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[AHW23-P05] 静岡県牧之原台地とその周辺の河川水の水質ならびに窒素同位体比
キーワード:茶栽培、河川水、水質、溶存アルミニウム、窒素同位体
日本有数の茶畑地帯である静岡県牧之原台地北部(台地面の標高200-250 m)を開析する24 本の小河川を対象に,茶畑への施肥が河川水の水質(主要溶存成分,重金属類)に及ぼす影響を検討した.現地調査・採水は2022 年 8 月 28日と29 日に実施した.24本の河川の流域面積は 0.027-0.70 km2,流域に占める茶畑の面積割合は7-100 %(茶畑以外は主に森林),それぞれの流域内の最高地点と河川水調査地点の標高差Δhは24-176 mである.牧之原台地の最上部には厚さ20-30 m程度の牧之原礫層が広がり,その下位の層厚30 m程度の古谷泥層(シルト,砂質シルト)を挟んで水理学的基盤となる新第三紀層(泥岩,砂岩)が分布する.地下水面は牧之原礫層内に存在する.
本研究の結果,以下の事実が明らかとなった.
[1] 牧之原台地とその周辺の河川は茶畑への施肥の影響を強く受けており(水質はCa-SO4・NO3型),最高で環境基準値の 2 倍を上回る濃度の硝酸態窒素(NO3-N)を含む河川水が存在する.pHの最低値は4.2であった.
[2] 河川水のNO3-濃度とSO42-濃度は,硫酸アンモニウムが溶解した場合の両者の関係(NO3-:SO42- =1:0.77)と概ね整合的である.
[3] それぞれの流域内に占める茶畑の面積の割合が大きいほど河川水の NO3-濃度と SO42-濃度が増加する傾向が認められる.反対に,HCO3-濃度は茶畑の面積割合が大きいほど低下する傾向がある.
[4] 施肥による土壌・地下水の酸性化によって高濃度のアルミニウム(0.02-17.4 mg/L)をはじめとする重金属類が溶出し,河川へと負荷される.
[5] 河川水のNO3-濃度,SO42-濃度は標高に強く依存する.すなわち,Δhが小さい(上流)ほど濃度が大きく,下流に向かうにしたがって濃度は低下する.河道堆積物中での生物化学反応,また還元的な状態にあると想像される古谷泥層からの地下水の流入に原因があるものと考えられる.Δhが小さい場合, NO3-の窒素・酸素同位体比は化学肥料に特有の低い値を示すが(δ15Nで概ね5-8 ‰ 以下),河川水の流下に伴って同位体比が上昇する傾向とも矛盾しない.
[6] 今後,古谷泥層から河川にもたらされる地下水の水質,窒素・硫黄同位体比を把握することで,河川水の水質形成プロセスをより詳細に明らかにすることができるものと考えられる.
本研究の結果,以下の事実が明らかとなった.
[1] 牧之原台地とその周辺の河川は茶畑への施肥の影響を強く受けており(水質はCa-SO4・NO3型),最高で環境基準値の 2 倍を上回る濃度の硝酸態窒素(NO3-N)を含む河川水が存在する.pHの最低値は4.2であった.
[2] 河川水のNO3-濃度とSO42-濃度は,硫酸アンモニウムが溶解した場合の両者の関係(NO3-:SO42- =1:0.77)と概ね整合的である.
[3] それぞれの流域内に占める茶畑の面積の割合が大きいほど河川水の NO3-濃度と SO42-濃度が増加する傾向が認められる.反対に,HCO3-濃度は茶畑の面積割合が大きいほど低下する傾向がある.
[4] 施肥による土壌・地下水の酸性化によって高濃度のアルミニウム(0.02-17.4 mg/L)をはじめとする重金属類が溶出し,河川へと負荷される.
[5] 河川水のNO3-濃度,SO42-濃度は標高に強く依存する.すなわち,Δhが小さい(上流)ほど濃度が大きく,下流に向かうにしたがって濃度は低下する.河道堆積物中での生物化学反応,また還元的な状態にあると想像される古谷泥層からの地下水の流入に原因があるものと考えられる.Δhが小さい場合, NO3-の窒素・酸素同位体比は化学肥料に特有の低い値を示すが(δ15Nで概ね5-8 ‰ 以下),河川水の流下に伴って同位体比が上昇する傾向とも矛盾しない.
[6] 今後,古谷泥層から河川にもたらされる地下水の水質,窒素・硫黄同位体比を把握することで,河川水の水質形成プロセスをより詳細に明らかにすることができるものと考えられる.