード、ロスビー重力モード)では大きいと考えられている。これまでのノーマルモードの全球的な構造の研究では、主に衛星観測データを用いて特定の高度にのみ注目した解析や事例解析が行われてきた。中層大気全域での季節ごとの気候学的な特徴、衛星観測では直接得られにくい水平風成分の構造に関する知見はまだ十分ではない。そこで、本研究ではデータ同化システムJAGUAR-DASにより作成された全中性大気を対象とする長期の再解析データ(JAGUAR-DAS再解析データ)を用いて数日周期のノーマルモードの全球的な構造のクライマトロジーを調べた。
解析期間は2004年9月~2020年8月の16年間である。先行研究で準2日波や4日波が卓越することが確認されている上部中間圏のジオポテンシャルについて、東西波数-周波数の2次元スペクトル解析を行った。その結果に基づき、先行研究で存在が指摘されている準2日波、4日波、5日波、16日波を取り出した。そして各波のジオポテンシャル、東西風、南北風の各成分の気候学的な構造の特徴を調べた。
各波のジオポテンシャル成分はこれまでの研究で報告されている季節変化とおおむね整合的であった。準2日波はジオポテンシャル、東西風、南北風のいずれの成分でも夏半球の中間圏で振幅が特に大きく、ロスビー重力波的な位相構造をもつことが確認された。4日波、5日波は5月、8月に北半球、および11月、2月に南半球の中間圏・下部熱圏で振幅が特に大きく、各成分は地衡風的な位相関係にある。これら3種の波は夏半球の中間圏にクリティカルレベルが存在し、上記の振幅の極大はクリティカルレベルの上に位置する。この事実は、夏半球中間圏に準2日波、4日波、5日波の励起源があることを示唆する。16日波はいずれの成分でも冬半球の成層圏界面付近で振幅の極大をもち、その大きさは南半球よりも北半球の方が大きいことが確認された。16日波の振幅の極大の位置に関しては、準2日波、4日波、5日波のようなクリティカルレベルとの対応は明瞭ではなかった。
解析期間は2004年9月~2020年8月の16年間である。先行研究で準2日波や4日波が卓越することが確認されている上部中間圏のジオポテンシャルについて、東西波数-周波数の2次元スペクトル解析を行った。その結果に基づき、先行研究で存在が指摘されている準2日波、4日波、5日波、16日波を取り出した。そして各波のジオポテンシャル、東西風、南北風の各成分の気候学的な構造の特徴を調べた。
各波のジオポテンシャル成分はこれまでの研究で報告されている季節変化とおおむね整合的であった。準2日波はジオポテンシャル、東西風、南北風のいずれの成分でも夏半球の中間圏で振幅が特に大きく、ロスビー重力波的な位相構造をもつことが確認された。4日波、5日波は5月、8月に北半球、および11月、2月に南半球の中間圏・下部熱圏で振幅が特に大きく、各成分は地衡風的な位相関係にある。これら3種の波は夏半球の中間圏にクリティカルレベルが存在し、上記の振幅の極大はクリティカルレベルの上に位置する。この事実は、夏半球中間圏に準2日波、4日波、5日波の励起源があることを示唆する。16日波はいずれの成分でも冬半球の成層圏界面付近で振幅の極大をもち、その大きさは南半球よりも北半球の方が大きいことが確認された。16日波の振幅の極大の位置に関しては、準2日波、4日波、5日波のようなクリティカルレベルとの対応は明瞭ではなかった。