日本地球惑星科学連合2023年大会

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[E] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW18] 流域圏生態系における物質輸送と循環:源流から沿岸海域まで

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (5) (オンラインポスター)

コンビーナ:細野 高啓(熊本大学大学院先端科学研究部)、伴 修平(公立大学法人 滋賀県立大学)、齋藤 光代(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 )、Adina Paytan(University of California Santa Cruz)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AHW18-P01] UAVによる多地点での空撮を用いた広域的藻場バイオマス量、炭素量の推定

*秋永 拓弥1齋藤 光代2小野寺 真一2友澤 裕介2、永禮 英明1 (1.岡山大学 大学院環境生命科学研究科、2.広島大学 大学院先進理工系科学研究科)

キーワード:沿岸藻場、UAV、バイオマス量

藻場は浅海域の生態系を構成する上で非常に大きな役割を担っており、近年はその高い炭素固定能から「ブルーカーボン」として定義されるようになった。藻場には、海洋生物の住処としての働き、水質を浄化する働きなどがあり、特に炭素を固定する働きは二酸化炭素削減の手段として、近年注目が集まっている。このように藻場は多岐にわたる機能を有するにも関わらず、現存量は減少傾向にあり、保全のための生息状況の把握は非常に重要である。

藻場の生息状況を把握する手段として、近年注目を集めているのが、リモートセンシングによる藻場のモニタリングである。特にUAVを用いた藻場のリモートセンシングは高い精度で藻場を識別できることが示されており、正確な藻場の分布を識別することができる。しかしながらUAVによる解析事例の多くは、解析の範囲が狭く、また分布の識別のみにとどまっている。

本研究は、数十kmスケールの広範囲にわたる藻場の詳細な分布の把握と、バイオマス量(SB)、炭素量(SC)の推定を目的とした。研究対象地は瀬戸内海に位置する生口島を対象とした。生口島周辺の藻場の詳細な分布の把握のため、UAVにより島を32か所に区分しそれぞれの地点で空撮した。空撮した画像を合成した後、最尤法とIso-data法を適応することにより藻場を識別した。精度評価の結果、最尤法での識別結果の精度は良好であり総合精度の平均値は0.92となった。一方、Iso-data法での総合精度の平均値は0.74となり、最尤法での結果と比較して分類精度が悪かった。
分類精度が良好であった最尤法での藻場の分布を用いて、藻場構成種の区別を行った。海草と海藻の生息場所に違いがあることを利用し、海草と海藻を区分した。海藻のうち、アオサについては、色味の違いが比較的明瞭であったため、色味による区別を行った。また、文献や調査結果などから海草類はすべてアマモと定義したため、最終的な藻場構成種の区分としては、アマモ、アオサ、その他の海藻類とした。

藻場構成種別の識別結果から被度を計算し、事前にコドラート調査とサンプリングから導いた、被度とLAI(Leaf Area Index)、葉面積とSB,SCの関係式を適応した。回帰式を用いて、被度からLAIに変換した後、SB、SCを推定したところ、それぞれアマモが43ton,14ton、アオサが37kg,10kgとなった。本研究では、アマモは他の藻類と比較し生息エリアが非常に大きく、またSB,SCの量も大きかった。この結果はアマモが藻場の機能に果たす役割の重要性を示していると言える。

本研究は、日本学術振興会科学研究費 基盤研究(B)(No. 21H03650、研究代表者:齋藤光代)および国際共同研究強化(A)(No. 20KK0262、研究代表者:齋藤光代)の支援を受けて行われました。