日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG46] 北極域の科学

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:両角 友喜(国立環境研究所)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、堀 正岳(東京大学大気海洋研究所)、川上 達也(北海道大学)、座長:両角 友喜(国立環境研究所)、川上 達也(北海道大学)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)

11:30 〜 11:45

[ACG46-04] 高緯度における波浪観測のためのIMUを用いた波浪ブイの開発

*小平 翼1、勝野 知嵩1、野瀬 毅彦1伊東 素代2、Rabault Jean3、Hoppmann Mario4早稲田 卓爾1,2 (1.東京大学 大学院新領域創成科学研究科、2.独立行政法人海洋研究開発機構 、3.Norwegian Meteorological Institute、4.Alfred Wegener Institute)

キーワード:波浪、極域、センサ

センサを含む電子機器の低コスト化とプロトタイピング技術の進歩により、海洋センシングデバイスの集中的な展開の現実性が増している。多数センサの展開による観測は、台風下の波や海氷下の波など、空間的な変動が比較的大きい現象の研究に特に有効だと考えられる。我々は北極海や南極定着氷への展開をターゲッとした慣性動揺計測装置(IMU)を用いた波浪ブイの開発を行なっている。開発した波浪ブイ”FZ”は直径わずか20cmとコンパクトであり、センサによる計測やデータ送信はマイクロコントローラで制御される。波浪計測は慣性計測ユニット (IMU) からの垂直加速度に基づいて周波数波スペクトルを推定することで行う。データはイリジウムSBDを介して送信され、波浪の周波数パワースペクトル、GPS位置情報、およびセンサーデバイスに関するいくつかの情報が送信されている。
2022 年 9 月に北極海西部のビューフォート海で海洋地球観測船みらいから 12 個の FZ波浪ブイが波浪ブイアレイとして展開した。3 台の市販の漂流波浪ブイSpotter も同時に展開され、FZ 波浪ブイの検証に使用した。展開後約 2 週間の計測結果に関して、開発された波浪ブイは、有義波高と平均波周期に関して良好な一致を示したことが分かった。しかしながら、ソフトウェアにおける欠陥から波浪ブイの測定精度は2 週間後より徐々に悪化することとなった。また、展開後10 月中旬に、データ転送が断続的となった。この原因は、漂流ブイの表面に海水が着氷し、データ伝送に支障をきたしたものと推測される。事実、波浪ブイSpotterに付属した海面水温センサによる測定結果は、中断が観測された時点で結氷温度近くを示していた。開発された波浪ブイの 2 倍の大きさを持つSpotterではデータ伝送の中断はほとんど見られなかったことから、データ伝送には船体のサイズや形状が重要であると考えられる。